巨人大戦の謎を考察
巨人大戦とは、約100年前(743年頃)に145代目のエルディア帝国の王であるカール・フリッツが始祖の巨人を継承したことによって始まった戦争。
カール・フリッツがタイバー家と手を組み、それまでも内紛が絶えなかった知性巨人保有家を同士討ちさせ、無力化。
終戦後、大陸はマーレが支配(裏でタイバー家が支配)するようになり、カール・フリッツは一部の国民を引き連れてパラディ島へ移住して三重の壁を築いた。
…
という感じです。
巨人大戦が起きたことでエルディア人がマーレ大陸とパラディ島に分断され、三重の壁が出来たり迫害が加速して、結果エレンやガビたちが苦しむ原因になったということはわかります。
しかし、物語を左右する大きなターニングポイントであるにも拘わらず、すっきりしない点が多いままです。
- 始まったきっかけ
- そもそもの対立構造
- 支配者と奴隷の関係
- 進撃の巨人、ヒィズル国、アッカーマン一族との関わり
- 憎しみの連鎖
- エレンが手に入れた記憶
等々。
この辺をうまく辻褄が合うように色々こじつけて考察します。
結論は、巨人大戦はとはタイバー家(の奴隷)とカール・フリッツが企てた旧王家へのクーデターであり、その両者をけしかけたのは当時の進撃の巨人継承者ではないか、というものです。
そうであれば、パラディ島内でアッカーマンや東洋の一族の迫害、ヒィズル国の立ち位置、キヨミの行動なども上手く辻褄が合うことになります。
巨人大戦が生んだ新たな対立構造
結果だけ見れば、巨人大戦はタイバー家がカール・フリッツとへーロス(マーレ)を使って大陸の支配者に成り上がった戦争だった、ということになります。
当時何があったのか真相は謎のままですが、作中現在の対立構造を見てみることで、詳細を想像することは出来ます。
巨人大戦が終わった後、マーレとパラディ島の民族構成は上のようになりました。
この中に様々な対立を見つけることが出来ます。
- ?? タイバー家 ↔ レイス家
- マーレ人 ↔ エルディア人
- 大陸のエルディア人 ↔ パラディ島のエルディア人
- レイス家 ↔ ヒィズル国(将軍家・東洋の一族)
- タイバー家 ↔ ヒィズル国
- 旧王家(フリッツ家) ↔ 新王家(レイス家)
タイバー家とレイス家??
巨人大戦時は協力関係にあったことは間違いなさそうです。
しかし事実として、タイバー家はマーレのパラディ島侵攻を容認しています。
ということは、タイバー家は初めからレイス家(カール・フリッツ)を利用していただけ、と考えることができそうです。
しかし難しいのは、カール・フリッツはいずれパラディ島が侵略されるとわかっていたこと、そしてタイバー家も「不戦の契り」なども含めてカール・フリッツが破滅的平和思想の持ち主であることを把握していたことです。
巨人大戦だけでなく、約100年後パラディ島侵攻まで計画に入れていたということなのでしょうか?
