始祖の巨人 Founding Titan
始祖の巨人(しそのきょじん、Founding Titan, Shiso No Kyojin)は、進撃の巨人に登場する9つの知性巨人のうちの1体。全ての巨人の始祖であり頂点に立つ存在。
すべてのユミルの民は道で繋がっており1つの座標で交わる。それが始祖の巨人です。すべての根源である、というような意味なんだと思います。
founding: 創立、創設。
ちなみに、地鳴らし発動と同時に現れた巨大なエレンの巨人は「終尾(しゅうび)の巨人」といいます。2022年7月15日、アニメBD&DVD FINAL SEASON 第4巻発売に際して、作者が名付けたということがアニメ公式アカウントから発表がありました(それ以前は読者の間では骨の巨人や始祖エレンなど様々な呼ばれ方をしていましたが、正式なものではありませんでした)。
基本情報
名前 | 始祖の巨人 しそのきょじん Founding Titan Shiso No Kyojin |
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歴代継承者 |
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体高 | ※13~15m |
特徴 |
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関連
未来の記憶を見る仕組み
記憶を見せるのは進撃か始祖か
「始祖の力がもたらす影響には過去も未来も無い…同時に存在する」とは?
始祖の巨人の紀元
エルディア民族の奴隷だった少女が森に迷い込み大きな木の穴に落ちて不思議な生物(ハルキゲニアのような脊椎)と接触したことで生まれた巨人。この少女が始祖ユミルと考えられています(30巻122話「二千年前の君から」)。
エルディア帝国の繁栄、始祖ユミルの死後の巨人の継承
フリッツ王の元に帰った少女は巨人の力で道を作り橋を架け、敵兵を虐殺し国を大きくしていきました。そして王との間に3人の子供「マリア、ローゼ、シーナ」を授かります。
ある日、エルディア帝国の謁見の場で戦争に負けた相手の敵兵と思われる者がフリッツ王に向けて槍を放ち、庇ったユミルに直撃します。巨人の力を持つユミルであれば訳のない傷でしたが、そこでフリッツ王が自分を奴隷としか見ていなかったことがわかりユミルは絶望して死んでしまいます。
巨人の力を失うことを恐れたフリッツ王は3人の娘たちにユミルの身体を食べさせることで巨人の力を継承し、代々続けるよう言い残しました。このとき継承した巨人の力が枝分かれしていったのが9つの知性巨人と考えられており。そして現在まで続いていきます。
21巻86話「あの日」、30巻122話「二千年前の君から」
始祖ユミル、大地の悪魔の謎
始祖の巨人、あるいは始祖ユミルに関して作中でも様々な言い伝えがされていますが、語り手の立場によって表現は変わります。
21巻86話「あの日」でグリシャの父が読み聞かせる歴史書に「始祖ユミル・フリッツは大地の悪魔と契約して巨人の力を手に入れる」という言葉が出てきます。
22巻88話「進撃の巨人」にて、クルーガーは始祖ユミルの正体について、マーレ政権下では「悪魔の使い」と忌み嫌われ、エルディア帝国の時代は「神がもたらした奇跡」と讃えられ、「始祖ユミルは『有機生物の起源』と接触した少女」と唱える者もいる、と語っていました。
30巻122話「二千年前の君から」では、始祖ユミルが有機生物の起源と思われる光るムカデと接触することで巨人の力を手に入れる場面が描かれました。
これらの証言・描写を踏まえると、大地の悪魔は、エレンまたは初代フリッツ王だと考えられます。
なぜなら、人間の立場から見て光るムカデを悪魔と表現する理由はどこにもなく、122話の描写はクルーガーが言った「有機生物の起源と接触」そのままだからです。契約と呼ぶに相応しいのはエレンやフリッツ王とのやり取りの方でしょう。
始祖の巨人の能力?何ができる?
