「ユミルの民」と「王家の血筋」の違いとは
※31巻までのネタバレを含みます。
ユミルの民は元を辿れば初代フリッツ王に行き着くのだから、全員王家の血筋ということになるのでは? という謎について考えます。
あくまでも「もし違いがあるのなら、こう考えるとつじつまが合うよね」という話です。
作中で「王家の血筋」は巨人の真価を発揮する特別な存在とされています。
王政編で中央政府がヒストリアを狙ったり、マーレ編以降エレンとジークの接触を巡って様々な問題が起きたりするのは、ヒストリアやジークが替えのきかない存在だからです。
にも拘わらず、「ユミルの民」は誰もが皆、先祖を辿れば初代フリッツ王に行き着くらしい。それではユミルの民全員が「王家の血筋」ということになってしまいます。これはおかしな話です。
なので「ユミルの民全員が王家の血筋」というのはおそらく勘違いなのだと思われます。
では「普通のユミルの民」と「王家の血を引くユミルの民」の違いはどこにあるのでしょうか?
結論を言うと王家の血筋には2つの系統があると考えられます。
- ①エルディア純血(非ユミルの民)←古代の王様
- ②ユミルの民との混血(ユミルの民)←これが作中に出てくる「王家の血筋」
作中で言われている「王家の血筋」とは ②ユミルの民とエルディア純血王家との混血の系統を指す と考えると、「普通のユミルの民」と「王家の血筋のユミルの民」は明確に区別され、さらに「始祖の巨人」との関係も含め様々な謎のつじつまが合うことになります。
そもそもなぜこんな疑問を持つのかということに関しては、長くなるのでページ最下部に書きました。
関連
作中で「王家の血筋」がどのような位置づけなのかということに関してはこちら → 「王家の血筋」とは。「始祖の巨人」との関係について
目次
ユミルの民と王家の血筋を区別する方法
目指すゴールは3つのタイプを区別すること
- ①ユミルの民○王家の血筋○(作中で言われる王家の血筋。混乱の元)
- ②ユミルの民○王家の血筋✕(一般のユミルの民=①以外のユミルの民)
- ③ユミルの民✕王家の血筋○(初代フリッツ王と本妻の子供の家系)
この3つのタイプが作中に別々に存在することを証明できれば疑問は解消されるはずです。
①のユミルの民かつ王家の血筋タイプの王が、一般のユミルの民とは違う血筋として存在できるシナリオを考えます。
※ユミルの民=始祖ユミルの子孫全員(① + ②)とします。
ユミルの民とは基本的に始祖ユミルの子孫全員のことを指すと考えています。定義や特徴、条件など詳しいことに関しては別のページで考察していますので、よろしければご覧下さい。
王家の血筋は2種類ある
色々と想像の余地を残した状態だと以下のようになります。
王家の血筋には2種類ある、と考えることにします。
1つは「純血エルディア人の初代フリッツ王」と「純血エルディア人の本妻」の子から続く血筋(エルディア純血・黄色)
そしてもう1つは「純血エルディア人の王」と「ユミルの民」の混血から続く血筋(ユミルの民と混血・赤)。こちらが作中で言われる「王家の血筋」です。
ユミルの民なので 知性巨人を継承することが可能 ですし、普通のユミルの民とは 生まれつきの違いがある ことも保証されています。
これで「普通のユミルの民」と「王家の血を引くユミルの民」を明確に区別することが出来るようになりました。
混血がいつ始まったのかは作中の描写がないので不明です。2代目で既に混ざっていたかも知れないし、かなり後だった可能性もあります。
いつ王家の血筋が始まったのかという話題は一旦置いておきます。
※おおげさに純血と書いていますが、要は父と母の両方が非ユミルの民という条件を満たしているということです。過激に純血を維持し続けたかもしれないし、外国の貴族から妻を迎え入れた可能性もあります。
王家の血筋(エルディア純血)が存在する理由
果たして本当にエルディア純血の王様が存在すると言えるのでしょうか?
