「ユミルの民」と「王家の血筋」の違いとは

※31巻までのネタバレを含みます。

ユミルの民は元を辿れば初代フリッツ王に行き着くのだから、全員王家の血筋ということになるのでは? という謎について考えます。

あくまでも「もし違いがあるのなら、こう考えるとつじつまが合うよね」という話です。

全員が「王家の血筋」になってしまう?

作中で「王家の血筋」は巨人の真価を発揮する特別な存在とされています。

王政編で中央政府がヒストリアを狙ったり、マーレ編以降エレンとジークの接触を巡って様々な問題が起きたりするのは、ヒストリアやジークが替えのきかない存在だからです。

にも関わらず、「ユミルの民」は誰もが皆、先祖を辿れば初代フリッツ王に行き着くらしい。それではユミルの民全員が「王家の血筋」ということになってしまいます。これはおかしな話です。

なので「ユミルの民全員が王家の血筋」というのはおそらく勘違いなのだと思われます。

では「普通のユミルの民」と「王家の血を引くユミルの民」の違いはどこにあるのでしょうか?

結論を言うと王家の血筋には2つの系統があると考えられます。

  • ①エルディア純血(非ユミルの民)←古代の王様
  • ②ユミルの民との混血(ユミルの民)←これが作中に出てくる「王家の血筋」

作中で言われている「王家の血筋」とは ②ユミルの民とエルディア純血王家との混血の系統を指す と考えると、「普通のユミルの民」と「王家の血筋のユミルの民」は明確に区別され、さらに「始祖の巨人」との関係も含め様々な謎のつじつまが合うことになります。

関連

作中で「王家の血筋」がどのような位置づけなのかということに関してはこちら → 「王家の血筋」とは。「始祖の巨人」との関係について

目次

ユミルの民と王家の血筋を区別する方法

目指すゴールは3つのタイプを区別すること

  • ①ユミルの民○王家の血筋○(作中で言われる王家の血筋。混乱の元)
  • ②ユミルの民○王家の血筋✕(一般のユミルの民=①以外のユミルの民)
  • ③ユミルの民✕王家の血筋○(初代フリッツ王と本妻の子供の家系)

この3つのタイプが作中に別々に存在することを証明できれば疑問は解消されるはずです。

①のユミルの民かつ王家の血筋タイプの王が、一般のユミルの民とは違う血筋として存在できるシナリオを考えます。

※ユミルの民=始祖ユミルの子孫全員(① + ②)とします。

ユミルの民とは基本的に始祖ユミルの子孫全員のことを指すと考えています。定義や特徴、条件など詳しいことに関しては別のページで考察していますので、よろしければご覧下さい。

ユミルの民をユミルの民たらしめる条件

王家の血筋は2種類ある

色々と想像の余地を残した状態だと以下のようになります。

「普通のユミルの民」と「王家の血筋のユミルの民」を区別するには?

王家の血筋には2種類ある、と考えることにします。

1つは「純血エルディア人の初代フリッツ王」と「純血エルディア人の本妻」の子から続く血筋(エルディア純血・黄色)

そしてもう1つは「純血エルディア人の王」と「ユミルの民」の混血から続く血筋(ユミルの民と混血・赤)。こちらが作中で言われる「王家の血筋」です。

ユミルの民なので 知性巨人を継承することが可能 ですし、普通のユミルの民とは 生まれつきの違いがある ことも保証されています。

これで「普通のユミルの民」と「王家の血を引くユミルの民」を明確に区別することが出来るようになりました。

混血がいつ始まったのかは作中の描写がないので不明です。2代目で既に混ざっていたかも知れないし、かなり後だった可能性もあります。

いつ王家の血筋が始まったのかという話題は一旦置いておきます。

※おおげさに純血と書いていますが、要は父と母の両方が非ユミルの民という条件を満たしているということです。過激に純血を維持し続けたかもしれないし、外国の貴族から妻を迎え入れた可能性もあります。

王家の血筋(エルディア純血)が存在する理由

果たして本当にエルディア純血の王様が存在すると言えるのでしょうか?

