第123話「島の悪魔」

概要

ミカサの回想シーンからスタート。レベリオ襲撃前、調査兵団が初めて海を渡って外国に足を踏み入れたときの話。

時系列は、イェレナ達義勇兵の協力を得てパラディ島に港が完成しヒィズル国のキヨミ・アズマビと会談した後、かつエレンが単独でマーレに潜入する前。

この遠征でエルディア人(ユミルの民)が迫害を受けている現状を目の当たりにしたことがきっかけとなって、エレンは単独行動に踏み切ったの…という流れ。

そして、ついに始祖の力を開放した超巨大巨人の姿が現れる。

エレンの記憶の断片に登場する少年、エレンからミカサへの意味深な問いかけ、キヨミが語るユミルの民の世界での立ち位置といった重要な描写が登場する。

この回で張られていた伏線

エレンの涙

なぜエレンは泣いていた?

別の答え

ミカサが選択した別の答え

地鳴らしの進路

アルミンのセリフ「このままマーレにノコノコ集まってる連合軍を潰すつもりなんだよ!!」

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この回で回収された伏線

この力を支配しなくてはならない

伏線

お前はこの力を…支配しなくてはならない

3巻10話「左腕の行方」

回収

巨人の力はそんなに都合の良いものではなく支配される可能性もある。「ヤツら(巨人の力、巨人を利用とする人間)に支配されていた屈辱」に対して「巨人の力を支配」という意味で使われている?エレンが巨人の力を支配した結果、地鳴らしが起きてしまうが…

悪魔か救世主か

伏線

破滅に導く悪魔、希望へと導く救世主か。エレンに対する人類の評価

5巻19話「まだ目を見れない」

回収

立場によって見え方が変わる話がこの後何度も出てくる。何だかんだでエレンは最終的には救世主だろうと思わせておいて、実は違うのかも…

アルミンの地鳴らし予言

伏線

アルミンのセリフ「そろそろ散歩でもし出すと思うな…一斉に」

8巻34話「戦士は踊る」

回収

本当に散歩し出してしまう。

「叫び」の影響

伏線

エルヴィンのセリフ『その「叫び」の影響を受けるのは巨人に限ることではないかもしれない』

14巻55話「痛み」

回収

ユミルの民は、たとえ知性巨人を身に宿していなくても、あるいは無垢の巨人になっていなくても始祖の巨人の力の影響を受ける。明確な描写は123話のエレンの放送。

おおおおぉおお

伏線

グリシャが「なぜなら俺は始祖ユミルを信じている!!」と意味不明な言葉を発し復権派のメンバーが盛り上がって雄叫びを上げる

21巻86話「あの日」

回収

「地鳴らし」の効果音がオオオオオオオオなのは偶然だろうか。人類の怒りが体現されてはいないだろうか。

向こうにいる敵全部殺せば

伏線

エレンのセリフ「向こうにいる敵…全部殺せば…オレ達自由になれるのか?」

22巻90話「壁の向こう側へ」

回収

エレンが「全地鳴らし」をするつもりである(そういう選択肢が彼の中にある)ことを示唆

エルディア人の人権擁護団体

伏線

ハンジのセリフ「エルディア人の人権擁護する団体はあるにはある」

27巻108話「正論」

回収

調査兵団はマーレに上陸し国際討論会でユミルの民保護団体の発表を聞いた。しかし彼らの主張は「パラディ島以外のユミルの民」の保護を訴えるものであった。

アルミンの悪い予感

伏線

アルミンがミカサに「なぜエレンは自分たちを突き放すのか」と聞かれて、頭をよぎった海でのエレンのコマ。

29巻118話「騙し討ち」

回収

エレンがやろうとしているのは全力の地鳴らし。仲間を巻き込みたくなかったから突き放したと考えられる。

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ミカサがフリッツ王家の血を引く可能性

キヨミのセリフ「世界の国々でユミルの民の血」を取り込むことが高貴である証とされていました」

考察

ヒィズルもやっていた、やろうとしていたからこそ出るセリフと考えられる。107話の「将軍家はフリッツ家と懇意にしておりパラディ島に逗留、その後取り残された」という話と合わせると可能性は0ではない。

…まだ何も

エレンのセリフ「…まだ何も」

考察

このときはエレンはまだラムジーを助けておらず(実際に助けるのは単独行動を始めてから)、未来の記憶(ラムジーを助ける半端なクソ野郎エピソード)を見るあるいは、それを想定して泣いていた、と考えることもできる。そう解釈したほうがエレンとミカサの会話の意味が通りやすくスムーズではある。とはいえ、ラムジーを助ける→宴会というパターンのほうがシンプル。

別の答えとは?

