145代目カール・フリッツと「不戦の契り」の謎を考察
145代目カール・フリッツとは、始祖の巨人の継承者であり、巨人大戦終結のきっかけとなった人物です。
大戦後、彼はエルディア人の一部を引き連れてパラディ島に逃げ込み、「地鳴らし」を盾に三重の壁の中に篭もりました。そして、初代・壁の王となり、家名をレイスに変えます。
グリシャの手記やヴィリー・タイバーの演説で多くのことが語られましたが、いくつか不可解な点があります。
異常なマーレ優遇、「地鳴らし」で脅しておきながら「不戦の契り」による戦争放棄を公表するという謎な行動。
それはおそらく彼がマーレ人とエルディア人の混血であり、かつ元々王位継承者ではなかったということが原因であると考えられます。
145代フリッツ王とはどんな人物なの?
ヴィリー・タイバーの演説の内容からわかるフリッツ王の特徴
- 始祖の巨人を継承する以前から、エルディア帝国の残虐な歴史を嘆いていた
- 同族同士の争いに疲れ果てており、何より虐げられ続けたマーレに心を痛めていた
- 同族同士の争いに疲れ果て、へーロスを使って同士討ちをさせてエルディア帝国を亡ぼした
- 平和を願っており、マーレを解放したかった
- パラディ島移住後、「安息を脅かせば幾千の巨人で報復する(地鳴らし)」と宣言
- しかし、報復は本意ではないので「不戦の契り」を生み出し、その思想を代々受け継がせた。
- もしマーレが力をつけて王家の命や「始祖の巨人」を奪うなら、それを受け入れるつもり
- もしマーレがエルディア人の殲滅を願うなら、それを受け入れるつもり
- なぜならエルディア人の犯した罪は重いから
- そもそもエルディア人、巨人は存在してはいけなかったという思想
このひとはマーレ人ですか?
こうして並べてみると、かなりマーレ寄りの人物であるように思えます。
ヴィリーはマーレの支配者なので、かなりマーレにとって都合の良い解釈になってしまうのはある程度仕方がありません。
それでもやっぱりおかしい点があります。
本当に平和主義ならば特別マーレを贔屓にする必要はないはず
確かに、エルディア帝国がやってきた他民族への攻撃は酷かったかもしれません。
特にマーレはエルディア以前の支配国家でしたから、特に扱いが酷かったであろうと思われ、カール・フリッツが哀れに思うのもうなずけます。
しかし、本当に平和を願っていたのならば、特定の民族に肩入れすることは不自然です。
マーレが覇権国家となった結果、平和どころかやりたい放題でエルディア帝国時代となんら変わりないのですから、カールの望んだ世界になっているとは言えないでしょう。
同族同士の争いに疲れていたんじゃないのか
145代目フリッツは、同族同士の争いに嫌気が差していたのに、巨人大戦を終わらせるためにやったことは結局同士討ちです。
平和的な解決策とは程遠いような気がします。
ここの部分に関しては、タイバーの演説前半と後半で同じというのもひっかかります。
なぜ?
つまり、145代目フリッツ王は戦争を終らせる力を持っていなかったのでしょう。
そう、始祖の巨人の力を使えないのです。
ダイナ・フリッツのセリフからわかること
- そもそも、巨人大戦とは145代目が始祖の巨人を継承したことが始まりである。
- それまでも8つの巨人を分けた家同士では争いが絶えない時代が永らく続いていたが、王家が始祖を持っていることによりエルディアは均衡を保っていた。
- しかし、145代目がその役目を放棄して辺境の島に都を移した
ダイナ・フリッツは、巨人大戦が始まった原因は「145代目が始祖の巨人を継承したこと」と言っています。
「エルディアが強くなりすぎて敵がいないもんだから、同族同士の争いが始まったのではない」ということです。
始祖の巨人の継承それ自体が問題だった、と考えるべきではないでしょうか。
始祖の巨人の力を使えば良いじゃないか
始祖の巨人は全ての巨人を操ることができるはずなので、巨人家同士が多少内輪揉めを起こしても沈静化できたのです。144代目までは。
始祖の巨人にかかれば、安全に争いを治めることだってできたはずです。
平和主義者の145代目にしてみたら、まさにうってつけの能力じゃないですか。
パラディ島に引き篭もるにしても、他の巨人を全部引き連れていけば全て丸く収まりそうなものです。
なのに、なぜ使わないのでしょうか??
145代目フリッツが始祖の巨人の力を使えない理由
なぜ、145代目は始祖の巨人の力を使えないのか。
おそらく、血統が原因であると考えられます。
代々純血を保ってきたフリッツ家にマーレの血が入ってしまったのではないでしょうか。
24巻・第95話「嘘つき」で、ガビが「血の繋がりは記憶の継承に影響を及ぼす」というような発言をしています。フリッツ王は壁の中で記憶の改竄をしていますから、これは注目すべきポイントです。
なぜマーレ人との混血と言えるのか?
