ライナーとベルトルトが巨人であるとわかる伏線
ライナーとベルトルトが巨人であり、壁内人類にとって敵であるとわかる伏線をまとめています。
この2人はエレンたちの仲間と見せかけて、実は始祖奪還作戦のためにパラディ島に送り込まれたマーレ軍のスパイでした。
本当の意味での正体判明はマーレ編に突入する23巻以降の内容が絡んできますが、このページでは130話までの内容を踏まえつつ、基本的には10巻の最後で「2人が巨人であると判明するまで」の伏線について触れています。
1巻
成績上位者が巨人だらけ
©諫山創 進撃の巨人 講談社 1巻2話「その日」
ミカサも実質巨人なので1位から5位まで全員巨人でした。本来、10位以内に入るはずだった104期ユミルも加えると、本当に巨人だらけですね。
ライナー、ベルトルト、アニの3人はマーレ時代に軍人としての訓練を積んできていますからこの成績も納得です。そして、ミカサがいかに凄いかということも浮き彫りになります。
知性巨人を継承したからといって身体能力が向上する訳ではないのでしょうけれども、怪我をしてもすぐ治るので恐怖を感じにくく、大胆な行動が出来るというのはある気がします。
トロスト区攻防戦
やるなら集まってからだ
©諫山創 進撃の巨人 講談社 2巻7話「小さな刃」
「まだだ……やるなら集まってからだ」
いったい何をやろうとしていたのでしょうか??
この時点ではエレンが知性巨人(進撃or始祖)の継承者であることを彼らは知りません。
ライナー達は壁の王を誘い出すためにの作戦として、壁をどんどん破壊していくつもりでした。まずベルトルトが外門を破壊し、さらに内門も破壊するつもりだったのでしょう。
ただ単に壁を壊すだけでなく、ウォール・ローゼ内に大量の巨人を送り込むために、巨人たちが集まってくるのを待っていたと考えられます。
しかし明らかに知性巨人と思われる巨人が出現したので、壁の破壊を止めてエレンを誘拐する方向へ作戦を変更することになりました。
何よりも巨人の情報を求めるせっかちなライナー
©諫山創 進撃の巨人 講談社 2巻9話「心臓の鼓動が聞こえる」
アニを心配するライナー
©諫山創 進撃の巨人 講談社 2巻9話「心臓の鼓動が聞こえる」
アニが致命傷を負ってしまうと巨人の力で傷を回復せざるを得なくなります。
ライナーは純粋に仲間として心配しているのもありますが、正体がバレることも気にしているのでしょう。
しっかりライナーのそばにいるベルトルトの絶妙な表情…。
無垢の巨人に襲われるエレン巨人をやたら心配するライナー
©諫山創 進撃の巨人 講談社 2巻9話「心臓の鼓動が聞こえる」
この時点で巨人の正体がエレンであることは誰も知りません。
しかしライナー達の目には知性巨人であることは明らかなので、なんとかあの巨人を助けよう(自分たちがマーレに連れて帰るために)と主張します。
普段は口数が少ないアニも饒舌になって、必死にみんなを説得しようとしています。
相変わらず何も言わないベルトルト…
しかし、せっかく絶望的な状況を乗り切って助かったのにわざわざそんな危険な賭けをする必要はないとジャンは主張しています。妥当な意見でしょう。やっぱりライナーたちはちょっとおかしいのです。
ところが、そもそも巨人(エレン)を助けようというと話はミカサが始めたものなので、ライナーたちはあくまでもそれに追従した形になっており、怪しさが軽減されているところが絶妙です。
エレンが気になって仕方がないライナー
©諫山創 進撃の巨人 講談社 3巻11話「応える」
榴弾を防いでミカサとアルミンを守るためにエレンが巨人化した直後、爆発を察知して真っ先に様子を伺いに飛び立つライナー。
知性巨人の正体がエレンと判明し、ライナーたちは気が気ではありません。激戦を終えて疲労困憊な兵士たちとは違い、なんとかして手がかりを掴もうと必死です。休んでいる暇などありません。
※この後、大岩を塞ぐ作戦のときはライナー、ベルトルトも描かれていませんが、正体がバレた後、19巻77話「彼らが見た世界」でマルコを殺害した(立体機動装置を奪って巨人から逃げられないようにした)ことが判明しています。
訓練兵時代
通過儀礼をパス
©諫山創 進撃の巨人 講談社 4巻15話「個々」
キューブリック監督の映画「フルメタル・ジャケット」を思わせるキース・シャーディスによる“通過儀礼”ですが、ライナーもベルトルトも「面構えが違う」ということでパスしています。
