第138話「長い夢」
概要
みんなの力を合わせ、ついにアルミン超大型巨人の大爆発でエレン巨人を吹き飛ばすところまでこぎつけた。
どうやら地鳴らしは止まり、エレン巨人の骨は完全に消失したらしい。
スラトア要塞に避難したファルコ巨人と一行。マーレ勢(ライナーを除く)は家族との再会を喜び、パラディ勢も一旦ひと休み風。対照的に一人辛そうなミカサ。
一触即発だったマーレ人兵士と収容区エルディア人もミュラー長官の空撃ちによって事なきを得た模様。
しかしやはりというか何というか、光るムカデとエレン(とライナー)は死んでおらず延長戦スタート。ちょっと嬉しそうに見えなくもないミカサ。
光るムカデがおもむろに煙を噴出開始。ラガコ村パターンでスラトア要塞にいる全てのエルディア人を巨人化。戦士たちの家族も、ジャンもコニーもガビも例外ではない。残されたのはアッカーマン2人と知性巨人だけ。
現実を受け止めきれないファルコやピークちゃんたちだったがリヴァイ兵長はさすがの切り替え。仲間に檄を飛ばし、再び戦場へ。
巨人を従えて前進し、再びエレンと融合しようとしていると思われるムカデとたった1人で戦っていたライナーの援護に回るアニとピーク。ミカサとリヴァイはエレンの元へ向かう。
エレンは骨の残骸の中から今度は超大型巨人タイプとなって再登場。スキンヘッドアルミンとロン毛エレンが巨体をぶつけ合う。
今回、終始頭を痛めっぱなしだったミカサがついにエレンとの夢(記憶?理想?)の世界へ。
誰もいない山奥で静かに暮らすエレンとミカサ。2人は調査兵団でマーレに遠征したあの日、全てを放り出して逃げていた。
エレンはヒストリアを地獄に落として永遠の殺し合いを続けることも、島の外の人間を虐殺することも出来なかった。
「オレが死んだらマフラーを捨ててくれ、オレのことを忘れてくれ」とエレンは望む。
しかしミカサはエレンの望みを断り、現実へ帰還。
自らマフラーを巻いて覚悟を決めたミカサはリヴァイとアルミンのアシストを受けてエレン巨人の口の中へ飛び込み、本体の首を切断。
「いってらっしゃい エレン」
生首エレンにキスをするミカサ、2人を見つめて微笑む始祖ユミル。
関連
「いってらっしゃい」1話と138話の繋がりを考察
この回で回収された伏線
「いってらっしゃい」セリフと女性の正体
ミカサらしき女性が「いってらっしゃい エレン」と言う場面。エレンの想定より髪が短い。いつ、どこの場面の記憶?
1巻1話「二千年後の君へ」
女性の正体は道のミカサ。138話のミカサの夢(123話のマーレ遠征中に全てを放り出す決意をしたミカサとエレンは人里離れた山奥で暮らしている)と現実世界(ミカサがエレンの首を切る)が重なっている。現実エレンと連動して意識を失いそうになっている道エレンにかけた言葉が「いってらっしゃい」。エレンとミカサ双方の夢と現実が交錯している、ということなのだと思われる。
「いってらっしゃい」を見た人は誰?
「いってらっしゃい」を見ている人(記憶の持ち主)は誰?
1巻1話「二千年後の君へ」
138話に登場する道の短髪エレン。現実のロン毛エレンが首を切られるのと連動して、道のミカサに「いってらっしゃい エレン」と言われている。尚、道は死のない世界らしいので短髪エレンは死んでないのかもしれない。
髪が伸びていないか? その2
「ミカサ……お前…髪が伸びてないか…?」のセリフの主。
1巻1話「二千年後の君へ」
おそらく87話のエレンとグリシャと同じように1話エレンと138話エレンがシンクロしている。138話の短髪エレンが見た「いってらっしゃいのミカサ」は1話のミカサより髪が短い。1話エレンが「夢で見たいってらっしゃいの女性」をミカサだと誤認している訳ではなく、138話エレンと1話エレンの意識が混ざっていると考えられる。
ミカサの回想で寝ているエレン
諦めかけたミカサが再び闘志を燃やす場面の回想。マフラーを巻いてくれたエレンや「戦え!!」はわかるが、なぜ寝ているエレンが2コマも登場するのか?