上の仮説がまかり通ることを証明するには、作中の描写からそれなりに根拠になりそうなものを引っ張って来なければなりません。
後継者問題
そもそも、進撃の巨人の世界に限らず王様にとって後継ぎを残すことはとても重要な仕事です。最重要任務と言っても過言ではありません。
ですから、初代フリッツ王にはマリア・ローゼ・シーナ以外の子供がいたと考えられます。
始祖ユミルはフリッツ王の妻といえるのか
©諫山創 講談社 進撃の巨人 122話「二千年前の君から」
フリッツ王は始祖ユミルとの間に3人娘(マリア・ローゼ・シーナ)を儲けていますが、彼は最後までユミルを妻ではなく奴隷としてしか見ていませんでした。
現実世界でオスマン帝国の王が奴隷の女性を妻にしたという例があるのですが、この場合は正妻に格上げされるような形になっていたようです。
ところが、初代フリッツ王と始祖ユミルの場合は最後まで奴隷のままです。
つまり3人の娘は後継ぎではないのです。フリッツ王にとってはあくまでも巨人の力を維持するための器という認識だったのではないでしょうか。
正妻が別に存在すると思われる描写
始祖ユミル「オイオイオイオイ待て待て」
©諫山創 講談社 進撃の巨人 122話「二千年前の君から」
122話で、初代フリッツ王が複数の女性に囲まれているコマがあります。繋がりは不明ですが、もしかしたら隣のコマの始祖ユミルがこの様子を不満に思って見ている、という可能性もあるでしょう。
この5人の女性の中の数名、もしくは全員が妻だと考えられます。当時の文明の発達具合、時代背景から考えて一夫多妻制であることに違和感はありません。
また通常、貴族は貴族同士で結婚します。この時代も例外ではないでしょう。自分の家系の特別さを保ち、富や権力が他に流れないようにするために、なるべく血が濃くなるように代を重ねていきます。
であれば、フリッツ王の妻は同じエルディア人の貴族か、外国の貴族から選ばれることになります。少なくともマーレ人や奴隷の中から選ぶことはないでしょう。
よって5人の女性の中の1人が本妻であり、その本妻との間に生まれた子が2代目フリッツ王となった確率は極めて高いと考えられます。
2代目がそうであれば、特に不具合がない限りは3代目以降も同じ形を取るでしょう。そうやって王家の血筋(エルディア純血)が脈々と受け継がれていたと考えられます。むしろ2代目から急にやり方を変える理由がいまいちわかりません。
王と巨人の関係
巨人は奴隷が継承するもの
本妻・後継ぎ問題のところでも触れましたが、初代フリッツ王は巨人を奴隷とみなしています。
始祖ユミルの死後、巨人の力を保持するために自分ではなく3人の娘にユミルの遺体を食べさせました。
本人は巨人の力は持ちたくないんです。巨人は奴隷だから。
王本人はあくまでも巨人に命令して働かせる立場です。
自分は巨人になりたくない
過去のエルディア人は始祖ユミルの巨人が敵を駆逐し、道を切り開いて橋を渡す姿をどう思って見ていたのでしょうか?
「自分もあの力が欲しい!」とは思わなかった はずです。
むしろ逆で、あんな化け物にはなりたくない と思ったのではないでしょうか。
牛や馬のような家畜は、畑を耕したり馬車を引いたり人間の活動を拡張するために使われています。人にはない大きな力を持っているからといって牛や馬になりたいと思うでしょうか?
中にはそう思う人もいるかも知れませんが、ごく僅かでしょう。
どんなに大きくて強くても、奴隷として働かされるのであれば、その力を自分の意志で好きなように使えないのであれば、意味がないと考えるのではないでしょうか。
だけど巨人の力は使いたい
2代目の命令役(つまり王)は、普通に考えて初代フリッツ王と本妻との子(純血エルディア人)が継ぐことになるでしょう。
以降1800年以上の長い間、王は純血エルディア人、巨人はユミルの民(始祖ユミルの子孫・奴隷)というスタイルをずっと続けていったと思われます。
古代のフリッツ家の人々は王家の血を引く者が巨人の力を継承するなんて考えていなかったんじゃないでしょうか。
現代に至ってもそれは変わらず、ロッド・レイスは後継ぎを皆殺しにされたら今度は妾の子であるヒストリアを巨人にしようとしました。ヴィリー・タイバーも罪悪感を抱きつつ妹(ラーラ)に戦鎚の巨人を継承させています。
みんな巨人の力を使おうとするけど自分がなろうとはしないのです。
歴代フリッツ王は本当に始祖の巨人を継承していたのか
初代フリッツは巨人の力を持っていませんでした。つまり非ユミルの民です。
そうすると2代目以降も王は純血のエルディア人である可能性が高いでしょう。
もちろん、始祖ユミルの娘たちの誰かが女王になった可能性もありますが、それまで奴隷扱いされていた者が突然女王になったりするのでしょうか?
王政編のクーデターのようなものがあれば良いのですが、122話の内容だけではそれを想像するのは難しいと思います。
巨人大戦が起きた理由は145代目王の「始祖の継承」
©諫山創 講談社 進撃の巨人 86話「あの日」
そもそも「巨人大戦」とは145代目の王が「始祖の巨人」を継承したことが始まりですが
それまでも八つの巨人を分けた家同士では争いの絶えない時代が永らく続いていました
それでも王家が「始祖の巨人」を呈することでエルディアは均衡を保つことができていたのです
しかし145代目はその役目を放棄し辺境の島に都を移しました
86話「あの日」でダイナ・フリッツは「巨人大戦が始まった原因は、145代目の王が始祖の巨人を継承したこと」と言っています。
もし145代目の王が144代目以前と同じく慣例に従って始祖の継承を巨人を継承したのであれば、わざわざ「始祖の巨人を継承した」と付け加えないはずです。
そもそも122話に出てきた初代の王(エルディア部族の長)は非ユミルの民であり、巨人の力は持っていませんでした。
144代以前のエルディア帝国の王は始祖の巨人を継承していない可能性が高い
ではいつから「始祖の巨人継承者は王」という決まりが出来たのでしょうか?
