第112話「無知」
概要
ジークは嘘をついていた。エルディア人が脊髄液入ワインを「飲んだ直後に硬直する」というのはデタラメだった。しかし、皆この話を信じていた。
脊髄液入ワインは第1回調査船からパラディ島に運び込まれており、イェレナの指示で兵団組織高官に優先して振る舞われていたが、硬直化の症状など見られなかっため、これまで誰も疑うことはなかった。
一度ワインを飲んでしまったのであれば、ワインによる巨人化が嘘でも本当でも、ジークやイェレナが兵団幹部らをコントロールするには十分過ぎる効果を発揮する。
ニコロのレストランにエレンとフロック率いるイェーガー派のメンバーが現れた。場所を教えたのはレストランで働くマーレ人グリーズ。イェーガー派の目的はハンジにジークの居場所まで道案内をさせること。
フロックはもはや兵団と交渉する気はない様子。そしてフロックはワインのことを知っていた。つまりジーク・イェレナ・イェーガー派の三者はかなり前から結託して動いていたことになる。
そして、期せずしてアルミンとミカサは、エレンと「話し合い」の機会を手にした。エレンはガビを同席させ、自らの手に傷をつけたまま話を進める。
アルミンはエレンの意志を確認したい。しかし、エレンは2人を一方的に突き放すような言葉を繰り返す。アルミンはベルトルトに頭の一部を乗っ取られてまともな判断ができなくなっていると言い、ミカサはアッカーマンの血統のせいでエレンの命令に従うしか能のない奴隷であり、そんなお前がずっと嫌いだったと言い放つ。
キレたアルミンはエレンに殴りかかるが、逆にボコボコにされてしまう。結局まともに会話することは出来ず、エレン達はシガンシナ区へ移動を始めた。
一方、ジークが拘束されている巨大樹の森に伝令が到着。ピクシス司令の狙いはエレンを殺害して巨人を別な人間に移すことだった。しかし、リヴァイは拒否。それならばエレンではなくジークの「獣」を他の人間に移し、最終的にヒストリアに継承させるべきという考え。
ジークはこうなることを予測していたのか、リヴァイたちの会話が聞こえていたのか、おもむろに走り出して雄叫びをあげる。彼を見張る30人の調査兵が一斉に巨人化。リヴァイ大ピンチ…。
この回で張られていた伏線
自由意思
エレンのセリフ「それはオレの自由意思が選択したものだ」
頭ベルトルト
エレン曰くアルミンの頭の一部はベルトルトになってしまっている。
お前がずっと嫌いだった
エレンのセリフ「オレは…ガキの頃からずっと ミカサ お前がずっと嫌いだった」
エレンの不可解な行動
なぜエレンはミカサとアルミンを突き放すようなことをした?
レベリオ襲撃から1ヶ月
ジークにワインはもう残ってないのか?と聞かれたリヴァイのセリフ「一月(ひとつき)もここにいるんだぞ」から、レベリオ襲撃から1ヶ月経ったことがわかる。なぜこのタイミングでジークが動き出した?
リヴァイはワインを飲んでいたけどアッカーマンだから巨人化しなかった?
ジークの叫びでリヴァイは「ビビ」っと感じている。
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この回で回収された伏線
アルミン…そりゃ一体…何のマネだ?
樽から出てきたベルトルトに交渉を持ちかけるアルミンに対するエレンのセリフ「アルミン…そりゃ一体…何のマネだ?」
19巻78話「光臨」
エレンは少なくともこの頃からアルミンの「話し合いスタイル」に賛同しておらず、112話の4者会談で「クソの役にも立たない」と批判する。巨人継承のこと(頭ベルトルト)は関係ないとは言い切れないが、アルミンにダメージを与えるために盛ったと考えられる。
マーレ産のワイン
ナイルやローグが食事していた際に飲んでいたマーレ産のワイン
27巻108話「正論」
実はジークの脊髄液入りであり、これを摂取した者はジークの叫びで無垢の巨人となってしまう。
うまい嘘のつき方
うまい嘘のつき方とは、時折事実を織り交ぜて喋ること。by ピクシス
27巻110話「偽り者」
同110話の冒頭、ジークの脊髄液の話がそれだった。だいたい事実だが、脊髄液を飲んだ時点でエルディア人は「硬直」する、の部分が嘘。
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謎
オレは自由だ
エレンのセリフ「オレは自由だ」
不自由だと自覚しているからこそ?
