なぜリヴァイはジークに雷槍を刺して運んだのか

なぜリヴァイはジークに雷槍を刺して運んだのでしょうか?

あんな危険なことをしたせいで、ジークの「クサヴァーさん見ててくれよ!」の自爆に巻き込まれてしまいました。

後に本人は「奴に死を選ぶ覚悟あること見抜けなかった」と振り返っています。ヘマをしたと。

「いやいや、それ以前に雷槍の威力からしたらどう考えても危険でしょ。普通に運ぶだけで良かったじゃん」と言いたくなります。

なんだか間抜けです。

しかし、果たして百戦錬磨のリヴァイがそういった危険を考えずにあんな行動を取るのでしょうか?

それなりの理由があったのではないでしょうか?

兵長の名誉のためにあれはあれで妥当な選択だったと解釈するための材料を紹介します。

リヴァイが雷槍を使った理由

リヴァイはジークをとりあえず兵団の誰かに食わせようとしていました。そして出産後、改めてヒストリアに食ってもらう。そういう段取りです。

ただ単にジークを拘束するだけならば、雷槍は必要なかった。確かにそうかも知れません。

しかし、現実はそう甘くはありません。

このミッションの障害になるのは、イェーガー派(エレン含む)、ピクシスら兵政権、マーレ軍です。

  • イェーガー派。エレンとジークを接触させたい
  • 兵団。エレン(始祖の巨人)を他の人間に食わせるのでジーク(王家の血筋)はそのままで居て欲しい
  • マーレ軍。ジークは裏切り者なので拘束しようとしてくるはず

かつてリヴァイは「異常事態に陥った場合、俺は誰より迅速に対応し戦える」と豪語していました(14巻56話)。それはどういう意味なのか、という話です。

この時点でリヴァイはピークちゃんが潜入していることを知りません。しかしいずれ攻めてくることは明らかです。いつ空から降ってくるかわらかないし、はたまた地中から現れてくるかもわかりません。

イェーガー派と兵団が同時に現れるかもしれません。いくら雑魚でも数が揃えば厄介です。

兵長はこの包囲網からたった1人でジークを守り抜かなければなりません。

ジークを殺すのもダメ、ジークが逃げ出すのもダメ、誰かに奪われるもダメ。リヴァイにとって圧倒的に不利な状況です。

例え自分が爆発に巻き込まる可能性があろうとも、ジークが敵の手に渡らないようにするには、やはり雷槍を刺しておくのがベストなのです。

そうやってジークを守り抜いた後にピクシスを説得する必要があります。そこまでやってようやくミッションは一段落です。結構大変じゃないでしょうか。

失敗の想定。ジークが爆発してしまったら?

仮に爆発してジークが死んでしまったらリヴァイはどうするつもりだったのでしょうか?

それでも敵の手に渡るよりはマシだと考えていたと思います。

王家の血を引く人間はまだヒストリアがいるわけで、パラディ島の巨人はアルミンがいるしマーレから奪うことだって不可能ではありません。

だったらいつまでもジークの思い通りにさせる理由はどこにもない、ということになります。複数の勢力の思惑が交錯する状況において、ジークは危険過ぎる存在です。

結果的にジークは復活しますが、それは本人にとっては想定外だったようですし、雷槍を使ったことは妥当だったと言えると思います。

ジークを逃す可能性

  • イェーガー派が100人単位で一挙に襲ってくる
  • ピクシスの遣いが100人単位で一挙に襲ってくる
  • 車力の巨人などマーレの巨人が現れる
  • エレンが巨人化してジークを奪いに来る
  • ジークが仕込みの無垢の巨人が現れる
  • ジークが1人で逃げる

対巨人。巨人の底知れぬ力への対応

リヴァイはウォール・マリア最終奪還作戦の失敗が頭にあったのだと思います。

ライナーをあと一歩のところで殺し損ねたこと、そして、ピークちゃんの車力の巨人にジークを奪われたこと。この2つが大きいでしょう。

巨人の力は底知れない。だから徹底的に対処する必要があるのです。

マーレの巨人に限らず、エレンが直接やってくる可能性だってあります。当時の状況からすると、リヴァイはエレンをかなり警戒していたかもしれません。

知性巨人は厄介です。しかし雷槍を刺しておけばジークが少し揺れるだけで爆発します。相手も迂闊に動けないでしょう。

ほんの少しでも相手の動きを封じることが出来れば、リヴァイにとっては大きなアドバンテージになります。

対人間(イェーガー派&ピクシスが派遣する兵士)

そしてさらに、この時点で対立しているイェーガー派やピクシスの遣いにも警戒しなければなりません。

数が揃えば厄介とはいえ彼らは生身の人間であり、しかも下級兵士ばかりですから、雷槍が刺さったジークに近づくのは躊躇するでしょう。

映画やドラマでよく見る、人質に銃を突きつけて相手を封じるあれの過激なやつです。

兵団としてはジークはそのまま、エレンを他の誰かに食わせたいので、ジークが死んでしまうのは困ります。ジーク人質作戦は有効でしょう。

ジーク仕込みの無垢の巨人が現れた場合

実際そんなことがあり得るのかどうかわかりませんが、ジークの叫びに反応して巨大樹の森ではない場所で誰かが巨人になっていたかもしれません。

リヴァイのことですから、その可能性も考えたでしょう。

無垢の巨人は人質のジークや雷槍にビビったりしない分厄介ですが、リヴァイからすれば雑魚です。ウォール・マリア奪還作戦のときも平地で10m以上の巨人を数十体サクサク倒していました。

それに無垢の巨人ならば、まずはリヴァイよりも先にジークを襲って食おうとするでしょうし、そうなれば儲けものです。

雷槍諸共爆発してくれます。飛び散った脊髄液を摂取して巨人の力を移すことが出来るかもしれません。

複数いたとしても1体がジークを食ってプシューっとなっている間に、他の巨人を倒せば問題ないでしょう

しかし、無垢の巨人+イェーガー派、あるいは無垢の巨人+知性巨人で現れたら?

やっぱりジークには雷槍を刺しておかなければなりません。

ジークが1人で逃げる

ジークが逃げないようにする。

ただそれだけを考えれば、リヴァイ兵長にとっては非常に簡単なお仕事です。

本当は雷槍なんて使う必要はありませんでした。ロープか何かで馬車の荷台に拘束してダルマにしておけば良いのですから。

しかしありとあらゆる場面を想定してリスクを取って最善を尽くした結果、まさかの「クサヴァーさん見ててくれよ!」でジークに逃げられてしまいます。

簡単そうに思えるところで足元を救われるというのがドラマですね。

まとめ

リヴァイ兵長は色々考えて、考え抜いてジークに雷槍を刺すことを選びました

ただジークを拘束すればそれで良い、という話ではないのです。

ところが、想定された危険な出来事は起きず、目の前のジークが自爆するという唯一の想定外が起こってしまった。

強いてリヴァイの落ち度を挙げるなら、汚い言葉でジークを罵りクサヴァーさんの記憶を呼び起こしてしまったことかもしれません。巨大樹の森でガッチガチに拘束した女型の巨人を逃したときもそうです。

元々結構喋るアピールをするリヴァイ

©諫山創 講談社 進撃の巨人 8巻32話「慈悲」

口は災いの元、ということなのかもしれません。

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