作中に明確な答えは登場しません。
似たような例としてはレイス家やタイバー家がありますが、当主のロッドやヴィリーは巨人を継承しませんでした。レイス家は更に偽フリッツ家を表の王家として立てていたりします。
また作中の現在でも、女王であるヒストリアが獣の巨人を継承するかどうかで大揉めしています。君主が寿命を縮めてまで巨人を継承するのは異常だからです。
じゃあ大昔はどうだったのかというと、王が巨人の力を持っていなかった始祖ユミルの時代と王が始祖の巨人を継承した145代目カール・フリッツの間の約1900年がすっぽり抜け落ちています。まったく描かれていません。となると現状は145代目が圧倒的にレアケースということになります。
だったら86話のダイナのセリフは、145代目の王が急に始祖の巨人を継承するなんていう今までと違うことをしたから巨人大戦が起きてしまった、と解釈するほうが自然ではないでしょうか。
王家の血筋(ユミル混血)が144代目の時代(巨人大戦直前)に生まれたパターン
王家の血筋(エルディア純血)とユミルの民の混血が巨人大戦の前に初めて起きたとすると以下のようになります。
王家の血筋(ユミル混血)は巨人大戦の直前、144代目フリッツ王の時代に初めて生まれました。
そのため王家の血筋(ユミル混血)は、145代目カール・フリッツの家系と、大陸に残ったダイナの家系しか存在しません。
巨人大戦後、145代目カール・フリッツはパラディ島に移住し、レイス家となり血を繋いでいきます。
一方大陸では、マーレによって残ったエルディア帝国時代の支配層(純血エルディア人)の多くは殺されてしまったはずです。
そうなるとダイナの家系は純血を維持することは愚か、生き残ることさえ難しい状況ですから、ユミルの民との混血もやむ無しということになります。
そうやって何とか血を繋いだフリッツ家のたった1人の生き残りがダイナ・フリッツです。
このように考えれば、 王家の血筋(ユミル混血)は知性巨人継承の条件(ユミルの民である)をクリアしつつ希少性を保ち、普通のユミルの民と明確に区別できるようになります。
カール・フリッツとタイバー家が起こしたクーデター
144代目フリッツ王の時代。
王と継承者(エルディア純血)がみんな暗殺されてしまい、カール・フリッツだけが生き残り、145代目の王の座につくことになりました。
このクーデターを裏で仕切っていたのはフリッツ王政に不満を持っていたタイバー家とマーレ(ヘーロス)です。
実はカール・フリッツは144代目の王(純血エルディア人)と妾(奴隷・ユミルの民)の子でした。
ということはなんと、カール・フリッツは王家の血を引く者でありながらユミルの民でもある、という史上初のレアな存在になったのです。
こうしてカール・フリッツは本来は始祖に命令を下す王でありながら、それを覆して自らが始祖の巨人の力を宿し実行するという新しい時代のスタイルを築くことになりました。
タイバー家は、極端な平和思想を持つカール・フリッツに王位と始祖の巨人を継承させることで、フリッツ家を潰そうとしていた。王家さえ潰せば残りの7つの家を同士討ちにさせるのは簡単。というのは十分あり得る展開ではないでしょうか。
このクーデターストーリーの詳細はさておき、「カール・フリッツが王になり、かつ始祖の巨人も継承する」という一連の騒動は狙ってやったことだと思います。
ロッドと妾のアルマとの間に生まれたヒストリアが、エルヴィンの企てたクーデターによって女王となったのと同じようなことが100年前の巨人大戦でも起きていた……なんてことになれば、2つのドラマが綺麗に重なって面白いですよね。
王家の血を引く巨人が古代から存在していた場合
歴代フリッツ王が巨人(始祖の巨人)を継承していない可能性があることはわかりました。
しかし、「王家の血を引く王様ではない巨人(王家の血を引く奴隷のユミルの民)」がカール・フリッツの時代まで存在しなかったとは限りません。
「ユミルの民の王様」はいなくても「王家の血を引くユミルの民」は以前から存在したかもしれないのです。
グリシャやコルトが「王家の血を引く巨人やユミルの民」は特別だというような発言をしています。これが単なる古代の伝承の受け売りなのか、広く知れ渡っている事実なのか、はっきりしていません。
上のカールとタイバーのクーデター妄想話はそんな奴はいなかったに違いないと決めつけて無視しています。
いたかもしれないし、いなかったかもしれません。確定していない以上両方の可能性を模索しないといけないでしょう。
ただし、本考察の目的はあくまでも「王家の血を引くユミルの民」をレアで特別な存在として「普通のユミルの民」と明確に区別することです。しかも作品本編の描写と矛盾がないように。
特別さを保ちつつ、かつ昔から「王家の血筋」が存在する場合、どのようなケースが考えられるのでしょうか?