上の仮説がまかり通ることを証明するには、作中の描写からそれなりに根拠になりそうなものを引っ張って来なければなりません。

後継者問題

そもそも、進撃の巨人の世界に限らず王様にとって後継ぎを残すことはとても重要な仕事です。最重要任務と言っても過言ではありません。

ですから、初代フリッツ王にはマリア・ローゼ・シーナ以外の子供がいたと考えられます。

始祖ユミルはフリッツ王の妻といえるのか

始祖ユミルに冷たい言葉をかける初代フリッツ王

©諫山創 講談社 進撃の巨人 122話「二千年前の君から」

フリッツ王は始祖ユミルとの間に3人娘(マリア・ローゼ・シーナ)を儲けていますが、彼は最後までユミルを妻ではなく奴隷としてしか見ていませんでした。

現実世界でオスマン帝国の王が奴隷の女性を妻にしたという例があるのですが、この場合は正妻に格上げされるような形になっていたようです。

ところが、初代フリッツ王と始祖ユミルの場合は最後まで奴隷のままです。

つまり3人の娘は後継ぎではないのです。フリッツ王にとってはあくまでも巨人の力を維持するための器という認識だったのではないでしょうか。

正妻が別に存在すると思われる描写

始祖ユミル「オイオイオイオイ待て待て」

初代フリッツ王を囲む5人の女性。不満そうな始祖ユミル

©諫山創 講談社 進撃の巨人 122話「二千年前の君から」

122話で、初代フリッツ王が複数の女性に囲まれているコマがあります。繋がりは不明ですが、もしかしたら隣のコマの始祖ユミルがこの様子を不満に思って見ている、という可能性もあるでしょう。

この5人の女性の中の数名、もしくは全員が妻だと考えられます。当時の文明の発達具合、時代背景から考えて一夫多妻制であることに違和感はありません。

また通常、貴族は貴族同士で結婚します。この時代も例外ではないでしょう。自分の家系の特別さを保ち、富や権力が他に流れないようにするために、なるべく血が濃くなるように代を重ねていきます。

であれば、フリッツ王の妻は同じエルディア人の貴族か、外国の貴族から選ばれることになります。少なくともマーレ人や奴隷の中から選ぶことはないでしょう。

よって5人の女性の中の1人が本妻であり、その本妻との間に生まれた子が2代目フリッツ王となった確率は極めて高いと考えられます。

2代目がそうであれば、特に不具合がない限りは3代目以降も同じ形を取るでしょう。そうやって王家の血筋(エルディア純血)が脈々と受け継がれていたと考えられます。むしろ2代目から急にやり方を変える理由がいまいちわかりません。

王と巨人の関係

巨人は奴隷が継承するもの

本妻・後継ぎ問題のところでも触れましたが、初代フリッツ王は巨人を奴隷とみなしています。

始祖ユミルの死後、巨人の力を保持するために自分ではなく3人の娘にユミルの遺体を食べさせました。

本人は巨人の力は持ちたくないんです。巨人は奴隷だから。

王本人はあくまでも巨人に命令して働かせる立場です。

自分は巨人になりたくない

過去のエルディア人は始祖ユミルの巨人が敵を駆逐し、道を切り開いて橋を渡す姿をどう思って見ていたのでしょうか?

「自分もあの力が欲しい!」とは思わなかった はずです。

むしろ逆で、あんな化け物にはなりたくない と思ったのではないでしょうか。

牛や馬のような家畜は、畑を耕したり馬車を引いたり人間の活動を拡張するために使われています。人にはない大きな力を持っているからといって牛や馬になりたいと思うでしょうか?

中にはそう思う人もいるかも知れませんが、ごく僅かでしょう。

どんなに大きくて強くても、奴隷として働かされるのであれば、その力を自分の意志で好きなように使えないのであれば、意味がないと考えるのではないでしょうか。

だけど巨人の力は使いたい

2代目の命令役(つまり王)は、普通に考えて初代フリッツ王と本妻との子(純血エルディア人)が継ぐことになるでしょう。

以降1800年以上の長い間、王は純血エルディア人、巨人はユミルの民(始祖ユミルの子孫・奴隷)というスタイルをずっと続けていったと思われます。

古代のフリッツ家の人々は王家の血を引く者が巨人の力を継承するなんて考えていなかったんじゃないでしょうか。

現代に至ってもそれは変わらず、ロッド・レイスは後継ぎを皆殺しにされたら今度は妾の子であるヒストリアを巨人にしようとしました。ヴィリー・タイバーも罪悪感を抱きつつ妹(ラーラ)に戦鎚の巨人を継承させています。

みんな巨人の力を使おうとするけど自分がなろうとはしないのです。

歴代フリッツ王は本当に始祖の巨人を継承していたのか

初代フリッツは巨人の力を持っていませんでした。つまり非ユミルの民です。

そうすると2代目以降も王は純血のエルディア人である可能性が高いでしょう。

もちろん、始祖ユミルの娘たちの誰かが女王になった可能性もありますが、それまで奴隷扱いされていた者が突然女王になったりするのでしょうか?