グリシャの父の発言からわかること
フリッツ王は残された国土「パラディ島」に三重の壁を築き国民と共にそこへ逃げ込んだ
だが、全員ではない
我々、非マーレ派のエルディア人残党は奴らに見捨てられこの大陸に残された
非マーレ派のエルディア人が大陸に取り残されたのであれば、パラディ島に連れて行かれたのは自ずとマーレ派エルディア人(非マーレ派ではない)ということになるのではないでしょうか?
であれば、連れて行ったカール・フリッツもマーレ派であると考えるのが自然だと思います。
エレン・クルーガーのセリフからわかること
クルーガーはマーレ治安当局に潜んでいた人間ですから、145代目カール・フリッツに関する詳細な情報(本音)を知っていたとしてもおかしくはありません。
- 壁の王(145代目フリッツ王)は戦わない
145代目フリッツ王が残した言葉↓
- 「エルディアが再び世界を焼くというのなら我々は滅ぶべくして滅ぶ」
- 「我から始祖の巨人を奪おうと無駄だ」
- 「我は始祖の巨人と不戦の契りを交わした」
自分はマーレ人であると漏らしてしまっている?
「エルディアが再び世界を焼くというのなら~」というセリフは「地鳴らし」を指しているのかもしれませんが、それにしても違和感があります。
これは言い換えると「エルディアが再び攻めて来ても受け入れます」ということだと思います。
どうしてエルディア人であるフリッツ王のところにエルディアが攻めてくるのでしょうか??
敵国マーレと手を組んで他の巨人家を裏切ったから?
だとしたらもっと違う言い方がありますよね??なぜわざわざエルディアと言うのでしょうか?
これはつまり、フリッツ王が自分はマーレ側の人間だと思っている、ということではないでしょうか。
カールがタイバー家、ヘーロスと組む理由
巨人を保有する家の1つだったタイバー家がクーデターを仕掛けるのはわかるのですが、エルディア帝国の王家の人間であるカールが簡単にマーレに寝返るでしょうか?
王家の残党やダイナの執念を見ていると、それは考えにくいことです。
大戦終結後の権力構造が明らかにタイバー家とマーレに有利なものになっていることから、カールはタイバー家かマーレ出身の人間であり、本来の後継者から始祖の巨人を奪ったという可能性が高いでしょう。
タイバー家がわざわざ始祖を持たない選択をするのはちょっと不自然なので、マーレの線が有力かなと思います。
そうであれば、マーレよりの破滅的な平和主義者ということで、カールの行動に矛盾が少なくなります。
不可解な「不戦の契り」アピール
「我は始祖の巨人と不戦の契りを交わした」もおかしいです。別に言う必要がありません。
もし145代目フリッツ王が壁内に籠もり続けていたいなら、たとえ「地鳴らし」を発動できないとしても抑止力としてハッタリをかましていれば良いのです。
なのに、「不戦の契り」があるので僕は攻撃しませんよー、とアピールしています。これじゃあ「どうぞ攻めてきてください」と言っているのと同じです。
クルーガーが知っているということは当然マーレ軍も知っています。
結局、無垢の巨人が増えすぎてマーレがパラディ島の壁内を攻めることは出来なかったのですが。
それにしても、なぜ145代目フリッツ王はわざわざ「不戦の契りアピール」をしたのでしょうか?
145代目フリッツ王は誰かに裁いてほしかった?
25巻・第99話「疾しき影」の冒頭でライナー、ベルトルト、アニの3人の回想シーンが差し込まれます。壁内に突入して訓練兵になる前の話です。
彼らが壁内の開拓地で会った、子供見捨てて巨人から逃げたおじさんが首を吊った出来事を思い出しながらベルトルトがこう言います。
ベルトルト: …ずっと、同じ夢を見るんだ。開拓地で首を吊ったおじさんの夢だ。何で首をくくる前に僕達にあんな話したんだろうって…。
ライナー: そんなの…わかるわけないだろ。
アニ: 誰かに許してほしかったんでしょ。マルセルを置いて逃げた私達に…何か…言えるわけないのにね。
ベルトルト: 僕は…なぜかこう思うんだ。あのおじさんは…誰かに― 裁いてほしかったんじゃないかな。
原作では、この直後にライナーの全身が出てくるので、裁いてほしいと思っているのはライナーであると考えられます。
しかし、この回はヴィリー・タイバーが巨人大戦について、145代目フリッツ王についての演説を始める回でもあります。裁いてほしかったのはおじさんとライナー以外にもいると考えても不自然ではないでしょう。
本当の正体は??
巨人大戦と145代目カール・フリッツについて、作中の描写では説明が不十分だと思います。
そこそこ目立つように描かれているにも拘わらず、このモヤモヤ感は怪しいです。
物語の最終局面で、どんでん返しのきっかけになることを期待してしまいます。