第96話「希望の扉」

概要

パラディ島へ潜入し「始祖奪還計画」を開始した4名のマーレの戦士たち。出発早々にユミルに襲われマルセルを失ってしまう。指揮官なしに作戦は成立し得ないと仲間割れを起こし崩壊寸前となるが、意を決して強行突破へ踏み切る。

ライナーたちの歩みもついに第1話のウォール・マリア突破へ。エレンたちの故郷シガンシナ区の街を絶望と混乱に陥れたあのとき、彼らは何を思っていたのか。

この回で張られていた伏線

ダイナ巨人がベルトルトをスルー

なぜダイナ巨人はベルトルトを見逃したのか?

全話 伏線一覧へ↩

この回で回収された伏線

大量の巨人

伏線

なぜ大量の巨人が壁の中に侵入してきたのか?

1巻2話「その日」

回収

女型の巨人が事前に呼び寄せていたから

ライナーたちの故郷

伏線

ライナーとベルトルトの故郷は、彼ら曰くウォール・マリア南東の山奥の村だと言うが…

4巻16話「必要」

回収

これは嘘。実際はマーレのレベリオ収容区。ウォール・マリア南東の山奥の村は、彼らが壁内に潜入して開拓時代に出会ったおじさんの出身地。

ベルトルトの巨人遭遇エピソード

伏線

ベルトルトが話した巨人遭遇エピソードの真実

4巻16話「必要」

回収

開拓時代に出会ったおじさんのエピソードを流用していた。記憶力抜群&演技派なベルトルト。

故郷への思い

伏線

ライナーとベルトルトが故郷に帰ることに拘る理由

4巻16話「必要」

回収

ライナーたちは絶対に任務を成功させなければならない。成果なしで故郷に帰れば巨人を剥奪されて死んでしまう。

ごめんなさい

伏線

アニのごめんなさい

4巻18話「今、何をすべきか」

回収

マルコはじめ、自分たちのせいで犠牲になった兵士に対しての謝罪と思われる。アニはマーレに服従していないことを示唆している。131話のエレンと重ねている?

自分が助かりたいだけ

伏線

アニのセリフ。憲兵団を志願する理由をアルミンに聞かれて

5巻21話「開門」

回収

始祖奪還計画の失敗は巨人剥奪、つまり死を意味する。壁内の情報収集のためには中央政府に近い憲兵団に入る必要があった。

女型の巨人の叫び

伏線

女型の巨人は近くにいる無垢の巨人を呼び寄せることが出来る

7巻27話「エルヴィン・スミス」

回収

ウォール・マリア破壊のとき、大量の巨人が街に侵入してきたのは事前に女型が呼び寄せていたから。

アニの長話

伏線

アニが「普通の人間」について自分の思いを長々と話す。

8巻31話「微笑み」

回収

マーレ軍の任務を遂行することに迷いがあるアニの心情を示唆。

コニーを庇うライナー

伏線

なぜライナーはコニーを庇った?回想のコマ

10巻39話「兵士」

回収

ライナーは自分を庇って死んだマルセルの代わりになると誓い、ここまでベルトルトとアニを引っ張ってきた。そんなライナーにとって命を賭けて仲間を救うのは当然のこと。

一番持っちゃいけねえ

伏線

ライナーはなぜエレンが座標を持っちゃいけねぇのと思うのか

12巻50話「叫び」

回収

ライナーは「不戦の契り」のことを大体知っているが詳細は知らない。「始祖の持ち主がその気になれば破られるかもしれない」ぐらいに思っている。また「王家の血筋」が始祖の力を発揮する上で重要な鍵を握ることまでは知らない。つまり座標の力がどうやって発動されるかあまりよくわかっていない。そのため、エレンのように凶暴で攻撃的なやつが始祖の巨人を持てば割と簡単に地鳴らしが起きてしまうのでは、と考えている。結果的に「エレンが始祖を持っちゃいけない」というライナーの読み自体は当たっている。

レイス家による人類の記憶の改竄

伏線

ピクシスのセリフ「レイス家は人類の記憶を都合よく改竄できるというわけじゃ」「しかも奴らを含む一部の血族はそれに影響されないといった口振りじゃったぞ」

16巻63話「鎖」

回収

「人類」は一般ユミルの民のこと、「一部の血族」は他人種系エルディア人、アッカーマン(特殊なユミルの民)、東洋の一族のこと。始祖の巨人の力の影響は一般ユミルの民に限定される。

壁内貴族の血統

伏線

壁内貴族の人種は?