ミカサが選択できたであろう別の答えとは?

考察

エレンと駆け落ちして亡命、パラディ島を捨てる。それ以外は全て中途半端で結局同じことになりそう。

エレンは味方だ

アルミンのセリフ「エレンは味方だ!!そうに決まってる!!」

考察

おそらくアルミンはエレンが味方ではないことに気がついている。まるで自分に言い聞かせているかのよう…。

過去回と重ねられている描写

スリの少年と始祖ユミル

街の人に囲まれるラムジー

内容

奴隷に囲まれて指をさされる始祖ユミル

30巻122話「二千年前の君から」

小ネタ・擬音

オレの名はエレン・イェーガー

小ネタ

始祖エレンのラジオ放送「オレの名はエレン・イェーガー」

内容

始祖を掌握しても尚、「そういう時期」は終わらない。

所感・考察

エレンの記憶に登場するスリの少年

オニャンコポンが案内役となりキヨミの邸宅に向かう途中、マーレの港街を見物する調査兵団一行。

ハンジは自動車に、コニーやサシャは見たことのない食べ物に大騒ぎしており、ミカサまでもアイスクリームに興奮する始末。リヴァイが子供に間違われるなど、ギャグ的ほんわかムード漂う中、エレンだけは記憶である程度のことを知っているので1人シリアスな雰囲気。

ここにスリの少年が登場しサシャの財布を盗み、リヴァイに締め上げられます。

群衆は少年が異民族であることから「ユミルの民」ではないかと疑いをかけ、海に放り投げよう、腕を折ってしまおう、吊るし上げようなどと残虐な方法で懲らしめようと相談を始めてしまいます。

被害者であるサシャが群衆を止めようとしてもまったく聞く耳を持たず、見かねたリヴァイが少年を担いでその場から離れます。

少年は助けてもらったにも拘わらず、今度はリヴァイから財布を盗んで逃走。その様子をエレンはじっと見つめていました。

エレンの涙と少年の境遇

少年は難民でした。戦争で居場所を失い、家族のためにスリをしていたのだろうと思われます。

捕まればリンチされ殺されるかもしれない相手に盗みをはたらかなければならないほど貧しく、追い詰められた生活を送っているのです。

エレンは少年と自分を重ね合わせています。ある日突然、訳も分からず日常が終わって何もかもが、すべての自由が奪われたのは少年も同じだからです。

その中で少年はもがいて生きています。港町の市場ではスリをして怖い目に遭いましたが、難民キャンプで家族と一緒にいるときは幸せで穏やかな笑顔でいるわけです。

ささやかな幸せに見えるかもしれませんが、少年にとってかけがえのないものであり、それを守るためなら危険を顧みず行動する、エレンも同じようなもんです。

何のために戦っているの?

エレンは「他人から自由を奪われるくらいならオレはそいつから自由を奪う」という考え方です。

エレンは、パラディ島の自由を奪うマーレや世界の国々から自由を奪い返そうとしています。

地鳴らしとスリではスケールは違いますが、やっていることの動機としてはスリの少年と同じです。

この少年との出会いによってエレンは地鳴らしまで続く一連の行動に踏み切る決心がついたのでしょう。

彼らのような境遇にある人たちを救いたい、という気持ちもあったかもしれませんが、それよりも「オレもあの少年と同じだ。だから戦う」というほうが近い気がします。

エレンとミカサの会話「オレはお前の何だ?」の意味

非常に難しい場面で、2人なってからのやり取りだけだと意味不明です。難民キャンプの前での会話だという点にヒントがあるように思います。

スリの少年にとっての家族のように、エレンにとってもミカサは自分が危険を犯してでも守るべき存在であることの確認、という感じではないでしょうか。

ミカサの気持ちをミカサに聞いているのではなく、エレンが自分の気持ちをミカサに確認しているような。「そうだよね?いいんだよね?」と。

アルミン、ジャン、コニー、サシャも同様に大切な存在なのですが、最も家族に近いミカサだからこそ成立する会話であると思います。

誰のために戦うの?

