マーレ編(アニメ Final Season)の導入部分・前提知識として押さえておきたいこと
23巻(アニメ Final Season(Season 4))から突然物語の舞台が変わったので、急に訳がわからなくなったという人も少なくないようです。
一般的に「マーレ編」は23巻から26巻の途中までを指すと思われますが、進撃の巨人は「~編」と呼ばれていても基本的に全て繋がって続いている物語なので、22巻以前の内容を理解していないと当然意味がわからなくなります。
このページでは、マーレ編に突入する前に押さえておいたほうが良いと思われる内容についてざっくりと概要を解説しています。
触れる内容は原作でいうと21巻86話「あの日」から22巻90話「壁の向こう側へ」あたりのものです。この先の展開を理解する上でここが抜けるとけっこうしんどいかもしれません。
アニメのFinal Season (Season4) を見て原作も読んでみようと思った方は21~22巻を集中して読むことをおすすめします。
世界の歴史。ざっくり
この作品の世界、壁の中だけでなく、外も含めた世界全体がどのような状況になっているのかを解説します。
マーレ → エルディア → マーレ
※おおよそのイメージです。はるか昔、大陸はマーレが支配していました。
約1820年頃前(←曖昧)にエレンたちの祖先であるユミル・フリッツが大地の悪魔と契約して巨人の力を手に入れます。
ユミルは死後「九つの巨人」に魂を分けエルディア帝国を築き、マーレを亡ぼします。
その後、約1700年間はエルディア帝国が巨人の力に物を言わせて大陸を支配する時代が続きました。
マーレに言わせれば、エルディア以外の民族の土地や文明が焼かれ民族浄化が続いた暗黒の時代です。
一方、エルディアに言わせれば、富や文明を築き大陸を発展させた黄金時代ということになります。
それぞれの言い分は事実を含んでいるけれど、完全にその通りというわけではなく、その程度についてもあやふやという感じです。
エルディア帝国は長い間、圧倒的な巨人の力によって世界の頂点に君臨し続けていたのですが、それゆえに巨人を持つ家同士の争いは絶えず、度々フリッツ王が始祖の巨人の力で鎮めていたといいます。
巨人大戦
そして約100年前、145代目の王カール・フリッツの時代に争いが激化し巨人大戦が勃発。エルディアは終焉を迎えます。
大戦に勝利したマーレはエルディア帝国から7つの巨人を奪い、再び大陸の支配者に返り咲きました。
島と大陸に分断されたエルディア人
巨人大戦当時のエルディアの王カール・フリッツは終戦後にパラディ島(エレンの故郷)へ移住します。
カールは巨人で出来た三重の壁を築き、共に移住した国民の記憶を改竄し、以後約100年間、つかの間の平和を享受しました。
※王がなぜこのような行動を取ったのか真相は不明です(物語が進むといくつか明かされる部分はあるのですが、核心的なところは謎のままです)。
一方、大陸に取り残された一部のエルディア人はマーレで迫害され、戦争兵器として利用されるようになりました。
マーレは戦力として巨人になるエルディア人を必要としているため「大陸に取り残されたエルディア人」というのは実は「マーレがあえて大陸に残したエルディア人」なのかもしれません。
エルディア人同士の戦い
ウォール・マリアの壁を破ったライナー、ベルトルト、アニらは「大陸に取り残されたエルディア人」の子孫であり、マーレ軍の「始祖奪還作戦」でパラディ島に送り込まれたスパイでした。
また、壁外を彷徨う「無垢の巨人」の正体は、マーレで罪人となりパラディ島に送られ巨人化させられたエルディア人であったということもわかっています。
さらに、レイス家(ヒストリアの家系)は巨人大戦後にパラディ島に移住した145代目カール・フリッツの子孫です。
つまり1巻~22巻(アニメSeason3まで)で繰り広げられた戦いは、実はエルディア人同士によるものであり、その背後にはマーレの存在が、もっと言えば当時の世界情勢に左右されていたということになります。
エルディア人とユミルの民
「エルディア人」と「ユミルの民」はややこしいですが、基本的な理解としては「エルディア人の中でも巨人になれるのがユミルの民」と思っていれば問題ないと思います。
いくつか例外があって「エルディア人だけど巨人になれない人(壁内の貴族)」もいます。
作中に出てくるときは十中八九「エルディア人=ユミルの民」です。マーレ人はだいたいみんなエルディア人呼びです。
ほぼ一緒だけど本当は違う、ということさえわかっていればいいんじゃないでしょうか。
マーレによるエルディア人の迫害・兵器利用
マーレは巨人になれる民族であるエルディア人(ユミルの民)をレベリオ収容区に閉じ込めて管理し、兵器として戦争に利用しています。
巨人の力で世界を支配するマーレ国ですが、軍を指揮するのはマーレ人(一部エルディア人もいるかも??)、巨人になって最前線で戦っているのはエルディア人、という構造です。