両者の思惑は謎が多いです。
マーレ人とエルディア人
エルディア帝国時代、マーレ人は長い間虐げられてきたためエルディア人を憎んでいます。
大陸のエルディア人とパラディ島のエルディア人
大陸のエルディア人は、パラディ島のエルディア人を「島の悪魔」と呼んでいます。
なぜなら、巨人大戦後に自分たちを捨てて島に逃げたと認識しているからです。
取り残された自分たちはレベリオ収容区でマーレ人に迫害され、肩身の狭い思いをしているのですから無理もありません。
レイス家とヒィズル国(将軍家・東洋の一族)
ちょっとややこしいのですが、東洋の一族というのは、要は将軍家の末裔のことを指しています。ヒィズル国的には「由緒正しき将軍家の一族」なのですが、パラディ島の人たちから見ればよくわからないけれどとにかく東洋の国の人だから「東洋の一族」と呼んでいる、ということです。
将軍家の子息は旧王家(フリッツ家)と懇意にしていた関係で巨人大戦前からパラディ島にいたのですが、大戦終結後に国に帰ることが叶わず島に取り残されました。
そして壁の王カール・フリッツと島民の記憶改竄を巡って対立し迫害されることになった、ということは作中でも言われていることです。
将軍家の末裔ですから、上に立つ者としてのプライドと言うか、そういう血が流れている訳です。民の記憶を改竄するような統治方法に異を唱えるのも無理もありません。
そもそもカール・フリッツは旧王家と折り合えず決別したのですから、旧王家と懇意にしていたヒィズルの将軍家と仲良くなれないのは当然の話でしょう。
タイバー家とヒィズル国
ヒィズル国はエルディア帝国と同盟関係にありました。
そのため、エルディア帝国を崩壊させたタイバー家とは自ずと対立することになります。
レベリオ催事の演説前のヴィリー・タイバーとキヨミ・アズマビトの会話からその雰囲気を読み取れます。
旧王家(フリッツ家)と新王家(レイス家)
旧王家の残党(エルディア復権派)が戦い続ける理由は、壁の王・レイス家から始祖の巨人を奪還するためです。
マーレ(タイバー家)のことも憎んでいることは確かでしょうけれども、彼らにしてみれば諸悪の根源はカール・フリッツでしょう。
見方によっては巨人大戦とは「 マーレ派の新王家とエルディア派の旧王家の戦い 」であった、と解釈することが出来ます。
巨人大戦が始まったきっかけ
ここからは「 巨人大戦とは新王家と旧王家の争いである説 」をゴリ押してこじつけていきます。
新王家(マーレ派) VS 旧王家(エルディア派)
巨人大戦が終結する頃の勢力図です。
新王家(カール&タイバー)は知性巨人を全て(進撃を除く)手中に収め、マーレ大陸とパラディ島をそれぞれ支配・統治することになります。
一方、旧王家(フリッツ本家)は知性巨人もパラディ島もカール・フリッツに奪われてしまい、マーレ大陸で肩身の狭い思いをする羽目になりました。
しかしここから残された少ない手駒(イェーガーファミリー&進撃の巨人&ヒィズル国)をフルに使って大逆転する旧王家の執念もなかなか凄まじいものがあります。
カール・フリッツの始祖の巨人継承
©諫山創 講談社 進撃の巨人 21巻86話「あの日」
86話でダイナが言うように、巨人大戦が始まったきっかけは「 カール・フリッツが始祖の巨人を継承したこと 」です。
カールは平和思想の持ち主だったようですから、始祖の巨人の力で平和を築けば良かったのではないでしょうか?
平和を愛するカール・フリッツが巨人大戦を起こすのは矛盾しています。
ということは、始祖の巨人の継承 がカール・フリッツの精神や行動に影響を与えたと考えられます。
つまり継承前後で変化があったということです。
新王家(カール・フリッツ)とタイバー家のクーデター
- カール・フリッツは始祖継承前からマーレに同情していた&同族同士の争いに疲れていた
- タイバー家は「戦槌の巨人」を保有する家。他の家と対立している
なぜカールはマーレに同情していたのでしょうか?
例えば、カールはエルディア人とマーレ人との混血であり、生まれながらにしてマーレに対して強い思い入れがあったというような理由が考えられます。また、カールは同族同士の争いに疲れていたというヴィリー・タイバーの言葉もありました。
様々な可能性が考えられますが真相はわかりません。
いずれにせよ元々のエルディア帝国の支配者であるフリッツ本家の人間とは考え方が異なることは間違いないでしょう。
ではなぜ144代目の王は、考え方が異なるカール・フリッツに145代目として始祖を継承させたのでしょうか??
エルディア帝国のためを思えば、カールではない別な人間に始祖を継承するに決まっています。
しかしそうはならなかった。
つまり始祖継承を巡って旧王家(144代目)と新王家(145代目カール)の対立があった、そこにタイバー家が深く関わっていたというシナリオが考えられます。
タイバー家は1700年近く争い続けてきた知性巨人保有家のうちの1つです。であれば、目の上のたんこぶであるフリッツ本家を倒して頂点に立つという野望を持っていたとしてもなんら不思議ではありません。
両者が手を組んでクーデターを仕掛ける背景は十分に整っていたということです。
支配者と奴隷の関係
145代目の王カール・フリッツが始祖の巨人を継承したことは、エルディア帝国にとって大事件であり、それがきっかけで巨人大戦にまで繋がりました。
では変化が起きる前、巨人大戦以前のエルディア帝国はどのような権力構造だったのでしょうか?