セリフの吹き出し
©諫山創 進撃の巨人 講談社 4巻15話「個々」
訓練兵時代、エレンが845年の巨人襲撃を目撃したということを知り同期たちが質問攻めにするシーン。
超大型巨人の特徴を語るコマでベルトルト(&それを横目でチラリと見るアニ)、「鎧の巨人」と言うコマではライナーが描かれています。
訓練兵たちが会話している食堂の様子をカメラを動かして写していると考えれば自然なシーンです。
しかし、実は思いっきり答えが描かれていた、ということになります。
アルミンの超大型巨人継承を示唆する描写
ちなみに1つ前のコマでは「超大型巨人」の吹き出しがアルミンに被っています。
©諫山創 進撃の巨人 講談社 4巻15話「個々」
エルヴィンの“地下室発言”に過剰反応
©諫山創 進撃の巨人 講談社 5巻21話「開門」
エルヴィンが調査兵団の勧誘の演説でエレン宅の地下室に重要な手がかりがあると話したとき、ライナーは過剰に反応しています。
この演説を聞いてアルミンは勧誘にしては情報を漏らし過ぎだ、つまり何か意図があるに違いないと考えています。
ライナーはエルヴィンの撒いた餌にまんまと食いついてしまっている訳です。
第57回壁外調査にて
©諫山創 進撃の巨人 講談社 6巻23話「女型の巨人」
女型の巨人の正体は人間だという言うアルミンに対して、「どうしてそう思った?」と聞くライナー。
自分たちの正体を知られたくないライナーは勘の良いアルミンが何を考えているのか気になってしょうがありません。
調査兵団の分析が進んで警戒心を強められると、ライナー達は自由に行動できなくなります。奇行種だと思っていてくれたほうが都合が良いのです。
ところがアルミンは、女型の巨人はエレンを狙って行動しているというところまで見抜いてしまいました。
女型の巨人は右翼側から現れました。事前にエレンの担当は右翼側と聞かされていたライナーがアニに情報を伝えていたということです。
しかしエレンの本当の居場所は違ったのです。
ライナーはエレンの居場所を知りたくてしょうがありません。たまらずアルミンに考えを聞き、エレンは中央後方にいるだろうという情報を手に入れます。
©諫山創 進撃の巨人 講談社 6巻23話「女型の巨人」
ライナーは改めて女型にエレンの居場所を伝えるために接触しなければなりませんが、アルミン達がいる手前、自分から進んで近づくわけにはいきません。
ここで運の良いことに、ジャンが「女型の巨人を交戦して時間を稼ごう」と提案してくれました。トロスト区防衛戦でマルコを失ったことで使命感に目覚めたのであり得なくはない流れです。
そもそもこのまま女型がエレンを探して暴れ回ったら調査兵団は全滅してしまいますから、時間稼ぎ自体はまっとうな作戦です。
もしこの場にジャンがいなかったらライナーは無理矢理にでも女型の巨人に近づいてエレンの位置を伝えたのでしょう。しかしジャンのおかげでライナーの思惑はぼやかされることになりました。
©諫山創 進撃の巨人 講談社 6巻23話「女型の巨人」
そしてライナーは女型の巨人に捕まるふりをして、手の平に刃でメッセージを残しました。
急いで撤収しようとするところも本当は怪しいのですが、状況が状況なだけにうやむやで話が進んでいきます。
加えて重要なポイントは、ライナーが女型の手を抜け出せたのは「ライナーが強いから」と見えるところです。
作者の身になって考えてみると、女型の正体が判明した段階でライナーもグルだということがバレるのは何としても避けたいでしょう。この辺りの描き方も実に巧妙だと思います。
アニメではストヘス区で女型の巨人との戦闘の際、ミカサがライナーと同じように女型の手から抜け出す描写がありました。このせいで視聴者は「たとえ巨人に握られても強いキャラクターなら切り裂いて抜け出せる」と認識するため、ライナーのあれも同じようなもんだと思ってしまいます。
とはいえ一瞬なので大半の人は気にも留めないかもしれませんが。
アニとの共謀を疑われて拘束中
この時点(女型捕獲後~10巻まで)で、怪しいと思われる人物が「壁の外から来た人間である」となれば、それ自体がアニの共謀者、つまり敵であることの決定的な証拠になります。
そして、第57回壁外調査時のアルミンは、女型の巨人(アニ)は1巻1話のシガンシナの壁破壊に加担していると推理しています。つまりアニの仲間ということは十中八九、超大型と鎧の巨人のどっちかであるということです。