人種差別、偏見、黙っていたら向こうから攻めてきてしまう今の状況下において、エレンが世界平和を掲げて戦うのは難しいことです。

世界平和のためではない。じゃあなんのため?身近にいる大切な人のために戦うのです。自分が動かなければみんなが殺されてしまうから。

そんな自分の気持ちの確認にはやはりミカサが相手でなければいけなかったのです。

それから、最終的にミカサがなんと答えようとあまりエレンの行動に影響はなかったと思います。

この一連の会話は難しいですね。いつか答え合わせができると嬉しいです。

平和の道を探ることは諦めていない

当然、エレンも「話し合いによる解決」の道を最初から諦めていたわけではなく、みんなの調査についてきて確認しようとしています。

でも、「ユミルの民保護団体」の話を聞きき、絶望して単独行動に乗り出したのでしょう。

世界の人々の「ユミルの民」に対する認識

キヨミ・アズマビトのセリフから

  • 血液検査の技術向上に伴い、世界中で収容から逃れたユミルの民の存在が発覚し問題となっている。
  • かつてのエルディア帝国全盛時代は、世界の国々でユミルの民の血を取り込むことが高貴である証だった。
  • エルディア帝国衰退と共にエルディアに追従した各国上流層が国を追われる立場と成り果てた。

キヨミはスリの少年との話を聞いて、「確かに今、ユミルの民は問題になってる」と口にします。ユミルの民に対する人種差別が加速しているような状況です。

エルディア帝国がマーレや諸外国に行ったとされるの民族浄化というのは、実はむしろ各国の上流層がこぞってエルディアとお近づきになろうと婚姻関係を結んでいったような流れだったのでしょう。

またこの頃のマーレは巨人を数体失って徐々に武力が落ちてきて諸外国に狙われて戦争を起こしている時期です。23巻冒頭で集結した中東連合との戦争真っ最中でもあります。

そんな中、国境周辺は戦争難民で溢れかえるのは普通の流れ。マーレの人達からすると、難民が多数流入してくるのは嬉しくないし、ましてやそれがユミルの民だったりしたら怒り心頭です。

この状況下では、パラディ島から友好を図る計画も極めて困難ということになります。

アルミンのセリフ

かと言って…和平の道を諦めるなら…ジークの謀略に加担するしかなくなります。

彼に我々の運命を委ね、ヒストリアと産まれてくるであろう子供たちを犠牲にするしか…

ヒストリアとその子供は犠牲になるし、何かに付けてジークの思惑通りになってしまう。それは何としても避けたい。実際、ジークが考えていたのは安楽死計画でしたし。

ユミルの民の保護団体による「島の悪魔」発言

頼みの綱の「ユミルの民の保護団体」の声明の内容は、エルディア人難民への援助を求めるものでした。

彼らがエルディア人との混血という理由で差別されるのは不当である。なぜなら危険思想とは無縁なのだから。憎むべきなのはパラディ島に逃げたエルディア人、島の悪魔である。

ユミルの民の難民保護団体だったというオチです。

もう味方なんて島の外にはどこにもいない、やるしかない。ということでエレンは消えます。

壁の崩壊

ミカサの回想シーンが終わって、シガンシナ区へ。

50m級の壁の中の巨人の倍以上はある恐竜みたいな始祖の巨人。大迫力です。

アルミンは「エレンが始祖を掌握した!!」と絶叫しています。

ジークが始祖を掌握したなら安楽死計画ですから、地鳴らし発動=エレンというのは正しいような気がしますが、これって始祖ユミルの判断ですよね?どうなんでしょうか。

続いて「エレンは味方だ!!そうに決まっている!!」と言いますが、そうではありませんでした。

当初の予定ではシガンシナ区の壁だけが崩壊するはずが、ウォール・マリアまでぶっ壊れています。そして、ウォール・マリアどころか全ての壁が崩壊して巨人たちが大行進を始めてしまいました。

その後のエレンの声が道を通じてユミルの民へメッセージが発信されます。

最後のエレンのアップは鬼のような妖怪のような化け物。これまでの進撃の巨人にはなかったタッチで非常に迫力があります。

エレンの心境

未だエレンの思惑は謎が多いのですが、参考になりそうな描写はそれなりに出てきていると思います。

マーレに潜入してレベリオ襲撃~地鳴らし発動までのエレンの心境や行動に至るきっかけのようなものは、なんとなくつかめるような気がしないでもない。

少なくともレベリオ襲撃がそれなりに「仕方なかった」という感じには思えてくるのではないでしょうか。

単行本、別冊マガジン掲載時の情報

タイトル

第123話「島の悪魔」

Island Devils
公開
別冊少年マガジン:2019年12月号
発売日:2019年11月9日()
コミックス
発売日:2020年4月9日()

サブタイトル「島の悪魔」の意味

パラディ島の悪魔、およびエレン。

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