122話にヒントになりそうな描写があります。
©諫山創 講談社 進撃の巨人 31巻122話「二千年前の君から」
エルディア民族の王は最後まで始祖ユミルを奴隷として扱っていました。
そして始祖ユミルの死後、巨人の力を継承するために娘たちに母の遺体を食べさせ、それを代々続けるように指示しています。自分自身が巨人の力を得ようとする様子はありませんでした。
また、王政編で美の巨人ザックレー総統に拷問を受ける中央の貴族が言ったセリフにもヒントがあります。
©諫山創 講談社 進撃の巨人 16巻63話「鎖」
彼の先祖は巨人大戦で負けたときに、カール・フリッツに媚を売って壁内に移住してきた人たちであり、 ライナー達に 他人種系エルディア人 と呼ばれています。
©諫山創 講談社 進撃の巨人 24巻96話「希望の扉」
100年前の歴史を知っているであろうこの男がユミルの民を奴隷とみなしているということは、支配者がエルディア人(非ユミルの民)で、奴隷(ユミルの民)が巨人を継承するという構造が巨人大戦前まで続いていたと考えることができます。
エルディア帝国の王家と知性巨人保有家の権力構造
エルディア帝国の王家と知性巨人保有家の構成はこんな感じだったんじゃないでしょうか。
※家名は適当です。
- 当主(王): 純血エルディア人(非ユミルの民)
- 巨人継承者: ユミルの民(奴隷)
この関係は作中現代の構造とは違います。
タイバー家の当主ヴィリー・タイバーはユミル民で、戦槌の巨人を継承するヴィリーの妹ラーラもユミルの民です。
レイス家の当主ロッド・レイスはユミルの民で、始祖の巨人を継承するウーリやフリーダもユミルの民です。
つまり巨人大戦とは、エルディア人(非ユミルの民)に支配され続けてきたユミルの民が革命を起こすために立ち上がった戦い、と言えるのではないでしょうか。
カール・フリッツは史上初めて始祖の巨人を継承した王家
かなり妄想多めの推測ですが、カール・フリッツは歴史上初めて「ユミルの民かつ王家の血を引く者」として始祖の巨人を継承したのではないかと思います。
144代目の王がユミルの民との間に残した子、つまり純血エルディア人とユミルの民のミックス(ハーフ、ダブル)ということです。
これがいわゆる「王家の血筋」のはじまりだとすれば、「ユミルの民は全員王家の血を引いているのでは?」という疑問が解消されることになります。
ダイナにしても、巨人大戦後に立場を追われた旧王家(純血エルディア人)がレベリオ収容区で血を繋ぎ生き残るためにこっそりユミルの民との間に子を儲けたと考えれば辻褄が合います。
始祖継承 → 巨人大戦
1700年以上の長い間奴隷の中に留まっていたエルディア帝国の悲惨な歴史の記憶が「始祖の巨人の力」によってカールに流れ込み、破滅的な平和思想を抱くことになった。
そしてカールが悲惨な歴史を嘆き、今までの流れを変えようとして戦うことを止めた。争いから目を背けた。
これこそが『145代目の王が「始祖の巨人」を継承したことがきっかけ』という言葉の真意なのではないでしょうか。
支配者となったユミルの民・タイバー家
マーレ軍ではマーレ人が6つの巨人を管理していたり、パラディ島では中央政府のメンバーが他人種系エルディア人なので、この点はエルディア帝国時代と変わりません。
結局支配者になったユミルの民はタイバー家だけでした。
これではユミルの民の待遇が改善されたとは言えないでしょう。むしろ悪化している部分もあります。
だから大陸ではエルディア復権派のような組織が生まれるし、パラディ島でも反乱が起きたのです。
巨人大戦と進撃の巨人
フリッツ王家には逆らえない?