王政編のクーデターのようなものがあれば良いのですが、122話の内容だけではそれを想像するのは難しいと思います。

巨人大戦が起きた理由は145代目王の「始祖の継承」

巨人大戦が起きたきっかけとは

©諫山創 講談社 進撃の巨人 86話「あの日」

 

そもそも「巨人大戦」とは145代目の王が「始祖の巨人」を継承したことが始まりですが

それまでも八つの巨人を分けた家同士では争いの絶えない時代が永らく続いていました

それでも王家が「始祖の巨人」を呈することでエルディアは均衡を保つことができていたのです

しかし145代目はその役目を放棄し辺境の島に都を移しました

86話「あの日」でダイナ・フリッツは「巨人大戦が始まった原因は、145代目の王が始祖の巨人を継承したこと」と言っています。

もし145代目の王が144代目以前と同じく慣例に従って始祖の継承を巨人を継承したのであれば、わざわざ「始祖の巨人を継承した」と付け加えないはずです。

そもそも122話に出てきた初代の王(エルディア部族の長)は非ユミルの民であり、巨人の力は持っていませんでした。

144代以前のエルディア帝国の王は始祖の巨人を継承していない可能性が高い

ではいつから「始祖の巨人継承者は王」という決まりが出来たのでしょうか?

作中に明確な答えは登場しません。

似たような例としてはレイス家やタイバー家がありますが、当主のロッドやヴィリーは巨人を継承しませんでした。レイス家は更に偽フリッツ家を表の王家として立てていたりします。

また作中の現在でも、女王であるヒストリアが獣の巨人を継承するかどうかで大揉めしています。君主が寿命を縮めてまで巨人を継承するのは異常だからです。

じゃあ大昔はどうだったのかというと、王が巨人の力を持っていなかった始祖ユミルの時代と王が始祖の巨人を継承した145代目カール・フリッツの間の約1900年がすっぽり抜け落ちています。まったく描かれていません。となると現状は145代目が圧倒的にレアケースということになります。

だったら86話のダイナのセリフは、145代目の王が急に始祖の巨人を継承するなんていう今までと違うことをしたから巨人大戦が起きてしまった、と解釈するほうが自然ではないでしょうか。

王家の血筋(ユミル混血)が144代目の時代(巨人大戦直前)に生まれたパターン

王家の血筋(エルディア純血)とユミルの民の混血が巨人大戦の前に初めて起きたとすると以下のようになります。

王家の血筋と普通のユミルの民に違いがあるならこうなる、の家系図その1・進撃の巨人

王家の血筋(ユミル混血)は巨人大戦の直前、144代目フリッツ王の時代に初めて生まれました。

そのため王家の血筋(ユミル混血)は、145代目カール・フリッツの家系と、大陸に残ったダイナの家系しか存在しません。

巨人大戦後、145代目カール・フリッツはパラディ島に移住し、レイス家となり血を繋いでいきます。

一方大陸では、マーレによって残ったエルディア帝国時代の支配層(純血エルディア人)の多くは殺されてしまったはずです。

そうなるとダイナの家系は純血を維持することは愚か、生き残ることさえ難しい状況ですから、ユミルの民との混血もやむ無しということになります。

そうやって何とか血を繋いだフリッツ家のたった1人の生き残りがダイナ・フリッツです。

このように考えれば、 王家の血筋(ユミル混血)は知性巨人継承の条件(ユミルの民である)をクリアしつつ希少性を保ち、普通のユミルの民と明確に区別できるようになります。