そう考えると、ライナーとベルトルトに「壁の外の人っぽい」という描写があれば、いつも2人ペアで行動していることも踏まえても真っ先に犯人候補に挙がるでしょう。
何も知らずに1巻から読んで気づけるかというと難しいと思います。あくまでも答えを知った後ならこう考えられるよね、という話です。
©諫山創 進撃の巨人 講談社 8巻34話「戦士は踊る」
アニとの共謀を疑われ装備なしで拘束される104期生たち。
アホ面でボヤくコニー&サシャの吹き出しに被るライナー&ベルトルト。
ただ単にコニーとサシャの会話を描くなら、ライナーとベルトルトは邪魔です。背景として吹き出しの影に人を置きたいなら彼ら以外でも構わないはずです。
©諫山創 進撃の巨人 講談社 8巻34話「戦士は踊る」
ライナーは自分たちが疑われていることに気づいたのでしょうか。コニーの脱走に協力すると言うのも、騒ぎを起こして監視する先輩兵士たちの反応を伺う狙いかもしれません。
©諫山創 進撃の巨人 講談社 8巻34話「戦士は踊る」
ウォール・ローゼ内に巨人が発生したことが信じられない様子のライナー。
冷静に状況を分析して言っているだけなのかもしれませんが、結果を知っていると「俺たちが壁を破壊していないのにどうしてウォール・ローゼ内に巨人が発生するんだ?」という意味に見えます。
御存知の通りこの巨人たちはジーク(獣の巨人)が脊髄液ガスを散布したことで発生した訳ですが、おかげでミケ分隊長は「おそらく104期調査兵団の中に巨人はいなかった…」と判断し、ライナーたちはまたしても疑いの目から逃れることに成功しました。
巨人発生直後のリアクション
©諫山創 進撃の巨人 講談社 9巻35話「獣の巨人」
「壁が…壊されたってことなのか…?」って、なんでライナーは他の誰でもなくベルトルトを見て言うのでしょうか?
もしこのときのライナーが戦士状態だった場合、(ベルトルト?おまえいつの間に壁を破壊したんだ…?もしかしてジーク戦士長が…?)とアイコンタクトしながら聞いているように見えなくもありません。
壁の穴を調査~ラガコ村
演技なのか本気なのか
©諫山創 進撃の巨人 講談社 9巻35話「獣の巨人」
ベルトルトとグルであることを悟られないようにするための演技(作者による引っ掛け)なのか、本気で気を遣っているのかよくわかりません。
ベルトルトはベルトルトで、この辺のときは危なっかしいライナーが心配でしょうがなかったでしょう。同行しないわけにはいきません。
戦士モードと兵士モード
©諫山創 進撃の巨人 講談社 9巻38話「ウトガルド城」
ライナーはラガコ村を調査しているうちに、巨人発生はジークの仕業だと気付いていたのでしょう。
しかし、コニーの落ち込む姿を見てライナーは「兵士のスイッチ」が入ってしまったように見えます。
不安げなベルトルトの表情が描かれているので、このときのライナーは兵士モードなのではないでしょうか。
©諫山創 進撃の巨人 講談社 9巻38話「ウトガルド城」
ところが、コニーが巨人の正体が母であることに気づいた素振りを見せると再び戦士モード、オン。
目の影が怖いです…。
©諫山創 進撃の巨人 講談社 9巻38話「ウトガルド城」
正論をまくし立ててコニーを黙らせるライナー。
なんだかんだで勘の良いコニー。下手に話が広まってこれを発端に巨人発生の原因を突き止められたら大変です。
ライナーからしてみれば言いくるめる相手がコニーで良かった、というところではないでしょうか。
この辺りの描写で引っ掛かるのは、ライナーが兵団に非協力的な行動を取るところです。
コニーが任務に集中できなくなるのは確かに危険ですが、代わりにライナーが先輩兵士にコニー母のことを報告したって良いですよね。ところが、あえてもみ消すようなことをしています。
女型編のソニー&ビーン殺害の一件で、アニとその仲間は巨人に関する情報を抹消しようとしていることがわかりました。ラガコ村でのライナーの行動はそこに繋がると考えるのは不自然ではないでしょう。
ウトガルド城にて
基本的にライナーもベルトルトも調査兵団や104期と敵対するような行動は取りません。
しかし所々で、「壁内の人間ではない」ような描写が見られるあたりが絶妙です。
ライナーは「にしん」が読めたのか?