2巻7話「小さな刃」
「いってらっしゃい」に繋がる伏線と解釈することが出来る。「木にもたれて座る人」は死のイメージとして割と一般的(ケニーがそうだった)。7話当時のミカサは15歳エレンの死を聞かされ、木にもたれて座り眠る10歳エレンをイメージしていた(現場を見ていないから)。エレンの本当の最期の姿(138話のベンチに座ってぐったりする短髪19歳エレン)にも重なっている。
でけぇ害虫
エレンのモノローグ。ライナーに対して「でけぇ害虫」呼ばわりする
11巻43話「鎧の巨人」
巨人の力の源である「光るムカデ」を示唆?
隣のやつが巨人になろうが
リヴァイが今後の方針について語る場面でこれから起きるかもしれないネガティヴなことを列挙。「隣のやつが巨人になろうが」と言ったとき、「は!」と驚くサシャの両隣にいるのはジャンとコニー
13巻52話「クリスタ・レンズ」
ジャンとコニーが光るムカデのガスで無垢の巨人になってしまう。
リヴァイの迅速な対応
リヴァイのセリフ「異常事態に陥った場合 俺は誰よりも迅速に対応し 戦える」 女王になることを躊躇するヒストリアを説得するためにリヴァイが繰り広げた演説の中の言葉
14巻56話「役者」
光るムカデがガスを噴出してからの判断の速さ、見事な切り替え。状況が変わっても、最後の最後まで兵長は兵長だった。
お前は自由だ
グロス曹長からグライスへのセリフ。巨人化は免れたが崖から突き落とされ、この後巨人に追いかけられることが確定している。
22巻87話「境界線」
マーレの支配、差別から解放されるが命の保障はどこにもない。自由と代償というか、自由とは必ず代償を伴う、もっといえば自由とは代償そのものぐらいの勢いを感じる。
命を捧げる
エレンは現状を変えるためなら命を捧げる気でいる
22巻90話「壁の向こう側へ」
「地鳴らし」を発動して進み続けた結果…
リヴァイはワインを飲んでいたけどアッカーマンだから巨人化しなかった?
ジークの叫びでリヴァイは「ビビ」っと感じている。
28巻112話「無知」
138話でリヴァイは「アッカーマンと知性巨人は例外(ガスを吸っても巨人化しない)」と断言している。ワインを飲んだ上でジークの叫びによる巨人化を回避したという自覚がないと出てこないセリフ。
ミカサの迷いとマフラー
ミカサは自分がエレンを助けたいと思うのはアッカーマンの習性であり、自分の意志ではないのではないかと迷っている。そしてマフラーを置いて戦場へ向かった。
29巻118話「騙し討ち」
本当の答えはわからないが、ミカサは自分がエレンを想う気持ちは自分の意志であると決めた。だからマフラーも捨てずエレンも忘れないことにした。エレンの「すべてはオレが望んだこと」と重なる。
別の答え
ミカサが選択した別の答え
31巻123話「島の悪魔」
ミカサの夢にて。「あと4年の余生を静かに生きよう…誰もいないところで 二人だけで」と答え、全てを放り出してエレンと山奥でひっそり暮らす。エレンは「マフラーを捨ててオレを忘れてくれ」と願う。しかし現実のミカサはエレンの願いを断り、自らマフラーを巻いてエレンに止めを刺す。
アッカーマンは巨人化しない?