カール・フリッツとタイバー家が起こしたクーデター

145代目の王カール・フリッツが起こしたクーデター

144代目フリッツ王の時代。

王と継承者(エルディア純血)がみんな暗殺されてしまい、カール・フリッツだけが生き残り、145代目の王の座につくことになりました。

このクーデターを裏で仕切っていたのはフリッツ王政に不満を持っていたタイバー家とマーレ(ヘーロス)です。

実はカール・フリッツは144代目の王(純血エルディア人)と妾(奴隷・ユミルの民)の子でした。

ということはなんと、カール・フリッツは王家の血を引く者でありながらユミルの民でもある、という史上初のレアな存在になったのです。

こうしてカール・フリッツは本来は始祖に命令を下す王でありながら、それを覆して自らが始祖の巨人の力を宿し実行するという新しい時代のスタイルを築くことになりました。

タイバー家は、極端な平和思想を持つカール・フリッツに王位と始祖の巨人を継承させることで、フリッツ家を潰そうとしていた。王家さえ潰せば残りの7つの家を同士討ちにさせるのは簡単。というのは十分あり得る展開ではないでしょうか。

このクーデターストーリーの詳細はさておき、「カール・フリッツが王になり、かつ始祖の巨人も継承する」という一連の騒動は狙ってやったことだと思います。

ロッドと妾のアルマとの間に生まれたヒストリアが、エルヴィンの企てたクーデターによって女王となったのと同じようなことが100年前の巨人大戦でも起きていた……なんてことになれば、2つのドラマが綺麗に重なって面白いですよね。

王家の血を引く巨人が古代から存在していた場合

歴代フリッツ王が巨人(始祖の巨人)を継承していない可能性があることはわかりました。

しかし、「王家の血を引く王様ではない巨人(王家の血を引く奴隷のユミルの民)」がカール・フリッツの時代まで存在しなかったとは限りません。

「ユミルの民の王様」はいなくても「王家の血を引くユミルの民」は以前から存在したかもしれないのです。

グリシャやコルトが「王家の血を引く巨人やユミルの民」は特別だというような発言をしています。これが単なる古代の伝承の受け売りなのか、広く知れ渡っている事実なのか、はっきりしていません。

上のカールとタイバーのクーデター妄想話はそんな奴はいなかったに違いないと決めつけて無視しています。

いたかもしれないし、いなかったかもしれません。確定していない以上両方の可能性を模索しないといけないでしょう。

ただし、本考察の目的はあくまでも「王家の血を引くユミルの民」をレアで特別な存在として「普通のユミルの民」と明確に区別することです。しかも作品本編の描写と矛盾がないように。

特別さを保ちつつ、かつ昔から「王家の血筋」が存在する場合、どのようなケースが考えられるのでしょうか?

王家の血筋(ユミル混血)が古代から存在するパターン

最初から、つまり2代目の段階で王家の血筋(ユミル混血)が生まれている場合。

122話の初代フリッツ王の様子を見ると、自分の子種を奴隷に授けることはやぶさかではないようです。2代目も同じ考えを持つ可能性は低くありません。

フリッツ王家専用の巨人を確保するためとあらば、それもうなずけるでしょう。ただし、「王家の血筋(ユミルの民)」は特別でなければなりませんので、厳格に管理する必要があります。

「普通のユミルの民」と「王家の血筋のユミルの民」に違いがあるならこうなる、の図。その2。

仮にマリアが始祖の巨人を担当することにします。

2代目フリッツ王とマリアで出来る限りたくさんの子を儲け、10名前後(男女半々でなくても両方いる状態)になったとします。

この子達でひたすら近親婚、あるいはその時代の王から子種を拝受し、始祖の巨人は必ずこの血統の人間が継承するようにします。

現実世界でも古代の王家が近親婚している例はありますし、神話でも兄妹(姉弟)夫婦は出てきますので、そこまでおかしな話ではないのではないでしょうか。

最初のうちは13年の継承サイクルを回すのが大変そうですが、何代か経れば子供の数も増えるので安定すると思われます。地獄ですね。

壁内のレイス家と偽フリッツ家の関係と同じようなものだと思います。

レイス家が奴隷一族(始祖の巨人を継承)、偽フリッツが本当のフリッツ家(王様)です。

とにかく奴隷一族の血が途絶えないように、かつ外部に漏れないように厳格に管理していた、と想像すると恐ろしいですが、そうするしかこのシステムを維持する方法はないと思います。

この辺の話がもし本当なら「鳥籠の中に囚われていた屈辱」や「家畜みてぇに子供を産まされ殺され」に繋がってきます。

途中で混血が始まったパターン

上で挙げたものと同じです。

「普通のユミルの民」と「王家の血筋のユミルの民」を区別するには?