16巻63話「鎖」

回収

アニのセリフ。『おそらく「ユミルの民」じゃない。100年前にフリッツ(カール・フリッツ。後のレイス家)に媚びた他人種系エルディア人が壁の中央を仕切ってる』←開拓時代、アニが調査してわかったこと

全話 伏線一覧へ↩

過去回と重ねられている描写

何もわかってないんだ

ライナーのセリフ

内容

何も知らないままでは終われない。エレン、ライナー、ガビ、リヴァイなどと一緒

?巻?話「」

小ネタ・擬音

ビッグ

擬音

ビッグ → Big

内容

「お前は超大型をすぐに使いこなしただろうが!」とライナーに怒鳴られてびっくりするベルトルト(超大型巨人の継承者)

どこそこ

擬音

ドコォソコォ → 何処其処

内容

アニがライナーの顔を蹴りまくっているときの音

無垢の巨人

小ネタ

無垢の巨人がゲーム・オブ・スローンズの面々

内容

女型の叫びに集まってきた無垢の巨人たち

所感・考察

マルセルが食われる。作戦開始早々に試練

パラディ島に上陸し侵攻を開始したライナーたちは、壁に向かう道中で無垢の巨人ユミルに遭遇しマルセルが捕食されます。

すぐにユミルを押さえれば顎の巨人を失わずに済んだものを、急な出来事に混乱したライナーが一目散に逃走、アニとベルトルトもつられてしまいました。

巨人の力を持っていながら、応戦するどころか逃げ出してしまったのは彼らがまだ経験の少ない子供だったからでしょうか。

作戦続行か撤退か大激論

安全な場所まで来てようやく正気を取り戻し始めたライナーは起きたことを回想し、このままでは自分も食われると絶望。追いついたアニ蹴りを食らってもまだ冷静さを保てずにいます。

アニは指揮官であるマルセルを失ってしまっては作戦続行は不可能と考え、引き返しながら顎の巨人を探すことを提案します。ベルトルトは無言のままアニの後を歩き始めました。

しかし、脳裏に母の顔が浮かんだライナーは2人を止め作戦続行を主張。

それに対してアニは、この失態の責任はライナーにあるため、このまま帰国すれば鎧の巨人を剥奪され次の戦士に食われるだろうが、私の知ったことではないと冷たい態度を取ります。

ライナー起死回生の大演説

追い込まれたライナーは現状を冷静に分析して反論。

なぜ粛清されるのが俺だけって言えるの?3人共逃げたんだから連帯責任でしょ?ねえ、俺間違ったこと言ってる?

「顎」の回収だって得策じゃないよ?だって「顎」の走力で逃げられたら俺達の巨人では捕まえられっこないだろ!?

ユミルはすぐに巨人の力を使いこなせないはずだから大丈夫?ベルトルトはすぐに超大型を使いこなしたじゃないの!!

下手に顎を追いかけて巨人の力を使い果たしたら?今度は逆に俺達が巨人に食われるんだよ!!

このまま失態を持ち帰ってみろ?全員無事ではいられませんよ?

じゃあどうするの?成果だよ、せ・い・か。「始祖の巨人」を持ち帰るしか、俺達が生き残る道はないんだ!これしか、ないんだ!!

アニの怒りが爆発

黙って聞いてりゃいい気になりやがって的なアニの反撃。

なぜその冷静さをユミルに襲われたときに発揮できないんでしょう。さっきその冷静を1/100でも発揮してくれれば顎の巨人もマルセルも失わずに済んだですけどね。

ああ、そうかそうか。保身のために人を脅す時じゃないと力を発揮できないわけですか。そうですか。完全に理解した。

アニは溜まりに溜まった鬱憤をぶちまけてライナーを蹴り続けます。

お前はさっき死ぬはずだったんだろ!?悪いと思ってんなら死ねよ!!罪を被って死ね!!

ライナーの決意。リーダーに生まれ変わる

とどめを刺したアニはライナーを置いてその場から立ち去ろうとしますが、ライナーが反撃のホールド。

そして、ライナーは死んだ。俺がマルセルの代わりになると宣言。仲間を見捨てて逃げ出す意気地なしの自分と決別し、仲間のためなら命も惜しまない頼れるリーダーに生まれ変わろうと決意しました。

これがライナーの人格障害の始まりなのでしょう。

そして涙を流して立ち尽くすベルトルト…。

ウォール・マリア破壊へ

互いの思いを吐き出し決意が固まった3人はいよいよウォール・マリアへの進撃を開始。

本来はマルセルと交代で進むはずだった道のりをアニの女型独りで走ることになり、負担激増。かといって移動に不向きな「鎧」や「超大型」を使って消耗すると壁の破壊が出来なくなるジレンマ。

