第99話「疾しき影」
概要
レベリオ収容区の祭事。ヴィリー・タイバーの演説を目前に控え、ファルコはライナーをある建物の地下室へ連れて行った。そこで待っていたのはエレンだった。
状況が飲み込めず呆然として動けないライナー。対照的に落ち着いた様子で余裕のエレン。戸惑うファルコ。
ウドを助けたヒィズル国の女性は演説前のヴィリーの元を訪れ激励。意味深な言葉を残して去っていく。
世界各国の大使や名家が注目する中、ついに幕が上がり始まったヴィリーの演説で人類の歴史、巨人大戦の真実が明らかになる。
エレンはライナーに何を伝えようとしているのか。
この回で張られていた伏線
あなた方は勇敢です
あなた方は勇敢です。我々の一族はよく知っていますもの
逆方向に歩くキヨミ
さて行きましょうかと言い、会場から去るキヨミたち。
顎髭の兵士
戦士隊を呼びに来た兵士。目がわからないように描かれている。
ジークだけ別
顎髭の兵士に連れられた戦士隊。ジークだけが別な場所へ誘導される。
パンツァー隊に抱きつくピーク
ピークがパンツァー隊のメンバーの1人に抱きつく
なぜファルコを同席させた
なぜエレンはファルコを同席させたの?
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この回で回収された伏線
腕章が逆の男
ファルコが助けた腕章が逆の男
23巻94話「壁の中の少年」
エレン
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謎
「名誉」
アニの父のセリフ『いただいた「名誉」』
アニの父は「名誉」と思っていない。ライナーの母カリナとは違う考えであることがわかる。マーレに対して何か思うところがありそう。
へーロスの謎
へーロスは実在した?
不明。タイバー家の作り話の可能性もある。最終決戦が巨人大戦の対比なら、Helos(へーロス) → Heroes(ヒーローズ) → アルミンたちのこと?
小ネタ・擬音
ダッキ
ダッキ → 妲己(だっき) 殷王朝末期(紀元前11世紀頃)の帝辛(紂王)の妃。
ピークちゃんがパンツァー隊の1人に抱きつくときの音。彼らにとってピークちゃんは姫的な存在である。
疾しき影
タイトルは疾しき(やましき)影。冒頭、ライナーたちのパラディ島潜入の回想シーン。訓練兵時代、夜にこっそり3人で会議をしていたときのこと。
ベルトルトは開拓地で首を吊ったおじさんの夢を何回も見るという。彼は「なぜあのおじさんは自分たちに子供を見捨てて逃げたことを話したのか」が気になっていた。
ライナーはそんなのわかるわけないと軽くあしらう。アニは誰かに許してほしかったんだろうが、自分たちマルセルを置いて逃げたから、おじさんは打ち明ける相手を間違えたなと自虐。
誰かに裁いてほしかったんじゃないか。ベルトルトはそう思えて仕方がない。
ライナーは当時、考えたくなかったのか、本心だったのか、罪を打ち明けたおじさんの気持ちを「そんなのわかるわけない」と軽く流していました。
しかし今、エレンを目の前にして、おじさんの気持ちがよくわかったんじゃないでしょうか。
そして、疾しき影に悩まされている人物はライナー以外にもいるはずで、ヴィリー・タイバーもおそらくその1人なんではないでしょうか。
エレンとライナーの会話
エレンはどうやってマーレに潜入したのか
なぜ今ここにエレンがいるのか。状況を飲み込めないライナーは呆然として動けなくなっています。
ライナーが言うように、ありえない、です。
ライナーはパラディ島に潜入したから、彼らが船や飛行機を持っていないことはわかっています。
だから、どうやってここに来た?という質問もエレンが移動手段を答えてボケるためのフリじゃない。本気で疑問に思っていてもおかしくないんです。
巨人になって泳いできたとか、マーレが送り込んだ行方不明の調査船を使ったとか、決して不可能ではないもののどれも現実的じゃありません。途中で見つかるに決まっています。
まあ、移動手段は今後明らかになるはずなので、今はあまり深い追いする必要はないでしょう。
エレンの目的は?