途中で混血が始まったという可能性もあるとは思いますが、そのとき何が起きたのかという説明が欲しいところです。

せっかくエルディア純血の王がいるという仮説を立てているのに途中がフワッとだとあまり意味がないような気もします。

そもそも王様と奴隷の混血は始祖ユミルと初代フリッツ王の時代で既に起きていることです。ですので混血はやるなら初めから(2代目から)やるでしょうし、やらないなら145代目までなかったのではないかと思います。

歴代フリッツ王が始祖の巨人を継承しないと矛盾しそうなところ

王が非ユミルの民なら145代よりも少なくなるのでは?

王が非ユミルの民ならば任期は13年より長くなるはずだから、歴代王の代数は145よりもっと小さくなるではないか、と思われるかもしれません。

確かに徳川家や天皇家の1代平均は13年より長いです。徳川家は1代平均17.6年、天皇家は神武天皇から数えれば1代平均21年、継体天皇からなら1代平均15.7年となります。

その一方で、30年も40年も続くなんて稀だということも言える訳です。

仮にフリッツ家の王が非ユミルの民だったとしても任期が13年より長くなる保証はありません。

古代エルディア帝国の時代は争いが絶えなかったようですし、平均寿命も短かったと予想されます。約1900年で145代というのはそこまで現実離れした数字でもないのではないでしょうか。

徳川家

江戸時代は1603~1868年の265年間です。

265 ÷ 15 = 1代平均17.6年

天皇家

令和天皇は126代目であり、紀元前660年の神武天皇から数えれば約2680年の歴史になります。

2680 ÷ 126 ≒ 1代平均21年

ちょうど100代前の継体天皇が西暦でいうと大体450年頃とされています。

2020 - 450 = 1570年

1570 ÷ 100 = 1代平均15.7年

関連: 「二千年後の君へ」の2000年問題を考察

600年前の流行り病を治した始祖の巨人

600年前、ユミルの民の流行り病を治した始祖の巨人の力

©諫山創 講談社 進撃の巨人 114話「唯一の救い」

28巻114話「唯一の救い」でクサヴァーさんは、600年前に流行り病が猛威を奮ったときに当時の王が始祖の巨人の力でユミルの民の身体の設計図を都合よく書き換えた、と言っています。

あれ?やっぱり王が始祖の巨人を継承していたんじゃないか!と思われるかもしれません。

しかしこれは、 当時の王が奴隷(始祖の巨人継承者)に命令してやった と読むことも出来ます。

例えば、「850年。エルディア国の女王ヒストリアはパラディ島民のために進撃の巨人の力を使ってウォール・マリアの穴を塞いだ」という文章からヒストリアが進撃継承者だと断言することは不可能でしょう。

21巻86話「あの日」でグリシャの父が読んでいた歴史書の内容から「始祖ユミルはエルディア帝国の初代王である」と多くの読者が勘違いしたのと同じ構造かもしれません。

結局、真実はわからないのです。

なぜ始祖の巨人は王家の血筋でなければ真価を発揮できないのか?

  • 「王家の血筋(ユミル混血)」の者が始祖の巨人の力を宿すと、その真価を発揮することが出来る
  • 「不戦の契り」に縛られてしまう(145代目カール・フリッツの子孫の場合)
  • 「王家の血筋(ユミル混血)の知性巨人」が「始祖の巨人」と接触すると座標の力(巨人コントロールや地鳴らし、不戦の契り解除)を発動できる
グリシャの手記による始祖の巨人と王家の血筋、不戦の契りの説明

©諫山創 講談社 進撃の巨人 89話「会議」

 

「始祖の巨人」がその真価を発揮する条件は王家の血を引く者がその力を宿すこと
しかし王家の血を引く者が「始祖の巨人」を宿しても145代目の王の思想に捕らわれ残される選択は自死の道のみとなる
おそらくそれが「不戦の契り」

不戦の契り

©諫山創 講談社 進撃の巨人 99話「疾しき影」

ヴィリー・タイバーやハンジが言っていることは、以下のような感じです。

始祖の巨人は王家の血を引くものが継承しなければ真価を発揮できない。しかし王家の血を引く者は「不戦の契り」に縛られるので力を使うことはない。

これでは何もできません。巨人もクソもないような状況です。むしろそれが狙いなのでしょうけど。

この作中のセリフ、描写をストレートに解釈すれば、「カール・フリッツより前の王家の血筋を引く継承者であれば始祖の巨人の真価を発揮できた」ということになるのかもしれません。