王家の血筋(ユミル混血)が古代から存在するパターン
最初から、つまり2代目の段階で王家の血筋(ユミル混血)が生まれている場合。
122話の初代フリッツ王の様子を見ると、自分の子種を奴隷に授けることはやぶさかではないようです。2代目も同じ考えを持つ可能性は低くありません。
フリッツ王家専用の巨人を確保するためとあらば、それもうなずけるでしょう。ただし、「王家の血筋(ユミルの民)」は特別でなければなりませんので、厳格に管理する必要があります。
仮にマリアが始祖の巨人を担当することにします。
2代目フリッツ王とマリアで出来る限りたくさんの子を儲け、10名前後(男女半々でなくても両方いる状態)になったとします。
この子達でひたすら近親婚、あるいはその時代の王から子種を拝受し、始祖の巨人は必ずこの血統の人間が継承するようにします。
現実世界でも古代の王家が近親婚している例はありますし、神話でも兄妹(姉弟)夫婦は出てきますので、そこまでおかしな話ではないのではないでしょうか。
最初のうちは13年の継承サイクルを回すのが大変そうですが、何代か経れば子供の数も増えるので安定すると思われます。地獄ですね。
壁内のレイス家と偽フリッツ家の関係と同じようなものだと思います。
レイス家が奴隷一族(始祖の巨人を継承)、偽フリッツが本当のフリッツ家(王様)です。
とにかく奴隷一族の血が途絶えないように、かつ外部に漏れないように厳格に管理していた、と想像すると恐ろしいですが、そうするしかこのシステムを維持する方法はないと思います。
この辺の話がもし本当なら「鳥籠の中に囚われていた屈辱」や「家畜みてぇに子供を産まされ殺され」に繋がってきます。
途中で混血が始まったパターン
上で挙げたものと同じです。
途中で混血が始まったという可能性もあるとは思いますが、そのとき何が起きたのかという説明が欲しいところです。
せっかくエルディア純血の王がいるという仮説を立てているのに途中がフワッとだとあまり意味がないような気もします。
そもそも王様と奴隷の混血は始祖ユミルと初代フリッツ王の時代で既に起きていることです。ですので混血はやるなら初めから(2代目から)やるでしょうし、やらないなら145代目までなかったのではないかと思います。
歴代フリッツ王が始祖の巨人を継承しないと矛盾しそうなところ
王が非ユミルの民なら145代よりも少なくなるのでは?
王が非ユミルの民ならば任期は13年より長くなるはずだから、歴代王の代数は145よりもっと小さくなるではないか、と思われるかもしれません。
確かに徳川家や天皇家の1代平均は13年より長いです。徳川家は1代平均17.6年、天皇家は神武天皇から数えれば1代平均21年、継体天皇からなら1代平均15.7年となります。
その一方で、30年も40年も続くなんて稀だということも言える訳です。
仮にフリッツ家の王が非ユミルの民だったとしても任期が13年より長くなる保証はありません。
古代エルディア帝国の時代は争いが絶えなかったようですし、平均寿命も短かったと予想されます。約1900年で145代というのはそこまで現実離れした数字でもないのではないでしょうか。
徳川家
江戸時代は1603~1868年の265年間です。
265 ÷ 15 = 1代平均17.6年
天皇家
令和天皇は126代目であり、紀元前660年の神武天皇から数えれば約2680年の歴史になります。
2680 ÷ 126 ≒ 1代平均21年
ちょうど100代前の継体天皇が西暦でいうと大体450年頃とされています。
2020 - 450 = 1570年
1570 ÷ 100 = 1代平均15.7年
600年前の流行り病を治した始祖の巨人
©諫山創 講談社 進撃の巨人 114話「唯一の救い」
28巻114話「唯一の救い」でクサヴァーさんは、600年前に流行り病が猛威を奮ったときに当時の王が始祖の巨人の力でユミルの民の身体の設計図を都合よく書き換えた、と言っています。
あれ?やっぱり王が始祖の巨人を継承していたんじゃないか!と思われるかもしれません。
しかしこれは、 当時の王が奴隷(始祖の巨人継承者)に命令してやった と読むことも出来ます。
例えば、「850年。エルディア国の女王ヒストリアはパラディ島民のために進撃の巨人の力を使ってウォール・マリアの穴を塞いだ」という文章からヒストリアが進撃継承者だと断言することは不可能でしょう。
21巻86話「あの日」でグリシャの父が読んでいた歴史書の内容から「始祖ユミルはエルディア帝国の初代王である」と多くの読者が勘違いしたのと同じ構造かもしれません。
結局、真実はわからないのです。
なぜ始祖の巨人は王家の血筋でなければ真価を発揮できないのか?
- 「王家の血筋(ユミル混血)」の者が始祖の巨人の力を宿すと、その真価を発揮することが出来る
- 「不戦の契り」に縛られてしまう(145代目カール・フリッツの子孫の場合)
- 「王家の血筋(ユミル混血)の知性巨人」が「始祖の巨人」と接触すると座標の力(巨人コントロールや地鳴らし、不戦の契り解除)を発動できる
©諫山創 講談社 進撃の巨人 89話「会議」
「始祖の巨人」がその真価を発揮する条件は王家の血を引く者がその力を宿すこと
しかし王家の血を引く者が「始祖の巨人」を宿しても145代目の王の思想に捕らわれ残される選択は自死の道のみとなる
おそらくそれが「不戦の契り」
©諫山創 講談社 進撃の巨人 99話「疾しき影」
ヴィリー・タイバーやハンジが言っていることは、以下のような感じです。
始祖の巨人は王家の血を引くものが継承しなければ真価を発揮できない。しかし王家の血を引く者は「不戦の契り」に縛られるので力を使うことはない。
これでは何もできません。巨人もクソもないような状況です。むしろそれが狙いなのでしょうけど。
この作中のセリフ、描写をストレートに解釈すれば、「カール・フリッツより前の王家の血筋を引く継承者であれば始祖の巨人の真価を発揮できた」ということになるのかもしれません。
確かにその通りだと思います。王家の血筋なら始祖の巨人は真価を発揮する。間違いないと思います。
しかし、122話に登場する「始祖ユミルの巨人」は王の望む通りに活動できているように見えますし、123話のエレンは「地鳴らし」を起こして全ユミルの民に話しかけたりしています。
奴隷の始祖ユミルだろうが、非王家のエレンだろうが、始祖の巨人の真価を発揮できているのです。
では「王家の血筋」は何のために存在するのでしょうか?