牙を抜かれた奴隷とはいえ、不満を持つユミルの民はいつの時代にもいたはずで、その数も少なくなかったと思います。
それでも1700年以上の長い間エルディア帝国の勢力図が変わらなかったのは、始祖の巨人を保有するフリッツ王家の力が圧倒的だったということの証明でしょう。
だから、普通は抵抗しても無駄なんです。
にも拘わらず、無茶を承知でカール・フリッツとタイバー家が思い切って行動したということは、それなりの理由があると考えられます。
巨人大戦前夜
カール・フリッツやタイバー家に影響を与えた存在があるのならば、もっとも相応しいのは 進撃の巨人 でしょう。
何者にも従うことのない進撃の巨人 が、王家や当主に従うしかなかったユミルの民たちを目覚めさせたのです。
カールがフリッツ家から始祖の巨人を奪ったのも、タイバー家所属の戦鎚継承者が当主に歯向かったのも、すべては進撃の巨人の小さな刃が始まりだった…というストーリーであれば、エレンが104期生たちに対して影響を与えたことと重なります。
黒幕は進撃の巨人?
黒幕という言い方は大げさかも知れません。要するに、いつの時代も状況を変えるきっかけになる「誰か」は必ずいるということです。
進撃の巨人が目指すゴールは「 レイス家礼拝堂地下での始祖奪還 ~ 地鳴らし 」です。
始祖を弱体化させて奪いやすくするためにカールに始祖と「不戦の契」を結ばせ、さらに「地鳴らし」のために「三重の壁」を作らせる必要があります。
©諫山創 講談社 進撃の巨人 30巻121話「未来の記憶」
このために、まずはエルディア帝国内の権力構造を変化させ、破壊する必要がありました。だからカールやタイバーをけしかけて巨人大戦を起こしたのです。
そして、大戦のほとぼりが冷めるまでヒィズル国が保護することでマーレから見つからないようにし、満を持してクルーガーが継承、その後グリシャ、エレンへと受け継がれます。
なぜこんな回りくどいことになるのかというと、単純な話、1人では能力全開の始祖の巨人に敵いませんし、地鳴らしまで持っていけないからです。
カールが始祖を継承した直後だといくら弱体化しているとはいえ、タイバーの目があるし他の知性巨人もいるのでうかつに近づくことができないでしょう。
一旦エルディア帝国をバラバラにして時間を置かないと、エレン(進撃+始祖)とジーク(王家の血を引く巨人)を揃えるのは不可能なのです。
当時の進撃継承者がどこまで計算していたのかは謎ですが、大戦後にカールがパラディ島へ引きこもって三重の壁を築くこと(地鳴らしのために必要)や、タイバーがマーレを支配する(フリッツ系王家の血筋が必要)ことも見通していたのかもしれません。
壁に引きこもり、不戦の契りで弱体化した始祖なら簡単に勝てます。さらに、「マーレに従わないフリッツ系の王家の血を引く巨人」を用意して接触すれば、地鳴らしも可能になります。
これは単に作中で起きたことを並べているだけなのですが、あらゆる出来事がまるでエレン(始祖ユミル)に導かれているかのような描写を踏まえると、こじつけとは言い切れないのではないでしょうか。
巨人大戦とヒィズル国
©諫山創 講談社 進撃の巨人 27巻107話「来客」
ヒィズル国はかつてエルディア帝国と同盟を結んでおり、将軍家の子息がパラディ島へ逗留していました。
©諫山創 講談社 進撃の巨人 22巻87話「境界線」
エルディア復権派(旧王家派)のクルーガーが、支援と亡命を呼びかけることが出来る東のマーレ敵対国といえば、ヒィズル国以外にあり得ないでしょう。
つまり、ヒィズル国がエルディア復権派の活動を支援したり、進撃の巨人の保護、クルーガーへ継承させるときに深く関わっていた可能性が高いということです。
同盟を組んだ理由
ヒィズル国が巨人大戦後にエルディア復権派に協力するのはかつての同盟国としてあり得る話だと思いますが、そもそも以前から同盟を組んでいたのは何が狙いだったのでしょうか??