©諫山創 進撃の巨人 講談社 9巻38話「ウトガルド城」
ライナーは「俺には読めない」と言っています。しかしユミルに吹っ掛けるために嘘をついていた可能性があります。
もしライナーが本当に「にしん」が読めなかったとしたら、「よくこの文字が読めたな」とは言わないはずです。
なぜなら、本当にその文字が読めないのであれば、それが文字かどうかすらわからないからです。「何だこの文字は?」ではなく「これは文字なのか?」という聞き方になるでしょう。
壁内人類は壁外の情報を一切知りません。アルファベットはわかるけど英語が苦手だから読めないというレベルではないんです。外国の文字を目にした場合、それが文字だと認識することすら困難なはずです。
この点でユミルもライナーもちょっと怪しいことになります。
それから、鰊は海の魚ですから(それが進撃の巨人の世界でも通用するなら)、壁内の人々はその存在を知らないはずです。もしライナーが鰊のことを知らなければ、「ニシンって何?」と聞くはずです。しかしそんな素振りを見せない以上、鰊が何か理解しているに違いありません。
以上のことからライナーは鰊のことも知っていたしニシンという文字も読めていたと考えられます。
ライナーはあのときユミルがマーレからやってきた人間であると判断したでしょう。しかしユミルがどのようにマーレからパラディ島へやって来たのかがわからないので驚きを隠せなかった、ということではないでしょうか。
捨て身の作戦
©諫山創 進撃の巨人 講談社 10巻39話「兵士」
巨人を担いだまま塔の外に飛び出そうとするライナー。
なんでこんな無謀な行動が取れるかというと、最悪巨人になってしまえば平気だから、と読むことが出来ます。
とはいえそんなことになったら104期を全員消さなければなりません。それをせずにコニーを守ったりしているのは兵士モードだからです。ややこしいですね。
兵士ではなく戦士
©諫山創 進撃の巨人 講談社 10巻39話「兵士」
ウトガルド城にて。コニーに「ライナーって昔からこうだったのか?」と聞かれて。
ライナーは(ベルトルトもですが)、パラディ島兵団の兵士ではなく、マーレ軍の戦士であるという伏線。「今は違う」というセリフは二重人格にも係っています。
これまで戦士という言葉は1度も出てきていませんのでかなり異質な発言のように感じます。※1
ベルトルトが兵士ごっこを止めないライナーにしびれを切らし始めているということでしょうか?
※1. アニメ4話では、訓練兵時代の場面(短刀を使った訓練)でライナーがアニに「お前は戦士にとことん向かんようだな」と言います(原作では「兵士」)。アニメ派へのサービスみたいなものかもしれません。
©諫山創 進撃の巨人 講談社 10巻39話「兵士」
このときライナーは「戦士って何のことだ?」と反応し、ベルトルトは黙ってしまいます。
©諫山創 進撃の巨人 講談社 12巻47話「子供達」
エレンを拐った後の巨大樹の森で、ベルトルトはライナーに「今は何だ?(戦士か?兵士か?)」と確認しています。ベルトルトとて常に完全にライナーの状態を把握できる訳ではありません。
©諫山創 進撃の巨人 講談社 12巻47話「子供達」
このときの反応は「…俺は戦士だ」です。
ウトガルド城のときはライナーがあまりにも命知らずな行動をするので、ちょっと抑制する意図で「戦士」というキーワードを使って反応を見たのだと思われます。
巨人化しようとするベルトルト?
©諫山創 進撃の巨人 講談社 10巻41話「ヒストリア」
避難していた塔が崩れそうになり、とっさに巨人化しようとするベルトルト。
ここでベルトルトが巨人化した場合、ライナーも木っ端微塵に吹っ飛んでしまいそうです。たまたまそれっぽい位置に手が置かれただけなのかもしれません。
まとめ
そしてこの後なんやかんやあって、例のこっそり告白から裏切りもんがああああ!に繋がります。
ピンポイントで伏線となる描写がどうかというよりも、ライナーの二重人格と黙って見守るベルトルトの苦悩の日々を1巻から10巻までじっくりと彼らの心情を想像しながら味わうのが趣深いのではないでしょうか。
関連
エレンが過去(845年)のダイナ巨人を操った方法とカルラを食べさせた理由 ダイナ巨人がベルトルトをスルーしてカルラの元へ直行した理由
アニメ Season1 2話
©諫山創 講談社 進撃の巨人 「進撃の巨人」製作委員会 Season1 2話「その日」
アニメSeason1 第2話。開拓地時代~口減らし作戦の回想シーンで中央政府の発表に驚愕するライナーとベルトルトの様子が描かれています。