座標へのアクセス権
「始祖の巨人は王家の血筋でなければ真価を発揮できない」というのは、要するに「王家の血を引く者でなければ座標に行けない」ということを言っているだけなのです。
王家とそれ以外の者との違いは、「力を引き出せるかどうか」ではなく「命令しに行けるかどうか」だったということになります。
実際問題、エレンのような王家でない者が継承した場合、ヴィリーの言う通り始祖の巨人の真価を発揮できません。
なぜならエレン1人では座標にアクセスすることが出来ないから、つまり始祖ユミルに命令しに行けないからです。
そして結局、座標にアクセスするための鍵となる「王家の血を引く巨人」を別途用意しなければならなくなります。
©諫山創 講談社 進撃の巨人 115話「支え」
「王家の血を引く巨人」であれば「始祖の巨人」の保有者と接触することによってその能力を引き出すことができるはずだ
つまりクサヴァーがジークに伝えた話そのままです。
なぜこんな複雑なシステムなのでしょうか?
始祖の巨人を動かす2つの要素
巨人大戦より以前の時代、始祖の巨人はどうやってその力を行使していたのでしょうか?
初代フリッツ王が始祖ユミルに命令し、王の望み通りに行動しているように見えます。
©諫山創 講談社 進撃の巨人 122話「二千年前の君から」
122話の状況がそのまま2代目以降も続くのであれば、フリッツ王(純血エルディア人)が何らかの命令をし、奴隷の巨人(ユミルの民)は言われるがままに任務を遂行していたと考えられます。
つまり王からの命令がなければ、始祖の巨人は意志を持って自発的に何かするということはなかったのではないでしょうか??
ジークが座標で長い間始祖ユミルを観察した結果、「自分の意志を持たぬ奴隷」と判断したのはそういうことだと思います。(120話「刹那」)
始祖の巨人は「命令する王様」と「命令される奴隷」の2つが揃って初めて機能するものなのです。
しかし145代目カール・フリッツはこれまでのルールを覆し、「命令する王様」と「命令される奴隷」を一体化させました。
自分で自分に命令して始祖の巨人の力を使うようになったのです。そして「不戦の契り」を編み出して意図的に「力を使わない」方向に持っていきました。
いわば始祖の巨人の封印です。
始祖の巨人の力を使えない状況とは
ではエレンのような「王家の血筋ではない人間」が始祖の巨人を継承したらどうなるのでしょうか?
始祖の巨人の力を使うために必要な「命令する王様」と「命令される奴隷」という2つの要素のうち、「命令する王様」がいないということになります。
つまりこれが「始祖の巨人の真価を発揮できない」ということです。
エレン1人の力ではどうにもなりません。
だから、始祖の巨人の継承者は王家の血筋でなければいけない、と言われるようになったのです。
ヴィリー・タイバーが言っていたことは事実である、というか別に間違ったことは言っていないと認めざるを得ません。
始祖の巨人を使う抜け道
唯一の抜け道として、「始祖の巨人」と「王家の血筋の巨人」が接触することで座標空間へ到達し、そこでどうにかして始祖に命令を伝える、というやり方があります。
エレンがダイナやジークと接触してやったのはこれです。
2度ともエレンの思い通りになったところを見ると、命令者が王様でなくても始祖ユミルが聞いてくれればそれでOKなようです。
王家の血を引くジークを差し置いてエレンが命令出来たのは、始祖ユミルに同情、共感を示したことで心を掴んだから??
12巻50話「叫び」でエレンがダイナ巨人に触れて「座標の力」を使えたのは、王家の血筋であるダイナに意志がなかった(または元々戦う意志があった)からエレンの思い通りになった??
「王の命令は絶対」というのはあくまでも奴隷ユミルの思い込みに過ぎないということでしょうか。
元凶は145代目カール・フリッツ
122話でエレンが始祖ユミルの心を掴んだように、座標にさえ行ければ本当は王家でなくても良かったのだと思います。
しかし、王家の血を引く者がいないと座標に行くことが出来ない。それが一番の問題だったということです。
そして、なぜそんなことが問題になるのかといえば145代目カール・フリッツが始祖の巨人を継承したからです。
カールは「命令する王」と「命令される奴隷」を一本化、そして戦うことを否定した。
巨人大戦が大きなターニングポイントであることがよくわかります。
結局重要な王家の血筋
なんだかんだで巡り巡ってやっぱり「王家の血筋」は必要だったのです。
そして物語的にも「王家の血筋」と「普通のユミルの民」は区別される必要があります。
そうでないと、エレンがダイナ巨人と接触して大ピンチを脱出したり、ヒストリアが狙われたり、パラディ島の存亡を賭けて憎きジークと交渉したり、そういったあれこれが全部「勘違いでした」ということになってしまいます。
また137話でジークが斬られたことで地鳴らしが止まったこと、また事前にハンジがそれを推測しリヴァイも信用していたことなどを踏まえると、力を使う上でも欠かせないものであることは認めざるを得ないでしょう。
不戦の契りの発明
145代目カール・フリッツはどうやって「不戦の契り」を生み出したのでしょうか?