エルディア帝国は大国なので、地続きの周辺国に敵が多いことは容易に想像できます。
その防衛策として、地理的に離れた位置にあるヒィズル国と同盟を組んでおく、というのがあったのでしょう。
そしてもう1つ都合の良いことがあります。
進撃の巨人を隔離
フリッツ王は進撃の巨人をヒィズル国に隔離しようとしていた可能性があります。
なぜなら王に抗う巨人が大陸にいても邪魔でしかないからです。
いくら知性巨人とはいえ、海で隔てられた遠い国に置いておけば、何も出来ません。
©諫山創 講談社 進撃の巨人 31巻123話「島の悪魔」
キヨミによれば、当時はユミルの民の血を取り込むことが高貴である証とされていたようです。
であれば、将軍家がユミルの民の血を取り込んで進撃の巨人を継承することは、エルディア帝国とヒィズル国にとってお互い Win-Win の取引になるのです。
進撃の巨人の隔離場所がヒィズル国だと遠過ぎるのでパラディ島にした、という計画だったのであれば将軍家の逗留話にも新たな意味が生まれます。そこに監視役としてアッカーマンを配置した…なんてエピソードが加われば色んな意味で完璧です。
フリッツ家的には反抗するやつを遠ざけられ、かつ巨人大戦で敗戦したにも拘わらず奪われずに済んだということで一石二鳥です。
しかしながら、進撃の巨人を巨人大戦中にパラディ島へ避難させておいたとして、戻すときはどうするんだという問題はあります。経過は不明でも最終的にクルーガーに渡ることは間違いない訳ですし、どこかで大陸に渡らなければなりません。
数年も経てばパラディ島壁外は無垢の巨人だらけで脱出不可能になります。かなり早い段階、というか終戦のタイミングで大陸に戻して王家の残党の誰かに継承させなければだめでしょう。
129話でマーレの海岸都市オディハにアズマビト家が保有する格納庫があるなんてエピソードが登場しましたし、他にも拠点があったようですが、果たして100年前はどうだったのでしょうか。
巨人大戦が生んだ憎しみの連鎖
タイバー家と旧エルディア勢力
知性巨人を保有する8つの家は元々常に対立しており、巨人大戦後に和解したという話は聞きません。パラディ島へ移住した者以外はタイバー家にまとめて滅ぼされたのでしょう。
巨人大戦で革命が起きたとはいえ、大陸の支配者がフリッツ家からタイバー家に変わっただけなのです。
タイバー家がマーレを裏で支配し、7つの巨人を管理下に置いたというのが何よりの証拠だと思います。
終戦後にタイバー家が王家を殲滅するため楽園送りをしていたこととも辻褄が合います。
タイバー家の近衛兵。Pコート的なクロス襷のデザイン
©諫山創 講談社 進撃の巨人 24巻97話「手から手へ」
クルーガーの家族(王家の残党)を焼くタイバー家の近衛兵
©諫山創 講談社 進撃の巨人 22巻88話「進撃の巨人」
104期のユミルを楽園送りにするタイバー家の近衛兵
©諫山創 講談社 進撃の巨人 22巻89話「会議」
であれば、旧王家と友好関係にあったヒィズル国が立場を追われたというのも自然な流れです。
パラディ島に取り残された将軍家の末裔が、後から移住してきたタイバー家の仲間であるカール・フリッツと対立して迫害されるのも当然でしょう。
タイバー家とヒィズル国
キヨミ(ヒィズル国)がパラディ島に協力するのは様々な理由があります。
- 将軍家の末裔であるミカサの存在
- 資源独占
- タイバー家への恨み
キヨミがミカサと関係を持つことは、アズマビト家がヒィズル国内での立場を向上させるために役に立ちます。
パラディ島の兵団はヒィズル国に対して他国との貿易への協力を要請しましたが断られてしまいました。あくまでも資源独占に拘った格好です。ヒィズルの経済復興を考えると譲れないところなのでしょう。
それでもキヨミはアズマビト家として、調査兵団のマーレ遠征に協力しています。このとき調査兵団は国際討論会に出席して「ユミルの民保護団体」の発表を聞きました。
やったのはこれだけです…。
せっかくマーレに遠征するのですから、タイバー家との交渉の場を設けてあげても良さそうなものです。キヨミはヴィリーの演説前にサクッと楽屋に行けるくらいの間柄なのですから。