確かにその通りだと思います。王家の血筋なら始祖の巨人は真価を発揮する。間違いないと思います。

しかし、122話に登場する「始祖ユミルの巨人」は王の望む通りに活動できているように見えますし、123話のエレンは「地鳴らし」を起こして全ユミルの民に話しかけたりしています。

奴隷の始祖ユミルだろうが、非王家のエレンだろうが、始祖の巨人の真価を発揮できているのです。

では「王家の血筋」は何のために存在するのでしょうか?

座標へのアクセス権

「始祖の巨人は王家の血筋でなければ真価を発揮できない」というのは、要するに「王家の血を引く者でなければ座標に行けない」ということを言っているだけなのです。

王家とそれ以外の者との違いは、「力を引き出せるかどうか」ではなく「命令しに行けるかどうか」だったということになります。

実際問題、エレンのような王家でない者が継承した場合、ヴィリーの言う通り始祖の巨人の真価を発揮できません。

なぜならエレン1人では座標にアクセスすることが出来ないから、つまり始祖ユミルに命令しに行けないからです。

そして結局、座標にアクセスするための鍵となる「王家の血を引く巨人」を別途用意しなければならなくなります。

クサヴァーによる王家の血筋と知性巨人と始祖の巨人による不戦の契りを打ち破る方法の説明

©諫山創 講談社 進撃の巨人 115話「支え」

 

「王家の血を引く巨人」であれば「始祖の巨人」の保有者と接触することによってその能力を引き出すことができるはずだ

つまりクサヴァーがジークに伝えた話そのままです。

なぜこんな複雑なシステムなのでしょうか?

始祖の巨人を動かす2つの要素

巨人大戦より以前の時代、始祖の巨人はどうやってその力を行使していたのでしょうか?

初代フリッツ王が始祖ユミルに命令し、王の望み通りに行動しているように見えます。

フリッツ王の命令で敵をなぎ倒す始祖ユミルの巨人

©諫山創 講談社 進撃の巨人 122話「二千年前の君から」

122話の状況がそのまま2代目以降も続くのであれば、フリッツ王(純血エルディア人)が何らかの命令をし、奴隷の巨人(ユミルの民)は言われるがままに任務を遂行していたと考えられます。

つまり王からの命令がなければ、始祖の巨人は意志を持って自発的に何かするということはなかったのではないでしょうか??

ジークが座標で長い間始祖ユミルを観察した結果、「自分の意志を持たぬ奴隷」と判断したのはそういうことだと思います。(120話「刹那」)

始祖の巨人は「命令する王様」と「命令される奴隷」の2つが揃って初めて機能するものなのです。

しかし145代目カール・フリッツはこれまでのルールを覆し、「命令する王様」と「命令される奴隷」を一体化させました。

自分で自分に命令して始祖の巨人の力を使うようになったのです。そして「不戦の契り」を編み出して意図的に「力を使わない」方向に持っていきました。

いわば始祖の巨人の封印です。

始祖の巨人の力を使えない状況とは

ではエレンのような「王家の血筋ではない人間」が始祖の巨人を継承したらどうなるのでしょうか?

始祖の巨人の力を使うために必要な「命令する王様」と「命令される奴隷」という2つの要素のうち、「命令する王様」がいないということになります。

つまりこれが「始祖の巨人の真価を発揮できない」ということです。

エレン1人の力ではどうにもなりません。

だから、始祖の巨人の継承者は王家の血筋でなければいけない、と言われるようになったのです。

ヴィリー・タイバーが言っていたことは事実である、というか別に間違ったことは言っていないと認めざるを得ません。

始祖の巨人を使う抜け道

唯一の抜け道として、「始祖の巨人」と「王家の血筋の巨人」が接触することで座標空間へ到達し、そこでどうにかして始祖に命令を伝える、というやり方があります。

エレンがダイナやジークと接触してやったのはこれです。

2度ともエレンの思い通りになったところを見ると、命令者が王様でなくても始祖ユミルが聞いてくれればそれでOKなようです。

王家の血を引くジークを差し置いてエレンが命令出来たのは、始祖ユミルに同情、共感を示したことで心を掴んだから??