120~122話を読む限り、始祖の巨人の力を行使するということは、すなわち座標で始祖ユミルに命令することだと思われます。
王家の血筋でもあり、ユミルの民でもあるカール・フリッツは自力で道にアクセスし、始祖ユミルに命令出来たのでしょう。
座標空間でエレンが始祖ユミルを抱きしめながら語りかけたのと同じようなことをしたのだと思います。
あとはただ単に自発的に「記憶の改竄はするけど戦うことはしない」と心に決めたのでしょう。その固い決意がウーリやフリーダら子孫に受け継がれているということです。
記憶の共有
145代目が歴代の王と大きく違うのは、ユミルの民として記憶を持っていることです。
歴代のフリッツ王は大陸の支配者とは言っても普通の人間なので、良くも悪くも昔のことは簡単に忘れてしまいます。いくら悲惨な歴史の記録が書面で残されていたとしても、あの戦乱の時代に生きる人間がどれほど罪悪感を抱くでしょうか。
残念ながら、あまり深刻に考えなかったと思います。
ところが145代目は、2000年の間にユミルの民が奴隷として味わった苦しみや痛み、屈辱を手に取るように感じてしまうはずです。ウーリやフリーダの様子を見ればそれは明らかです。
レイス家の始祖継承者が「不戦の契り」に縛られて何も出来なくなるのも当然のことなのかもしれません。
145代目の極端な平和思想
©諫山創 講談社 進撃の巨人 69話「友人」
ヴィリー・タイバーによれば、カール・フリッツは始祖の巨人を継承する以前から同族同士の争いを嘆き、特にマーレに同情していたようです。
生き残るためには敵を駆逐し支配しようとするのが当たり前という時代に、争いを好まず平和を願う心を持っていたカール・フリッツ。
まるでアルミンのようです。あるいはジークでしょうか?
なぜ145代目カール・フリッツのような人間が生まれたのか、数ある進撃の巨人の謎の中でもトップクラスの不思議さだと思います(69話でケニー・アッカーマンとウーリ・レイスのことがやけに丁寧に描かれてたのも気になります)。
そしてカールは自分自身が始祖の巨人を継承し、いよいよ本格的に記憶の共有が進んだことで、平和への願いがより一層強まって暴走してしまったのでしょう。
もしかしたらカール・フリッツは奴隷に巨人を継承させる歴史を終わらせたかったのかもしれません。
まとめ
「普通のユミルの民」と「王家の血筋のユミルの民」は違う。
「ユミルの民」とは、始祖ユミルの子孫全て。しかし「王家の血筋(始祖の巨人の真価を発揮する血筋)」は初代フリッツの子孫全てではない。それだと話が合わなくなる。
作中で言われている「王家の血筋」とは、エルディア純血の王とユミルの民との混血の人種をルーツとする系統のことだと考えると辻褄が合う。
「王家の血筋」は、少なくとも初代フリッツの次の世代以降に生まれたと考えられる。
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おまけ・ユミルの民は全員王家の血筋なのでは?と思う人は何が疑問なのか?
王家かどうかというよりも、なぜエレンはダメでジークはオッケーなのかという話です。
- 始祖の巨人の真価を発揮する王家の血筋
- 王家の血筋ではない始祖の巨人継承者と接触することで、その力を発揮できるようにさせることができる王家の血筋
ジークはこの定義に当てはまるけど、エレンは当てはまらない。その理由は何か?ということが疑問なのです。
気持ち悪さの原因
122話が公開されるまでは多くの読者はエレン(カルラ)とジーク(ダイナ)はルーツが違う、と考えていたと思います。直系傍系といった非常に紛らわしく誤解を招きやすい法律用語が飛び交うこともあるようですが、要は先祖を辿っていったときにエレンとジークは違いがあるんだろうという話です。
ところがそうではなくどちらも始祖ユミルと初代フリッツ王に行き着くらしいということがわかりました。
元々違うと思っていたものが同じだと言われると、気持ち悪くなってしまいます。本当はどこかに違いがあるんじゃないの?ほんのちょっとでも区別するための何かがあるのでは?と期待してしまうのです。
ルーツが同じなら、途中に何かあったのでは?と思ってしまうのは自然なことでしょう。
始祖ユミルとフリッツ王の3人娘が王家の血筋ではないと示すことが本題ではありません。現実の王家と比較してどうというのもここでは大した問題ではありません。フリッツ王の死に際(かどうかも本当はわかりませんが)に傍にいたのが本妻の息子と思われる人物ではなく3人娘なのだから彼女らが王家だろうというのも、もっともな解釈でしょう。一向に構いません。
しかし、この3人が「始祖の巨人の真価を発揮する王家の血筋」なのである!とした場合、エレンとジークに何の違いがあるのかさっぱりわからないわけです。
マリアの子孫が王家、ローゼとシーナの子孫は一般。マリアの子孫がジーク、ローゼの子孫がエレンと言われても、話が進みません。
ローゼとマリアだから違うでしょ?では納得できないということなのです。だってローゼとマリアは「ルーツが同じ」なのですから。
王家は立場説&徐々に分かれた説では納得できない理由
もしマリアが女王となり子孫から徐々に分かれていったのが王家の血筋であり、ローゼとシーナは本人は王家の血筋だけどその子孫は王家の血筋ではないということにしたら。
つまり立場によって王家かどうか決まるというルールなのであればどうなるでしょうか。
ダイナもジークも立場が王家ではないのでアウトになります。
「いや、巨人大戦までは王家だった者の末裔だから彼らは王家の血筋だ」と言うのであれば、ローゼかシーナの末裔であるはずのエレンも王家ということになってしまうでしょう。
そんなの屁理屈だと思われるかも知れませんが、それならダイナやジークを王家の血筋と認めることも屁理屈になります。
ダイナが生まれた時点で巨人大戦から70年弱経っていますから、遅くともダイナの祖父の時点でフリッツ家はすでに王家の立場ではなかったと考えられます。何代後までなら「元王家」でも王家の血筋として認められるのでしょうか?