ハンジのセリフ「…みんな巨人にされたけど君だけ生き残った この怪我でまだ生きているのも同じ理由だろうね 君がアッカーマンだからだ」
31巻126話「矜持(きょうじ)」
「巨人にされた」の意味はおそらく「ジークの脊髄液を摂取したせいで巨人にされた」ということ。つまりアッカーマンはジークの脊髄液を摂取しても巨人化しない。「この怪我~」は強靭な肉体、生命力のことを指していると考えられる。そしてリヴァイは半分寝ながらハンジの話を聞いていた。
手を振る人たち
戦いから離脱するアニに手を振るパラディ勢
33巻132話「自由の翼」
手を振っていた人のその後。ハンジ(132話死亡)、ジャン&コニー(無垢の巨人化)。アルミン、ミカサ、リヴァイは手を振っていない
銃声4発
スラトア要塞で一触即発のマーレ人とエルディア人。銃声が4回鳴り響く。
34巻136話「心臓を捧げよ」
ミュラー長官が空に撃っていた。
巨人の口の中 ↔ 外の状況
アルミンのセリフ「…僕は口の中にいるはずなのに なぜかみんなの状況がわかる」
34巻136話「心臓を捧げよ」
道で繋がっているから互いの状況がわかる(こともある)。アルミン↔みんな、エレン↔ミカサで対応。だからミカサはエレンが巨人の口の中にいるとわかったと考えられる。
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謎
ミカサの頭痛⑩
エレン巨人爆破直後、エレンの「お前がずっと嫌いだった」を思い出して発症。以後138話を通じて終始頭痛に悩まされる。
ミカサの夢~「いってらっしゃい」に繋がっていく。
ミカサの夢に出てくる鳥
ミカサの夢の終盤に鳥が飛んでいる
エレン巨人VSアルミン巨人の上空を飛ぶファルコ巨人を重ねている? or エレンの望み「ミカサがマフラーを捨ててエレンを忘れる→自由になること」を表現している? or 記憶を見ているエレンの鳥?
エレンは口の中にいる
なぜミカサはエレン本体の位置がわかったのか?
「エレンは口の中いる」というセリフは誰のもの?ミカサならエレンと記憶で繋がったから(136話で道に居るアルミンはみんなの様子がわかっていた)。アルミンなら殴り合いの最中に見えていた(超大型巨人はミカサに聞こえるようにしゃべれないけど…)などが考えられる。
ミカサの理想?
ネームには「ミカサの理そうを描く」と書かれている、スイス風山小屋でエレンとミカサが2人で暮らしている世界。これは何?パラレルワールド(並行世界、if ルート、別な世界線?)
おそらく「道」関係のもので、エレンとミカサの意識が干渉し合って作られている。その証拠にエレンのセリフはミカサに都合の良いものばかりではない。終盤、現実ロン毛エレンの首が切られた後に山小屋短髪エレンも生首になっている描写があるので2つの世界が重なっている。
「いってらっしゃい」が1話に繋がるとして、少年エレンがそれを見れるのはなぜ?
進撃の巨人を継承する前の少年エレンが未来の出来事である「いってらっしゃい」を見ることが出来たのはなぜ?
845より前は「道」、845より後が現実(下界)。「いってらっしゃい」の記憶(夢)を見ているのは「道の少年エレン(845より前のエレン)」なので過去未来は関係ない(というかむしろ順番通り)。一方「現実の少年エレン(845より後のエレン)」は「いってらっしゃい」を見ていない。だからこの件に関しては進撃の巨人を継承しているかどうかは元々関係なかった、と思っていれば辻褄は合う。
エレンは死んだのか?
エレンは首を切られたが死んでしまったのか?
過去の例を考えると、首だけでもまだギリギリ生きている可能性がある。
なぜ始祖ユミルは微笑んでいる?
なぜ始祖ユミルはミカサとエレンのキスを見て微笑んでいる?
解放してくれてありがとうの微笑み。エルヴィンやエレンのそれと同じような意味合いだと考えられる。単純に満足したとか喜んでいるという訳ではないはず。122話以降の一連の出来事を経て、幼いときに男女のキスを見たときとは違うものを感じた、また自分がやったことの中に肯定されるべきもの(子孫の繁栄など)も確かにあったかもね、的なことを表現していると考えられる。
過去回と重ねられている描写
手を伸ばすファルコ
両親に再会し、巨人から身体を出して手を伸ばすファルコ
ジークの叫びで巨人化してしまう時にガビに向けて手を伸ばしていたのと描き方が似ている
30巻119話「兄と弟」
エレンとミカサの涙とセリフ
ミカサ「何か…長い夢を見ていた気がする」からの涙。エレン「何で…泣いてんだ?」ミカサ「…え?」
エレン「なんかすっげー長い夢を見ていた気がするんだけど……」ミカサ「どうして泣いてるの?」エレン「え…?」で涙。