しかも壁内の侵攻のために「女型」の力で無垢の巨人を大量に呼び寄せているため、ここで立ち止まると食われてしまう。非常にスリリングな状況です。

ちなみにこのシーンで登場する無垢の巨人たちはアメリカの大人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のキャラクター達がモチーフになっています。

アニの体力がもう限界かというところで、つにい壁が視界に入ってきました。走者は「鎧」にバトンタッチ。

ベルトルト一世一代の見せ場

予定を上回る大量の無垢の巨人が接近してくる中で、壁の大きさにビビりながらスタンバイするベルトルト。

彼は出発初日のキャンプでは壁内の人類を殺すことに躊躇する様子を見せていました。

任務は任務として受け止めていはいるものの、壁の破壊自体が困難と思われる上に、その先には素性がよくわかっていないけれどこれから自分が殺す人間たちがいる。この瞬間の緊張感は相当なものだったでしょう。

進撃の巨人の代名詞的存在の超大型巨人ですが、その正体が実は作中でも影が薄いベルトルトだと明らかになったときの衝撃は忘れられません。

そして今回、あの不気味な恐怖感を誘う第1話のあのシーンの直前、ベルトルトがガッタガタに震えていたなんて思うと胸が締め付けられます。

巨人化して感情を殺したような目で壁の中を見下ろすベルトルト。群衆の中にエレン、アルミン、ミカサの3人の姿を捕らえたとき、一瞬目を見開きました。このときの心情たるや。

そこから覚悟を決めて右足を振り抜くまではほんの一瞬。迷っても、残念でも、不本意でも、やるしかない、進むしかない。何が正解かなんてわからないのですから。

ダイナはベルトルトをスルーして壁の中へ

ベルトルトが外門の扉を破壊した直後、追いかけてきた無垢の巨人の群れがライナーに襲いかかります。懸命に振り払っているうちに、後にエレンの母を食うダイナ巨人がベルトルトに接近、お互い目が合って万事休すかと思われましたが彼女はスルーして壁の中へ。

ベルトルトの驚き方を見ても、普通なら確実に食われるパターンであった、ことが強調されているように思います。ということはダイナは相手を食うか食わないか、ある程度自身の行動をコントロール出来ていたんじゃないでしょうか。

ダイナ巨人はハンネスさんを捕食しているので、カルラ以外も捕食対象として見ていることになります。ただしハンネスさんは2回目の遭遇ときに捕食されているので、記憶と結びつけて判断したりしているのかもしれません。

ライナーがこじ開ける希望の扉

ベルトルトだけではなく、ライナーの内門破壊もまた初見のイメージとは大きくかけ離れています。

ライナーは幼少期からここまで、世の中の仕組みや、周囲の人間が話すことの意味を理解できない姿が数多く描かれてきました。

マーレ人になりたいと涙する母を見て、父と3人で暮らすために戦士になろうと決意。しかし、父は初めからそんなことは望んでおらず、母は叶わないとわかっていながら夢を見続けていました。

戦士になるということは、つまり寿命を縮め生涯に渡って軍の道具になることなのに、そのリスクにあまりにも無頓着でした。そしてその見返りが「名誉マーレ人」という建前だけの肩書であることも知りませでした。

島の悪魔を殺せば英雄になれると信じて疑っておらず、ベルトルトやマルセルが躊躇する気持ちを全く理解できません。

戦士になれたのは自分の努力報われ、認められたからだと思っていたら、実はマルセルが弟を守るために軍に印象操作をしたおかげで役が回ってきただけだった。ユミルに食われて死ぬはずだったのに、ライナーに対してずっと罪悪感を抱いていたマルセルに庇われて生き残ってしまった。

そして、マルセルが自分に謝ってきた理由が未だに理解できない。戦士になれることはとても誇らしいことなのに。なぜ?

ライナーが内門の扉に突進するときこんなことを考えていたなんて…。

自身が描く理想や世界に対する理解が現実と噛み合わないがあまりにも多く、ひどい混乱状態だったと思います。なぜ?がいくつあっても足りません。

ここまで捧げてきたものが全否定されたようで、肩透かしを食らったようで、全然納得できないでしょう。

まだ何もわかっていない。だから、知りたい。この欲求は、今後の彼を突き動かす強烈なモチベーションになっていきます。

エレンにとってはトラウマのシガンシナ区陥落も、ライナーにとっては希望の扉をこじ開けた偉大な瞬間だったのです。ベルトルトにとっては、もうちょっと複雑な思いもありそうですが。

避難所でのニアミス

アニが目を覚ますとそこはウォール・ローゼの中の避難所。3人は肩を寄せ合い、ライナーは本当の戦士になると宣誓。熱い絆で結ばれている感が全開です。あの頃は純粋だった…