明確な基準が示されていない以上、ダイナが王家として認められるのであれば、エレンが王家だとしてもおかしくないのではないでしょうか?
後述しますが、始祖ユミルが王家かどうかを判断しているという説明は非常に苦しくなります。だから明確な基準が欲しいのです。
泣いても喚いても、作中ではダイナもジークも紛れもなく王家の血筋として描かれています。立場ではなく「血統」で決まっているとしか考えられないでしょう。生まれたときから特別なのです。
ヒストリアにも同じことが言えます。彼女は生まれたときから特別だからロッド・レイスがわざわざ連れ戻そうとしたのです。女王になって初めて王家の血筋になる訳ではありません。
かといって、この穴を解消するためにマリアの子ども以降を「王家」だと定義するならば、今度はマリアとローゼとシーナは王家ではないということになってしまいます。3人娘が王家かどうかは大きな問題ではありませんが、気になる人は気になるでしょう。
「王家は立場」という考え方を貫こうとすると、必ずどこか途中に起点を置かなければならなくなり、カール以降を王家の血筋とするような説に文句をつけられなくなってしまいます。
しかもマリアの子孫であることを王家の血筋である理由にしたところで、ローゼやシーナの子孫と本質的な違いはないのですから、いまいち説得力に欠けます。
だから「始祖の真価を発揮する王家の血筋」と言われているものは「素朴に思いつく王家」とは別なのでは?という疑問が生まれ、始祖の真価を発揮するという意味での王家と普通のユミルの民を明確に分けたいという話になるのです。
マリアとローゼとシーナが王家の血筋だと思っても別に誰も文句は言わないはずです。「奴隷じゃないの?」とは言われるかもしれませんが、王様の娘であることは事実なのですから王家だと思うのも無理もないでしょう。しかしそれをそのまま受け入れると「始祖の真価を発揮する王家の血筋」がどのように区別されるかはわからないままになってしまうのです。
始祖ユミルは何に従っているの?
「マリアの子孫が王家の血筋でありそこから徐々にわかれていったんだろ説」を支えるのは、「初代フリッツ王が我が巨人でこの世を支配し続けるという方針を巨人の力と共に娘たちに継承した」という考え方だと思われます。
この初代フリッツ王の「我が巨人は永久に君臨し続けるべし」という思想に始祖ユミルが従い続けている。王家の血筋とはそういうものだ、ということらしいです。
始祖ユミルが2代目以降の王様の意思に従う理由はどこにもないし、そのような描写も一切ない、らしいです。
この考え方が正しければ、どんな思想の人間でも王家の血筋でさえあれば、始祖の巨人を継承したときに初代フリッツ王のコピーのような存在になってしまうはずでしょう。だから1800年以上の長い間、大陸を支配し続けられたのだと。そういうことになるはずです。
ところが、現実は違います。
巨人継承前から初代フリッツ王とは真逆の思想だったカールが始祖の巨人を継承した後もその考えを変えることはなく、さらに「不戦の契」を編み出してしまったのです。
始祖ユミルは初代ではなく145代目の王であるカールに従ったということです。また彼女はジークから「安楽死計画」を命じられたときも黙って従い実行しようとしました。
つまり、始祖ユミルは初代フリッツ王だけではなく歴代の王にも従っていることは確実であり、始祖の巨人が継承されていく上で初代フリッツ王の思想が各継承者に対して強い影響力を持っている訳ではないということです。
よってマリアは子孫への思想の継承に失敗していることになり、そもそも始祖ユミルとマリアの意思の共有すら怪しいことになります。エレンが現れるまでは、王からの命令を実行する上で始祖ユミルの意思が、つまり「初代フリッツ王の思想の影響」が介在する余地もなかったということになるでしょう。
初代フリッツ王の影響力とは?
「不戦の契」があれほど強い影響力を持っていたのに、初代フリッツ王の思想が歴代の王にきっちり継承されないのはなぜなのでしょうか?
144代続いたということはそれなりに影響力があってもおかしくないはずなのに、カールに簡単に破られるということは何かそれなりの原因があるのではないでしょうか?
ジークが「不戦の契」を破ることができたのは、本人が始祖の巨人を継承していなかったから、あるいは彼がカールの子孫ではないため影響を受けなかったということでしょう。ジークにとって効力がないものだったのです。
カールにとって、初代フリッツ王の思想に影響を受けない、始祖の巨人を継承しても影響を受けない状況とは?ということを考えてしまいます。
フィジカル VS メンタル
144代続いた理由が「始祖の巨人を介した初代フリッツ王の思想の継承」だというのであれば、145代目で急に方向転換するのは不自然な気がします。タイバー家にそそのかされたから?たまたまそうなっただけ?