始祖の巨人はすべてのユミルの民や巨人を操ったり記憶を改竄することができるとされており、壁内人類の様子を見る限りおそらくそれは正しいのでしょう。
基本的に始祖の力を使うことが出来るのは王家の血を引く者だけです。しかし、145代目フリッツ王(初代レイス王)が編み出した「不戦の契り」によって、以降の継承者は初代王の思想に囚われて真の力を発揮できなくなった…とされています。
ただし抜け道があり、始祖の巨人の継承者が「王家以外の人間」だった場合、その者が「王家の血を引く巨人」に触れることで力を発揮することができます。
記憶の改竄
巨人大戦終戦後、145代目カール・フリッツがパラディ島に逃げ込んだ後、連れて行ったユミルの民の記憶を改竄し、「壁外の人類は巨人に襲われて全滅した」ことになりました。
そのおかげで壁内は100年以上平和に過ごすことが出来たのです。
ただし、記憶の改竄はユミルの民にしか効きません。記憶の改竄が効かない「他人種系エルディア人」は秘密を守る代わりに王政の中心となり貴族の地位を得た一方でアッカーマンや東洋の一族は記憶改竄に反対したことで迫害されてしまいました。
叫びの力(巨人を操る)
エレンがライナー達に誘拐されたとき、ダイナ・フリッツの巨人に触れて発動。無垢の巨人を操りダイナ巨人を食わせ、ライナー達を襲わせている間に調査兵団は壁内に帰還することが出来ました。
「始祖の巨人保有者」が「王家の血を引く巨人」に触れてたことで条件が成立し、力を発揮できたということになります。
エレンが過去のダイナ巨人を操った仕組みはちょっと複雑です。
「始祖の力がもたらす影響には過去も未来も無い…同時に存在する」とは?
人体構造を変化させる
クサヴァーの研究によると、600年以上前に当時の始祖保有者がこの力を使って流行病を止めたようです。以後、ユミルの民に感染者が出なくなったといいます。
ジークはこの力を使って「ユミルの民の体を子供ができないようにする」ことで安楽死計画を遂行しようとしています。
土木工事全般
始祖ユミルは巨人の力を使って土を耕し、道を作り、橋を架け、エルディアのインフラを整備しました。
過去や未来に影響を与える?
「始祖の力がもたらす影響には過去も未来も無い…同時に存在する」とは?
最終話でエレンが「始祖の力がもたらす影響には過去も未来も無い…同時に存在する」と言いました。
これを「過去も未来も関係無く全ての巨人に影響を与えることができる」転じて「すべては始祖の思うがまま」のように解釈されている例が多数ありますが半分本当で半分ウソです。
どうしても「影響を与える」という言葉を使いたいのであれば、好きなように過去や未来に影響を与えることができる、のではなく、過去や未来に影響を与えてしまう、という言い方になります。
力を使う者が自由自在にピンポイントで過去や未来に影響を与えることができる訳ではありません。
だからエレンは「仕方が無かった」と言ったのです。
ダイナ巨人がベルトルトをスルーしてカルラを食べたという出来事は、絶対に避けることができない「始祖の力がもたらす影響」だからです。
「始祖の力」が「もたらす影響」
「始祖の力がもたらす影響」というものが「過去も未来も無く同時に存在する」という言葉をまずはそのまま受け止めるべきでしょう。「もたらす影響」を抜いてはいけません。
ではその「始祖の力がもたらす影響」とは何なのか?
始祖の力を使った結果起きる出来事・現象、というような形に言い換えることが出来るでしょう。 それが「過去も未来も無く同時に存在」するのです。
「始祖の力」を、太陽の力とか台風の力で置き換え、また「過去未来」を国とか地域で考えればわかると思います。
「始祖の力がもたらす影響」とは、巨人を操るとか、誰かの記憶を改竄するとか、「始祖の巨人の力を使えば出来ること」を指しているのではありません。当然、その力を過去未来関係なく使えるという意味にもなりません。
始祖の力が使われた例は以下のようなものがあります。
- エレンがダイナ巨人と接触して始祖の力を使って巨人を操った
- ジークがエレンと接触し、座標で始祖の力を使いグリシャの記憶の中にエレンを連れ込んだ
- エレンが始祖ユミルを説得して「地鳴らし」を起こした
この影響は過去や未来にどのような形で現れましたか?という話なのです。
ダイナ巨人が無垢の巨人ままエレンの前に現れるということは?エレンがダイナ巨人の存在を覚えているということは?