一部のエルディア人は幼い頃から戦士として英才教育を施され、中でも優秀な者はエルディア帝国から奪った7つの知性巨人(鎧や女型、超大型巨人)を継承し、巨人継承者にならなかったそれ以外のエルディア人兵士も戦争の最前線に立つことになります。
彼らは壁に囲まれた収容区から許可なく外出することを禁止されている他、マーレ人からは迫害され、窮屈な思いをして生きています。
マーレによる洗脳??憎しみの矛先をパラディ島へ
マーレ人は巨人になることができませんので、巨人を兵器として利用するためにはエルディア人(ユミルの民)が絶対に必要です。そのためにマーレはどうにかしてエルディア人を自分たちの管理下に置きたい、という思惑があります。
エルディア人は1700年もの間いくつもの民族を食い殺し、土地や財産、文明を奪いつつ、他民族に無理矢理子を産ませてユミルの民を増やし続けた。
巨人大戦で破れた後、仲間を見捨ててパラディ島に逃げて引きこもり今でも反撃の機会を伺っている。
それがパラディ島に住む「島の悪魔」たちである。
だいたい上のような内容のことをレベリオ収容区のエルディア人に刷り込むことによって、洗脳しています。
憎しみの矛先をマーレからパラディ島に逸らしつつ、巨人継承者(戦士)となった者とその両親は「名誉マーレ人」の称号を与えるなどして、マーレへの忠誠心を持たせようとしています。
とはいえ、マーレ国内の全てのマーレ人とエルディア人がこのような思想にどっぷり浸かっているわけではありません。その辺りは作中の描写を見ているとわかると思います。それぞれの生存戦略としてこの状況を甘んじて受け入れているという感じです。
中には不満を持って反抗しようとする者がおり、それがエレンの父グリシャがリーダーを務めていた「エルディア復権派」です。とはいえマーレの支配に抗うのは簡単ではなく、復権派のメンバーは皆は捕まりパラディ島へ送られ巨人にされてしまいました。
ちなみに世界の人々のエルディア人に対する認識はマーレのそれよりも過激なようです。マーレはエルディア人に利用価値を見出しており、現場で本人同士の交流があるのに対し、他国はエルディア帝国時代の暗い歴史がそのまま引き継がれているからでしょう。
島の悪魔・パラディ島のエルディア人
パラディ島のエルディア人は「悪魔」として世界中から憎まれ、恐れられています。
エルディア帝国の時代の残虐な行いが強く印象付けられており、いつかまた世界を相手に暴れ始めるかわからないと思われているのです。
それに加えてマーレのプロパガンダがあったり、誰か1人を悪者にすることによって世界はようやくバランスを保っていられる、という事情もあります。
大陸のエルディア人は、日常的に迫害され、戦争では巨人兵器として利用されるという不遇な扱いを受けていますが、なんだかんだでマーレ人とは共生関係にあります。
一方、パラディ島のエルディア人は完全に世界から孤立し、さらに同胞であるはずの大陸のエルディア人からも憎まれています。
第1話の超大型巨人襲来から始まったマーレの始祖奪還計画は氷山の一角であり、今後さらなる攻勢を仕掛けられることが確実視されている、という状況です。
マーレおよび世界の現状
マーレは巨人の力にものを言わせて他国を蹂躙して植民地化し世界を支配しています。敵対している国も多く、あまり良く思われていません。
パラディ島を侵略しようとしているのは「始祖の巨人」が欲しいからというのもありますが、地下資源の獲得も大きな目的です。
というのも世界各国で近代化が進み兵器が強力になってきており、いずれ巨人の力が役に立たなくなることが確実視されているからです。
しかしマーレは巨人ありきでやってきたせいで、科学技術では他国に遅れを取っています。今はまだ優位な立場ですが、将来に向けて近代化を進めていく上でも資源の確保は重要なのです。
マーレはパラディ島だけを見ているわけではなく、他にも敵がいていつ戦争が始まってもおかしくない状態にあります。
またパラディ島にしても資源を狙ってくる敵はマーレだけとは限りません。104期ユミルが言おうとしていた「敵は世界」というのはそういうことです。
まとめ
以上がマーレ編を読む前に知っていると良いだろうと思われる前提知識です。
グリシャの手記に書かれていたことは、1~21巻(アニメ Season3)の出来事にはこんな背景があったんですよ、というある意味種明かしみたいなところなのですが、また新たに生まれた謎もあり、というかむしろ増えた謎のほうが多いくらいです。
23巻以降を楽しむためにも、21~22巻は繰り返し読んでおくと良いと思います。
ここで解釈がズレたままだと後々の出来事の意味もよくわからなくなってしまうかもしれません。
とはいえ、なんとなくすっ飛ばすのがダメだというだけで、そこまでわかり難い話でもないと思います。