「帰ったら…ずっと秘密にしていた地下室を…見せてやろう」
©諫山創 講談社 進撃の巨人 1巻1話「ニ千年後の君へ」
グリシャがどこを見ているかわからない
エレンの父グリシャが「地下室を見せてやろう」と言う場面。
右のコマでは目が影で覆われ、次のコマではの顔上半分が隠れており表情が読めません。
©諫山創 講談社 進撃の巨人 30巻121話「未来の記憶」
未来のエレン(がいるであろう方向)を見ていた
実はグリシャは「エレン視点のグリシャの記憶」を見ており、自分を見ているであろうエレンに視線を向けていました。というオチ。
すべては最初から決まっていたということがわかります。
グリシャが身に宿す進撃の巨人の特性
©諫山創 講談社 進撃の巨人 30巻121話「未来の記憶」
120話でエレンとジークが座標(道)へ到達、ジークがエレンを父の洗脳から解放するために、2人はグリシャの記憶を巡ることになりました。121話はその続きになっています。
そしてグリシャは進撃の巨人を継承しているので、未来の継承者(エレン)の記憶を覗き見ることができました。
グリシャは間接的にエレンがそこにいることがわかっている(「自分を見ているエレン視点の記憶」の映像が見えている)ため、(記憶の中では)そこにいるであろうエレンのほうを見て喋っていたということです。微妙に焦点が合っていません。
なぜ進撃の巨人が未来視のようなことが可能なのか、というところまでは作中で明らかにされていません。
帰ったら&見せてやろう
「帰ったら」「見せてやろう」というフレーズも地味に伏線めいています。
家に帰ってきたのはグリシャではなく、エレン自身でした(21巻85話「地下室」)。
手記という実物もありましたが、エレンは地下室到達をきっかけに徐々に「グリシャの記憶」が開き、記憶を通じて様々な秘密を知ることになりました。
鍵の存在意義
©諫山創 講談社 進撃の巨人 3巻10話「左腕の行方」
エレン達は地下室の扉の鍵は持っていませんでしたがリヴァイが扉そのものを破壊して部屋に入りました。
同じように机の引き出しなんて鍵が掛かっていたとしても無理やり壊してしまえば開けることは可能です。
ではなぜグリシャはエレンに鍵を託したのかというと「地下室の存在を思い出すため」です。
なぜずっと秘密にしていたのか?
中央の人間にバレると殺される&13年の任期ギリギリまで幸せな人生を送りたかったから、だと思われます。
壁内の統治方法を見ると、レイス家は壁外に興味を持ったり技術革新を進めようとする者を中央憲兵を使っては徹底的に粛清しています。
下手に地下室のこと、つまり外の世界のことやエルディア復権派の任務(始祖の巨人奪還)のことを口外するのは危険です。
もし自分が何も成し遂げずに死んでしまったら、いずれ始まるマーレ勢の侵略から家族を守れません。
グリシャはエレンに巨人の力を継承する決心がつかないうちは秘密を打ち明けるわけにはいかなかったのだと思います。
「地下室を見せてやろう」は複数回登場している
©諫山創 講談社 進撃の巨人 3巻10話「左腕の行方」
©諫山創 講談社 進撃の巨人 21巻85話「地下室」
3巻10話、21巻85話にも「地下室を見せてやろう」の回想が登場しますが、いずれもグリシャはエレンのほうを向いていません。
最大の謎。なぜあの立ち位置なのか
「地下室を見せてやろう」の場面で、記憶ツアー中の19歳のエレンは、なぜグリシャの目の前に立ったのでしょうか?
エレンはグリシャが自分の記憶を見ていることを確かめるためにあの位置に立った、と考えられます。
ご存知の通り、エレンは10歳のときにこの場面を経験しています。エレンは地下室と鍵について度々思いを巡らせて「なぜ父さんはあのときオレ(10歳のエレン)を見ていなかったんだろう?」と疑問を抱いていたと推測できます。そして記憶ツアー中に「どうやら父さんは記憶を介してオレに見られていると感じていたようだ」と気づいた。
グリシャが地下室の机に手記を仕舞って鍵を掛けた後、エレンはグリシャの目の前に立ってみるとこちらを見てきた。エレンは「ああ、やっぱりそうだ」と思った。
そして「地下室を見せてやろう」の場面。19歳のエレンは「父さんの目の前に立ったらこっちを見るはずだ」と考え、グリシャが立つ玄関前に移動した。そしたらやっぱりグリシャはエレンがいるほうを見た。
エレンはグリシャが「エレンの記憶」を見ているかどうか確認していた。その一方でグリシャは「エレンに見られている」と感じていた。お互いに見ている、そしてお互いに見られていることを意識し合った結果、あのような場面が生まれたということになるでしょう。それが結局巡り巡ってグリシャが始祖奪還に向かう覚悟を決める流れへと繋がります。
エレンがグリシャに記憶を見せていた、では後付けになってしまう
もし仮に、エレンが「自分はグリシャに意図的に記憶を見せられる」と認識していた場合、「地下室を見せてやろう」の場面はエレンが主体的に動かなければ成立し得ないものということになります。そうなると、エレンがあの立ち位置に移動する理由はなくなってしまいます。
なぜなら、父さんの目の前に立てばこっちを見てくるかも知れない――父さんはオレの記憶を見ているのだろう――とエレンが推測して動いたという理屈が使えないからです。
エレンの疑問「なぜ父さんはオレを見てなかった?」に対する回答として「19歳エレンがグリシャの前に立って記憶を見せていたから」では不十分です。なぜその位置に?に答えられません。
かといって、エレンはそんな疑問を持っていないとみなしても、エレンがグリシャの目の前に立つ理由は不明なままです。
エレンがグリシャの目の前に立つ理由が「1話の場面を再現するため」や「そうしなければいけないからそうした」なのであれば、それは伏線回収というよりも都合の良い後付けになってしまいます。
まとめ
何が伏線で何を回収とするのかは難しい場面です。
- 鍵の存在
- 地下室の秘密とは何か
- 未来の記憶という設定を示唆
- 始祖の巨人の力を使えば誰かの任意の記憶を覗き見る事ができることを示唆
- 進撃の巨人の継承者(グリシャ)は、未来の継承者(エレン)の記憶を覗き見ることができることを示唆