わざわざファルコを使って誘導した場所は一般人が住むアパートの地下。
ライナーの動きを封じつつ、自分は手に傷を作りいつでも巨人化して仕掛けられますよ、という態勢。ただ昔話をしに来たわけではないことは明らかです。
とはいえ、何かしら伝えたいことがある様子。そして、それは同席させたファルコにも聞いてほしいこと。
やけに落ち着いた態度と淡々とした口調が不気味です。シガンシナ区の決戦から4年、海を見てから3年が経っていますから、エレンには何かしら変化があったということでしょう。
あるいは、マーレ編に突入して物語の視点・主人公が変わり、これからエレンは悪者として描かれるということでしょうか。
「仕方なかった」ってやつだ
エレンは何をしにここにやって来たのでしょうか。
エレン曰く、それはライナーと同じ「仕方なかった」ってやつです。
ライナーは当時、壁内の本当の状況を何も知らずに攻め込みました。マーレに洗脳教育された正義を信じて。
いざ潜入してみたら壁の中の人間は悪魔なんかじゃなかった。しかしもう手遅れ、後の祭り、仕方なかった訳です。
それと同じだとエレンは言いたいのでしょう。
冷静ではいられないライナー
ライナーはマーレとパラディの板挟みになり、自殺を試みるほど精神を消耗しています。
ファルコやガビらに癒やされて多少持ち直してはいるものの、ライナーの精神を蝕む諸悪の根源であるエレンに会ったことで、また一気に苦しくなってしまいました。
ヒィズル国のアズマビト家の女性キヨミ
ウドを助けたヒィズル国の女性はアズマビト家と呼ばれるの一族のようです。名はキヨミ。
キヨミは演説の前にヴィリーの元を訪れ意味深な言葉をかけて去っていきます。
「あなた方は勇敢です。我々の一族はよく知っていますもの」
嘘くさい作り笑顔、鋭い目つきをして演説も聞かずそそくさ帰ってしまった様子を見ると、とても言葉通りの意味には聞こえません。
ウドを助けたのでエルディア人贔屓であることは間違いないでしょう。そして、ヴィリーに対して裏がありそうな態度を取るということは?
これだけでは誰の味方なのか、はっきりわかりません。マーレでもないパラディ島でもない、第三の勢力として描かれる可能性もあるでしょう。
アニ父とライナー母
アニの父が登場しました。相変わらず盲目的な発言を繰り返すライナーの母カリナとはちょっと趣が異なるようです。
わざわざ「アニは生きてる」って言わせているので、今後アニが登場するんでしょうね。
あっさりと会話で済まされてしまいましたが、ベルトルトの家族(父か母かも不明)は最近亡くなってしまったようです。
作品のメインビジュアルを務める超大型巨人を継承した一家としてはあまりにも寂しい終幕…。
マーレの巨人戦士たちを呼びに来た兵士は誰?
演説開始直前、マーレの巨人戦士たちを呼びに来た兵士。怪しいですね。ヘルメットを深く被り、顔が確認できません。
ピークは兵士のことを怪しんで所属を問いますが、そっけない態度で返されます。
そして、連れて行かれた部屋には落とし穴。落ちていった声の表現から、相当深いようです。やっぱり兵士は敵でした(マーレ側から見て)。
こうなると、素直に言うことを聞いていたジークが不自然に見えますし、別行動させられた理由も気になります。
なぜ巨人戦士たちは戦闘態勢ではなかったのか
マーレ軍の兵士たちは祭事会場の警備をしています。マガト隊長の様子を見ると、敵をかなり警戒しているようです。
なぜこのときジーク達も一緒に行動していないのでしょうか??