パラディ島が世界と和睦の道を探るのなら、最も重要な交渉相手はタイバー家でしょう。
しかしそれをしなかったということは、やはり巨人大戦の遺恨が残っているのだと考えられます。
ヒィズル国はエルディア帝国と同盟を結ぶことで国際的な地位向上が見込めたにも拘わらず、それをすべてタイバー家に壊されてしまったのですから無理もありません。
マーレと和解する気などさらさら無く、むしろパラディ島との軍事同盟を機に積極的に潰そうとしていたのだと思います。
そもそもタイバー家はパラディ島が世界から憎まれることで成り立っているようなところがありますので、たとえ交渉のチャンスがあったとしても厳しかったかもしれません。
こう考えると、パラディ島は本当に八方塞がりだったということがよくわかります。
東洋の一族の迫害
東洋の一族とは、つまりフリッツ王家と懇意にしていたヒィズル国の将軍家の末裔ということです。そしてエルディア帝国とヒィズル国は同盟関係にありました。
レイス家の歴代始祖継承者は、初代壁の王であるカール・フリッツから平和思想を受け継いでいたようです。
しかし当主は普通の人間(ユミルの民ではある)であり、ロッド・レイスの例を見ればわかるように中央第一憲兵やウォール教を使って結構酷いことをしています。
タイバー家が旧王家の残党を徹底的に粛清したように、パラディ島内でもレイス家が対抗勢力に対して容赦のない仕打ちをしていたであろうことは想像に難くありません。
そういった事情から、巨人大戦時に対立関係にあった東洋の一族を迫害したり、故郷へ帰れないようにしたのも自然な流れであるように思います。
アッカーマンと王家の関係
アッカーマンはエルディア帝国全盛時代からパラディ島にいた?
©諫山創 講談社 進撃の巨人 23巻93話「闇夜の列車」
アッカーマンは「巨人化学の副産物」であり、王家の伝承のみの存在と言われています。
これはジークとマガトの会話ですから、この内容はジークが巨人の記憶を通じて得た知識ではなく、マーレ軍の中で浸透しているものだと考えられます。
つまりここで言う「王家の伝承のみの存在」の王家とは、エルディア帝国時代のフリッツ王家のことであると思われます。レイス王家の伝承なんてマーレ人は知りようがないのですから。
アッカーマンは大陸時代から既に存在していたと考えるのが妥当でしょう。
アッカーマンは巨人大戦後にパラディ島へ移住した?
©諫山創 講談社 進撃の巨人 16巻65話「夢と呪い」
ケニーの祖父はカール・フリッツが壁内に移住した後に生まれた世代なので、そもそも詳しい事情を知らないみたいですが、アッカーマンが王家の懐刀だったことは確かなようです。
しかし、マーレに伝承が残っている、つまり元々は旧王家派である可能性が高いアッカーマンがカール・フリッツに仕えるのは少し不自然な気がします。
もし旧王家の懐刀だったのであれば、わざわざカールを追ってパラディ島に付いてくるはずがないからです。
ということは、巨人大戦前後に進撃の巨人の監視役として一部がパラディ島へ派遣されていたのではないでしょうか(上の進撃の巨人がパラディ島へ避難していたかも、という説が前提です。そうであればリヴァイとエレンの関係と重なります)。
そして巨人大戦の後も流れで壁内王政の中枢を務めたが、カール・フリッツが民の記憶を改竄しようとすることに異を唱えて決裂した、ということなのかもしれません。
じゃあ、大陸のアッカーマンはどうなったの?という疑問が出てくるのですが、いくら強いとはいえ巨人と戦えるのは立体機動装置があるからで、生身の状態ではたかが知れているでしょう。タイバー家の旧王家粛清運動によって絶滅させられてしまったのだと思います。
エレンが手に入れた記憶は?
反逆者がタイバー家である理由は?
なぜ他の巨人保有家ではなくタイバー家が巨人大戦の中心だったのかという点については謎のままです。
戦鎚は北欧神話の中でも最強クラスの神であるトールを思わせますので、そういったところをモチーフにしているのだと考えられます。
これ以上の謎に迫るためには、戦鎚の巨人を食ったエレンが見たであろう記憶がどのようなものだったのかが明らかになるのを期待するしかありません。