ジークがパラディ島兵団の包囲網を切り抜け無事生き残り、始祖の巨人をその身に宿すエレンと接触するためには?
「地鳴らし」を発生させるために必要な巨人はいつどこで誰がどんな力を使って作ったのですか?
どこかのタイミングで始祖の力を使うと、その結果起きる出来事が必ず起きるように、「謎の見えない力」のアシストによって未来や過去が決定されてしまうのです。
「謎の見えない力」が何かと言えば、それもまた「始祖の力」ということになります。
因果の循環
15歳のエレンがダイナ巨人と接触して始祖の力を使うためには、10歳のエレンが始祖を継承しなければなりません。
10歳のエレンが始祖を継承するためには、始祖奪還を躊躇うグリシャがフリーダから始祖を奪わなければなりません。
始祖奪還を躊躇うグリシャがフリーダから始祖を奪うためには、19歳のエレンが記憶ツアーでグリシャをけしかけなければなりません。
記憶ツアーのためにはジークが必要で…自爆したジークがエレンの元にたどり着くためには始祖ユミルに復活させてもらわなければならなくて…そもそもダイナ巨人が無垢の巨人でエレンの前の現れるためにはベルトルトをスルーしなければならなくて…
結果、過去も未来も同時に存在し、因果関係が循環する状況が生まれることになり、エレンを「どこからが始まりだろう あそこか? いや…どこでもいい」という感覚にさせたのです。
始祖の力は呪いの力
良かれと思って始祖の力を行使した結果、過去や未来で悪いことが起きる可能性もある…始祖の力は呪いの力とも言えるでしょう。
結局は最終的にエレンの望む通りになっていると言えばそうなのですが、その過程はどうだったでしょうか?
エレンが仲間やパラディ島を救い巨人の力を消滅させるために始祖の力を使ったせいで「変えられない過去や未来」を生み出すことになってしまった…なかなかよく出来た話だなと思います。
結局、始祖の巨人の固有の能力、というようなものはないと思います。継承者によって違うということです。
カールは極端に平和を願い、歪んだ平和を手に入れました。エレンは極端に自由を渇望し、歪んだ自由を手に入れました。
その過程で起きた現象を取り上げて、それを始祖の巨人の能力によって継承者であれば誰でも実現できることだとみなすのは正確な分析ではないのだと思います。継承者は望みの実現と同時に代償を払わされるのです。
なぜカールは後に敵になることが明らかなマーレに知性巨人を置いてきたのか?なぜエレンは地鳴らし発動後にジーク由来の無垢の巨人を放置したのか?助けられそうな人を助けなかったのか?
要するに、出来ないということなのではないでしょうか。
もし始祖の巨人が過去や未来の巨人を操れるなら?
理屈の問題
エレンより前の継承者であるカール・フリッツが始祖の巨人の能力を行使して過去や未来の巨人を操ったとします。
エレンもカール・フリッツが操ったとのと同じ巨人を同じ時間に別な目的で操りたいと思った場合、それは可能なのでしょうか?
可能であれ不可能であれ、いずれにせよ「始祖の巨人は過去や未来の巨人を自由に操ることができる」という説明は矛盾することになります。
エレンが可能であればカールは不可能ということになり、また、エレンが不可能であればそれはそれで説明が破綻してしまうからです。
ここで納得できればそれで良いでしょう。
独自の妄想設定重ね問題
上の理屈に対して、以下のような反論が想像されます。
- カールは破滅的な平和思想だから過去や未来の巨人を操ったりしない
- エレンはカールの巨人操作の結果を上書きできる
- 始祖ユミルの心を完全に掌握したエレンだけが過去や未来の巨人を操ることができる(カールや過去の始祖継承者はできない)
しかし、このような解釈は非常に筋が悪いと言えます。
なぜなら、「始祖の巨人は過去や未来の巨人を自由に操れる」という、自分で勝手に作った妄想設定の矛盾を解消するために、さらに独自の妄想設定を新たに作っているからです。
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