客席で待機して万が一のときは出動、という形なのかもしれませんが、あの怪しい兵士にほいほいついて行ってあっさり捕まるってちょっと間抜け過ぎな気がします。
マガト隊長は敵が潜入しているという情報を掴んでいる訳ですから、彼らにもそれなりの準備をさせると思うのですが。
ヴィリー・タイバーの演説内容
前半はマーレで語られている、巨人大戦が起きてから現在までの歴史
今から100年前、エルディア帝国は巨人の力で世界を支配していた。巨人によって現生人類の3倍もの数の人が殺され、民族の文化や歴史も奪われた。
敵のいなくなったエルディア帝国は同族同士で争いを始める。8つの巨人を持つ家が結託や裏切りを繰り返し争った。
※「9つの巨人」を持つ家のうち始祖以外の8つの家同士が争ったという意味でしょう。
そこに勝機を見出したマーレ人へーロスは情報操作で8つの巨人を持つ家を同士討ちにさせ、彼らを弱らせていった。
そして、8つの家の1つであるタイバー家と手を組み、フリッツ王をパラディ島に退かせた。
しかし、パラディ島に退いたフリッツ王は今でも力を持っており、世界を踏み潰せるだけの幾千万もの巨人が控え、いつ攻めてきてもおかしくない。
今まで静かだったのは、あくまでも偶然。たまたまフリッツが攻めてこなかっただけ。脅威であることに変わりはない。
その証拠に、マーレは4人の巨人を送り込んだのに返り討ちにあって鎧の巨人だけが帰還、その後に送り込んだ調査船32隻は行方不明である。
島の悪魔エルディア人は未だ健在、我々にとって脅威の存在。だから排除されて当然。
これがマーレや他の国が信じている歴史です。
だからエルディア人は世界から嫌われており、へーロスは世界を救った英雄ということになっています。
そしてライナー達は世界を救おうとしてパラディ島へ攻め込みました。
しかし、実は違った。ここから先が初めて世界に公表される歴史の真実。
奔放初公開 巨人大戦終結の真実
実は巨人大戦を終わらせて世界を救ったのは、へーロスでもない、タイバー家でもない。
145代目フリッツ王である。
彼は_「始祖の巨人」を継承する以前から_エルディア帝国の残虐な歴史を嘆いていた。
同族同士の醜い争いに疲れ果て、何より虐げられたマ-レに心を痛めていた。
フリッツ王は「始祖の巨人」を継承すると同時にタイバー家と結託。エルディア帝国の歴史に自ら終止符を打つべく_その身を捧げた_。
フリッツ王はタイバー家と画策し、マーレ人のへーロスを英雄と称して活躍させる。計画通りエルディアは同士討ちに倒れていった。
フリッツ王は自らと出来る限りのエルディア国民を島に移し、壁の門を閉ざした。
安息を脅かせば巨人の力で報復すると言い残したがそれは真意ではない。
145代目カール・フリッツの真意
フリッツ王は、自らの思想を継承者に引き継がせるため「不戦の契り」を生み出した。
すべての巨人を操る絶対的な力「始祖の巨人」を行使できるのは王家の血筋のみ。
「不戦の契り」は、その王家の血筋の継承者のみ効力を発揮する。
このおかげで、今日までパラディ島から巨人が攻めてくることはなかった。
世界の平和を守っていたのはカール・フリッツの平和を願う心だった
フリッツ王の目的は平和、_虐げられたマーレの解放_であった。
後にマーレが力をつけて王家の命や「始祖の巨人」を奪おうとするのなら、もしマーレがエルディア人の殲滅を願うのであれば、それを受け入れる。
それほどまでにエルディア人の犯した罪は重く、決して罪を償うことはできない。
そもそもエルディア人は、巨人は存在してはいけなかった。我々は間違いを正すことを受け入れる。
ただし、いずれ報復を受けるまでの間、壁の中の世界に争いのない束の間の楽園を享受したい。どうかそれだけは許してほしい。
世界の人々の疑問
聴衆が驚くのも無理もありません。
ヴィリー・タイバーの演説の内容が本当なら、タイバー家とマーレ人へーロスが世界を救ったという話はすべて嘘。あくまでもフリッツ王の作戦に乗っかってただけということになります。
さらに、本当に「壁の王」が世界を侵略することはないと言うのなら、_今まで信じられていたパラディ島脅威論_も無駄な心配だったということになります。
しかも、それを公表しているのが張本人のタイバー家当主。
なぜ、そんな話を今ここでタイバー家がしなくてはならないのでしょうか??
そんな聴衆の反応をひとしきり確かめた後、ヴィリー・タイバーは続けます。
しかし近年、パラディ島内で反乱が起きてフリッツ王の平和思想は淘汰された。
平和を願うフリッツ王から「始祖の巨人」を奪った反逆者がいる。
そいつのせいで世界に再び危機が迫っている。
反逆者の名はエレン・イェーガー。
単行本、別冊マガジン掲載時の情報
タイトル | 第99話「疾しき影」Guilty Shadow |
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公開 | 別冊少年マガジン:2017年12月号 発売日:2017年11月9日(木) |
コミックス | 発売日:2018年4月9日(月) |
サブタイトル「疾しき影」の意味
疾しい気持ちがあり誰かに裁かれたい開拓地のおじさん、ライナー。ヴィリーの演説の演出に登場する偽りの歴史を表現する影絵