手はテーブルの上に置けと言っただろ
立ち上がって喋るミカサに対してエレンが「手はテーブルの上に置けと言っただろ」と言う。
言ってない(描かれていないだけで言っていたのかもしれないが)。エレンはこのときミカサとアルミンを突き放そうと必死で少し混乱している。
アッカーマンの特性
エレンが語るアッカーマンの特性(エレン曰くジークに教えてもらった)。
ジークは頭痛と宿主を否定している。とはいえこの話がエレンの思いつきだったとしても、全てが完全に嘘だと断言できるわけではなく、一部本当のことが含まれている可能性は高い。結局、ほとんど全てが謎のまま。
ミカサの頭痛⑨
エレンにアッカーマンの特性として突発性の頭痛があることを説明されたとき、人攫い殺害シーンを思い出しつつ頭痛発症
PTSD? ミカサがエレンのことをよくわかっていない、都合よく解釈していることを示唆?
なぜミカサはアルミンを組み伏せた?
エレンに殴りかかろうとしたアルミンをミカサは咄嗟に組み伏せた。
エレンの言う通り、宿主を守るアッカーマンの習性? or 喧嘩したら絶対負けるであろうアルミンを止めることで守った? or カヤからガビを守ったように、ただ単に危険な目に遭いそうな人を見て体が勝手に動いた?
クソ野郎に屈した奴隷
クソ野郎は誰?
エレンの様子を見るに「奴隷」であることは図星だった模様。しかしクソ野郎が誰なのか不明なので結局よくわからない。ジーク?自分自身?進撃の巨人?
木の上をチラ見するジーク
木の上をチラ見するジーク
ジークにはリヴァイたちの会話が聞こえているように見えなくもない。ワインを飲んだ人間はジークと道で繋がってしまったから?
小ネタ・擬音
チャカ
チャカ → チャカ。銃
フロックが銃のスライドを引いた音。チャカの擬音がチャカ…
ペタス
ペタス → ニコラス・ペタス Nicholas Pettas デンマークの空手家、キックボクサー、俳優。
エレンに注意されたミカサが手をテーブルの上に置く音。
ゴ トオオサアン
ゴ トオオサアン → 後藤さん or ゴッ 父さん or 後藤散
アルミンがエレンを殴る音、およびそれに付随して倒れたテーブルや椅子の音。「巨人の星」のちゃぶ台返しのオマージュ?もしそうなら、アルミンがエレンの嘘を見抜いていたことの伏線になる(飛雄馬は嘘をつき一徹に殴られた)。後藤散(大分県臼杵市のうすき製薬株式会社の薬)
始まりの地 シガンシナ区へ
エレンのセリフ「始まりの地 シガンシナ区へ」
エレンの「そういう時期」は続いている
単行本、別冊マガジン掲載時の情報
タイトル | 第112話「無知」Ignorance |
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公開 | 別冊少年マガジン:2019年1月号 発売日:2018年12月7日(金) |
コミックス | 発売日:2019年4月9日(火) |
サブタイトル「無知」の意味
エレンから見たミカサとアルミン。イェレナが仕掛けたジークの脊髄液入りワインのことをはじめ、自分たちの置かれている状況を理解していなかった兵団。エレンは「無知ほど自由とかけ離れているものはない」と言うがむしろ逆で「無知こそ自由」だったりもするという皮肉。