長い年月を経て思想が変わるのは普通のことでしょう。
しかし、王家の血筋が何たるかを支えるのが「始祖の巨人を介した初代フリッツ王の思想の継承」というのであれば、巨人システムにおいてその前提が崩れるのは絶対に許されないことです。
とはいえ、これは作中で描かれた事実の前ではどうにもならないことです。
つまり、そんなものはなかったと考えるしかないでしょう。
レイス家が100年続いた理由は「不戦の契」がすごかったからではありません。壁を作って引き篭もったという物理的な要因のほうが遥かに影響力が大きいのです。
その証拠にグリシャがやってきたらあっさり始祖を奪われてしまいました。
ということは、エルディア帝国も同じなのではないでしょうか?
初代フリッツ王の思想が巨人の力を通じて歴代の王に継承されたとか、始祖ユミルがその思想に基づいて従っていたというのではなく、巨人がフィジカルだけで他国の兵器を圧倒できる環境だったということのほうが144代も続いた原因として相応しいと言えるでしょう。
そして始祖ユミルやユミルの民が作中現代でも奴隷だと言われていることを踏まえると、彼らはひたらすら歴代の王の命令に従って巨人の力を供給し続けていたに過ぎないと考えられるのではないでしょうか?
このような歴史になってしまった原因は何だったのか?ということを本文中で考察しています。
女王マリアが座標で始祖ユミルに命令する…?
女王マリアが座標に来て、始祖ユミルに命令を下すのでしょうか?
マリアは始祖ユミルと違ってフリッツ王の血を引いているから好戦的であり、その気質のおかげで母に他国を攻めろと平気で命令が下せる…のでしょうか?
「本当にフリッツ王に従い続けていても良いのだろうか」とも思っている始祖ユミルの血も引いているのに?
マリアにはフリッツ王の成分だけが遺伝したとでもいうのでしょうか?
そもそも始祖ユミルは座標を経由せずともフリッツ王に命令されたことを下界で聞いてそのまま実行していました。
ということはマリア巨人に非常な命令を下せるのは、始祖ユミルと血が繋がっておらず、かつフリッツ王の血を引く別の者だったのでないでしょうか?
この辺りは想像の世界になってしまいますが、座標に行ったのはカールが初めてであり、だからこそ戦えなかった、「不戦の契」が生まれた、とするほうが精神衛生上も良い気がします。
始祖ユミルせよマリアにせよ、とにかく問答無用で歴代の王に従っていた、そう解釈するほうが作中の描写に合っていると思います。
血の濃さでは納得できない理由
王家の子孫はいつか基準値を下回り、親は王家の血筋だけど子は違うという状況が生まれることになります。
ある世代で突然血の効力が発揮されなくなっては困るでしょう。
ウーリよりフリーダのほうが、ダイナよりジークのほうが血が薄いのは明らかであるにも拘わらず、始祖の巨人に関わる上でそれぞれに何か差があるようには見えません。
フリッツ家やレイス家が近親婚を繰り返していたとか、血が薄いと効力も弱くなるとか効力0というようなことは、作中の描写からはわかりません。
わからないから、血の濃さを理由にするのはイマイチなのです。
そうなると都合が悪いのでやっぱり「立場」だということにするか、または先祖を辿ったときに他とは区別できるようになっている、ということにするしかなくなります。
しかし「立場」はダメだし、先祖を辿る方法も3人娘を「始祖の巨人の真価を発揮する王家の血筋」としているうちはダメなのは上に書いた通りです。
始祖ユミルの気持ちの問題では納得できない理由
最終話まで読めばわかりますが、始祖ユミルは「フリッツ王に従うままで良いのだろうか?」とずっと迷っていました。そして「誰にも従わなくていい」と言った王家の血筋ではないエレンを受け入れました。
つまり王家の血筋は座標に行くための鍵でしかなく、その人の願いを聞き入れるかどうかは始祖ユミルのお気持ち次第ということになのです。
ではどうやって座標に招待する人間を識別していたのか?ということが最終的な問題になるのですが、それも始祖ユミルのお気持ちによる判断ということにすると、作中の描写と噛み合いません。
なぜなら、初代フリッツ王の思想とは真逆のカール・フリッツやジークを座標に招待してしまっているからです。
カールやジークを自分の意思で呼んでいたというのであれば、それ以前の好戦的だったと思われる歴代の王も自分の意思で呼んでいたということになり、基準がよくわからなくなります。
コロコロ気分が変わっていたのでしょうか?
ではエレンに「待っていたんだろ ずっと 2000年前から 誰かを」と言われて始祖ユミルが目に涙を浮かべて歯を食いしばったあれは何だったのでしょうか?
始祖ユミルの意思ではどうにもならないことだった、王家の血筋は問答無用で座標に招待する他なかった、と考えるしかないでしょう。
そして王家の血筋が問答無用で座標に招待されるということは、それ以外の者が除外される理由・基準もあるということになります。
始祖ユミルが「ああこの人は王家なんだな」と自動的に判断できる何かしらの基準があるんじゃないの?ということになってしまうのです。
途中で分かれたのでは?
立場もダメ、血の濃さもダメ、始祖ユミルの気持ちも関係なさそう…ときたら、やっぱり先祖を辿る方法以外に明確な差異を説明できるものはないのではないでしょうか?
ルーツが同じである以上、途中で分かれたとするのが一番無難でわかりやすいと思います。
もし明確な基準があるのであれば、始祖ユミルが呼ぶというよりも、王家の血を引く者が条件を満たせば自動的に座標に来る、と解釈することも出来るでしょう。