1巻1話「二千年後の君へ」
手を繋いで駆け出すエレンとミカサ
手を繋いで駆け出すエレンとミカサの姿
帰還した調査兵団を見るために手を繋いで駆け出すエレンとミカサ。86,88話のグリシャとフェイとも被る。とりあえず不穏。
1巻1話「二千年後の君へ」
エレンとラムジー。涙への反応
泣いているミカサを見たエレン「何で…泣いてんだ?」
泣いているエレンを見たラムジー「何で泣いてるの?」
33巻131話「地鳴らし」
私がやる みんな協力して
エレンを倒す覚悟を決めたミカサがリヴァイとアルミン、ファルコに協力を求める
リヴァイの「ジークは俺が仕留める 力を…貸してくれ」と重なる
33巻133話「罪人達(つみびとたち)」
了解だ ミカサ
おそらくリヴァイのセリフ「了解だ ミカサ」
リヴァイがエルヴィンに対して何回も言っているセリフというか言い方。つまり信頼の証。
7巻28話「選択と結果」
エレンの表情
ミカサに切られる直前の満足そうな(?)エレンの表情
リヴァイに背中を押してもらい、ほっとしたのか満足そうに笑みを浮かべるエルヴィンの表情
20巻80話「名も無き兵士」
ミカサの決めゼリフ3部作
止めを刺すときのミカサのセリフ
Ⅰ. アニ落ちて(33話) Ⅱ. ライナー出て(82話) Ⅲ. いってらっしゃいエレン(138話)
話
始祖ユミルが見つめるの男女のキス
始祖ユミルが見て微笑む、ミカサと生首エレンのキス
奴隷時代の始祖ユミルが見ていたエルディア部族の男女のキス
30巻122話「二千年前の君から」
小ネタ・擬音
絶対にここは通さねえ
ライナー「…ふざけやがれ!!絶対に ここは通さねぇ!!」
かっこつけた直後、目ン玉が飛び出るほど強烈な顔面パンチを食らうライナー
ミカサが生首エレンにキス
ミカサが生首エレンにキスする場面の意味合い
「サロメ」「赤と黒」のオマージュ?
愛なのか?
何年か前に(おそらく28巻ぐらいの段階)NHKの深読み読書会という番組で、進撃の巨人が取り上げられていました。
この作品は人間のあらゆる面を描いているけれど「愛」だけがまだ出てきていないと指摘されていたのを覚えています。
世間的にもこの手の話題が好きな人は多いようで、ミカサがエレンにキスして何かが起きる、みたいな話は以前からそこそこ見かけました。
個人的にこのような展開を予想していてどうこうではなく、事前にそういった情報が頭に入っていたので「ああ、そうなったのね」ぐらいで済んでしまいました。
がっかりしたわけでもないし、楽しんで読んでいるんですが、「まさかそうなるとは!」とは思わない、思えない感じです。最終回も近くなると、多くの人が同じような感想を抱くんじゃないでしょうか。
ただひとつ、137話の流れが続かなくて良かったなとは思いました。
期待
進撃の巨人はこれまで「仲間」「友情」「信頼」「相互理解」「自由」など、一般的に良しとされるものを徹底的にぶっ殺してきています。
殺すというか、一旦持ち上げておいて「いや、こういう見方もあるんじゃないですか?」というのを必ず出してきています。
巨大樹の森で仲間を信じて失敗したり、調査兵団との信頼が崩れたり、アルミンがエレンと共有している思っていた夢が実は食い違っていたり、自由の残酷さに打ちのめされそうになったり…。
今回の一斉巨人化&ミュラー長官の場面は笑ってしまいました。やっぱりかよと。
なので「愛」だけが例外とは思えません。
始祖ユミルと初代フリッツ王、ロッドとヒストリアあたりのエピソードで、既に下げるターンは終わったということなのでしょうか?
これまで描かれてこなかった男女の性愛的なものを終盤で強調し、そのままゴールまで惰性で駆け抜けるというのはちょっとないんじゃないかなと思ったりしています。
もっともっと序盤から描かれてきた「自由とは何かを考える」みたいなところを冷静に描いてくれるのでは、と期待しています。
かつて作者が自身のブログで「奴隷の幸福か、地獄の自由か」に触れたことがありました。これに照らし合わせると、屁理屈ですがハッピーエンドとは奴隷ってことであり、バッドエンドはこの選択肢にないということになると思います。
単行本、別冊マガジン掲載時の情報
タイトル | 第138話「長い夢」A Long Dream |
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公開 | 別冊少年マガジン:2021年4月号 発売日:2021年3月9日(火) |
コミックス | 発売日:2021年6月9日(水) |
サブタイトル「長い夢」の意味
ミカサとエレン、始祖ユミルが見ていた長い夢。
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