12巻50話「叫び」でエレンがダイナ巨人に触れて「座標の力」を使えたのは、王家の血筋であるダイナに意志がなかった(または元々戦う意志があった)からエレンの思い通りになった??

「王の命令は絶対」というのはあくまでも奴隷ユミルの思い込みに過ぎないということでしょうか。

元凶は145代目カール・フリッツ

122話でエレンが始祖ユミルの心を掴んだように、座標にさえ行ければ本当は王家でなくても良かったのだと思います。

しかし、王家の血を引く者がいないと座標に行くことが出来ない。それが一番の問題だったということです。

そして、なぜそんなことが問題になるのかといえば145代目カール・フリッツが始祖の巨人を継承したからです。

カールは「命令する王」と「命令される奴隷」を一本化、そして戦うことを否定した。

巨人大戦が大きなターニングポイントであることがよくわかります。

結局重要な王家の血筋

なんだかんだで巡り巡ってやっぱり「王家の血筋」は必要だったのです。

そして物語的にも「王家の血筋」と「普通のユミルの民」は区別される必要があります。

そうでないと、エレンがダイナ巨人と接触して大ピンチを脱出したり、ヒストリアが狙われたり、パラディ島の存亡を賭けて憎きジークと交渉したり、そういったあれこれが全部「勘違いでした」ということになってしまいます。

不戦の契りの発明

145代目カール・フリッツはどうやって「不戦の契り」を生み出したのでしょうか?

120~122話を読む限り、始祖の巨人の力を行使するということは、すなわち座標で始祖ユミルに命令することだと思われます。

王家の血筋でもあり、ユミルの民でもあるカール・フリッツは自力で道にアクセスし、始祖ユミルに命令出来たのでしょう。

座標空間でエレンが始祖ユミルを抱きしめながら語りかけたのと同じようなことをしたのだと思います。

あとはただ単に自発的に「記憶の改竄はするけど戦うことはしない」と心に決めたのでしょう。その固い決意がウーリやフリーダら子孫に受け継がれているということです。

記憶の共有

145代目が歴代の王と大きく違うのは、ユミルの民として記憶を持っていることです。

歴代のフリッツ王は大陸の支配者とは言っても普通の人間なので、良くも悪くも昔のことは簡単に忘れてしまいます。いくら悲惨な歴史の記録が書面で残されていたとしても、あの戦乱の時代に生きる人間がどれほど罪悪感を抱くでしょうか。

残念ながら、あまり深刻に考えなかったと思います。

ところが145代目は、2000年の間にユミルの民が奴隷として味わった苦しみや痛み、屈辱を手に取るように感じてしまうはずです。ウーリやフリーダの様子を見ればそれは明らかです。

レイス家の始祖継承者が「不戦の契り」に縛られて何も出来なくなるのも当然のことなのかもしれません。

145代目の極端な平和思想

平和を願うウーリ・レイス

©諫山創 講談社 進撃の巨人 69話「友人」

ヴィリー・タイバーによれば、カール・フリッツは始祖の巨人を継承する以前から同族同士の争いを嘆き、特にマーレに同情していたようです。

生き残るためには敵を駆逐し支配しようとするのが当たり前という時代に、争いを好まず平和を願う心を持っていたカール・フリッツ。

まるでアルミンのようです。あるいはジークでしょうか?

なぜ145代目カール・フリッツのような人間が生まれたのか、数ある進撃の巨人の謎の中でもトップクラスの不思議さだと思います(69話でケニー・アッカーマンとウーリ・レイスのことがやけに丁寧に描かれてたのも気になります)。

そしてカールは自分自身が始祖の巨人を継承し、いよいよ本格的に記憶の共有が進んだことで、平和への願いがより一層強まって暴走してしまったのでしょう。

もしかしたらカール・フリッツは奴隷に巨人を継承させる歴史を終わらせたかったのかもしれません。

まとめ

「普通のユミルの民」と「王家の血筋のユミルの民」は違う。

「ユミルの民」とは、始祖ユミルの子孫全て。しかし「王家の血筋」は初代フリッツの子孫全てではない。それだと話が合わなくなる。

作中で言われるている「王家の血筋」とは、エルディア純血の王とユミルの民との混血の人種をルーツとする系統のことだと考えると辻褄が合う。

少なくとも初代フリッツの次の世代以降に生まれたと考えられる。

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