そして、エレン、アルミン、ミカサの3人も同じ建物の中にいました。こんなに早い段階ですれ違っていたのですね。

ベルトルト、第2の故郷を見つける

ライナーたちが訓練兵になる前の開拓時代、彼らは第2の故郷を見つけます。

一緒に作業をしていたおじさんが話すシガンシナ区陥落のあの日。彼はウォール・マリア南東の山奥で巨人に襲われ気が動転して子供を3人置いて逃げてきました。僻地だったので連絡よりも先に巨人が来たそうです。

後日、村の唯一の生き残りこのおじさんは子供たちを見捨てた罪悪感に苛まされて自殺してしまいました。

4巻16話で、ベルトルトはこのエピソードをモデルに「あの日」の体験談として語っています。なぜなら、おじさんが自殺したことでその村の事実を知る人間がこの世に残っていないため、出身の村として偽るには都合が良いからです。

壁内の世界の調査

壁内への潜入に成功したライナーたちは、「始祖の巨人」を手に入れるために調査を続け、壁の王に近づこうとします。

アニが女型の巨人となって王都を行き来し、情報を仕入れていたようです。

そして、現在の壁の王、フリッツが影武者であることを突き止めました。

…そうか

やはりあのフリッツ王は影武者だったか

あのじいさんだけじゃなくて家ごと別物だった

何の権限も無い木偶人形(でくにんぎょう)だけど

おそらく「ユミルの民じゃない」

100年前フリッツに媚びた他人種系エルディア人が壁の中央を仕切ってる

「始祖の巨人」の力が及ばないからか…

秘密と忠誠を守る見返りに権限を与えている

気になるフレーズが出てきました。

他人種系エルディア人とは?

壁内の世界を支配している人種。

他人種系エルディア人とは、100年前にフリッツ王がパラディ島に逃げて壁の中にこもるとき、一緒について行った民族のこと。

ユミルの民ではないから、始祖の巨人の力が及ばない。つまり、記憶を改竄されない人たちです。

壁の王に近づくためには

始祖の巨人を持つ王家(本物の壁の王)に近づくためはどうすればいいのか。

壁の中央を仕切っている貴族の使用人になったり、嫁入りするなどして取り入れば、本物の王家にたどり着くことが出来る可能性が高まります。

しかし、貴族は「特別な血統」であるから貴族でいられるため、出自がよくわからない人間を内部に入れることは避けたいと考えるでしょう。

しかも、壁が破壊されてからは警戒が強まっており、アニのようなどこの馬の骨かもわからない人間が貴族に接触するのは不可能。

残された唯一の方法は、兵士になって中央憲兵に接近することです。

壁を全部壊せばいいのでは?

パラディ島に潜入して2年、残された時間はあと10年。アニは残り少ない人生を兵士ごっこに費やすことに難色を示し、ウォール・ローゼもウォール・シーナも全て壊そうと提案。

そうすればさすがに壁の王も向こうから姿を表すだろうという計算です。

壁を壊すリスク

しかし、ライナーは否定します。

壁を破壊して2年も経つのに何も動きがないということは、タイバー家の情報が正しければ、壁の王が「不戦の契り」に縛られているに違いない。

つまり、たとえウォール・ローゼやウォール・シーナを破壊しても壁の王が動かない可能性は0ではない、ということです。

ライナーたちの目的はあくまでも始祖奪還であり、壁を破壊して暴れまわることはでありません。

それにいくら巨人の能力を持っているとはいえ壁を壊すのは簡単ではないし、逆に自分たちがやられる可能性もあります。

そして、いざ壁の王が本気になって始祖の巨人の力を使ってしまえば、壁の中の巨人が動き出して自分たちはおろか、マーレ本土まで侵攻される恐れもあるわけです。

だからより確実に、慎重にことを進めなくてはならない。それがライナーの意見です。「人類の運命が俺達の手に懸かっている」というセリフも大げさではありません。

人類を救うため

訓練兵入団の日を迎えたライナー、ベルトルト、アニ。

こうして彼らの行動を見てみると、「人類を救うため」という言葉に何の矛盾もないことがよくわかります。

単行本、別冊マガジン掲載時の情報

タイトル

第96話「希望の扉」

The Door of Hope
公開
別冊少年マガジン:2017年9月号
発売日:2017年8月9日()
コミックス
発売日:2017年12月8日()

サブタイトル「希望の扉」の意味

マルセルを失ってしまい、戻っても自分たちが殺されるであろう絶望的な状況に置かれたライナー、ベルトルト、アニの3人にとってシガンシナ区の外門・内門の扉は希望の扉だった。

メニュー
📑目次
📑目次