第93話「闇夜の列車」

概要

マーレ軍の会議。

周辺国の兵器の進歩に対してマーレが遅れを取っていることを指摘する声が上がる。

新聞ではマーレが中東連合に勝利したことよりも新兵器が巨人を追い詰めたことのほうが大きく取り上げられている。

いずれ戦争の舞台は陸海から空へ移ることが目に見えており、そうなれば巨人の出る幕はなくなる。そこでジークはマーレの科学技術の発展を待つ間、他国を牽制し時間稼ぎをするためにパラディ島を再び攻めて始祖の巨人奪還すべきと提案。

兵士たちの会話の中から巨人に関する重要な発言も飛び出し、これまで謎だった事実も明らかに。

この回で張られていた伏線

羽の生えた巨人

カルヴィ元帥のセリフ「羽の生えた巨人はいなかったか?」

ジークのメガネ

コルトが「王家の血」について話しているとき、ジークの眼鏡が曇って表情がわからないようになっている。

ケツの吹き方

ジークはケツの吹き方が独特

島に消えた調査船団

3年間で駆逐艦を含む32隻が島に消えた。エレンたちが海に到達した後の3年間。パラディ島はどうやって対処していた?消えたのはなぜ?

待って

ライナーのセリフ「待って」

ライナーの心の闇

ガビら戦士候補生を見て、自身の少年時代を重ねてしまう

謎の男

ライナーと戦士候補生が街に遊びに行くのを見ている右腕に腕章を付けた男。

真っ暗な俺達の未来

ライナーは自分たちの未来が暗いと思っているらしい。

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この回で回収された伏線

巨人化生体実験?

伏線?

ピクシスが演説でエレンを「巨人化生体実験の成功者」だと言う。

3巻12話「偶像」

回収

嘘。マーレはやっていたかもしれないが。「巨人化学の副産物」を思わせるセリフではある。

夜に動く巨人

伏線

ウトガルド城に現れた巨人は夜なのに動いているのはなぜ?

9巻38話「ウトガルド城」

回収

ジークの脊髄液で巨人化した者は月明かりで活動可能

再び多数の巨人が襲撃

伏線

巨人が作戦行動を取っている?

10巻39話「兵士」

回収

このとき獣の巨人が雄叫びを上げているが、ただ叫んでいるのではなく巨人を呼ぶ合図になっている。

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アッカーマンの謎

巨人化学の副産物であるアッカーマン一族…

考察

具体的にどうやって生まれたのか、なぜあんなに強いのかなどは謎。偶然生まれたという設定なのは科学的な態度を示していると思う。作中で神とされる巨人が最終的に科学(兵器やアッカーマン)に殺されるという展開はニーチェっぽい。現実世界でも時代を変えるのはいつも科学技術 technology でしかない。

海の水がしょっぱいのは…

ゾフィアが語る謎の小話「近所のおじさんが言ってたんだけど 海の水がしょっぱいのは おじさんが海におしっこしたからなんだ」

考察

意味不明…

ライナーの寿命

あなたの任期はあと2年

考察

このとき854年。ライナーの寿命は856年。ライナーは843年に鎧の巨人を継承したということになる。

過去回と重ねられている描写

同期と後輩。同期と先輩

ガビら戦士候補生を見て同期を思い出すライナー

内容

新リヴァイ班を見て旧リヴァイ班を思い出すエレンと重なっている

13巻51話「リヴァイ班」

所感・考察

マーレ軍の会議

巨人の力にあぐらをかいたツケが回ってきた、と反省しきりのマーレ軍。

  • 人間の作る兵器が巨人の力を上回り始めている。
  • 周辺国に対してマーレは技術的に遅れを取っており、特に海上戦力の差が激しい。
  • 陸上では当分の間、巨人の力が無敵を誇るだろうが、いずれ航空機が発展して戦場は空へ移る。そうなれば、巨人は用無し。

しかし、元帥は「羽根の生えた巨人はいなかったか?」とどこか他人事です。近い将来自分たちが主導権を失うと理解しているにも拘わらず、悲愴感がありません。

ジークの提案。始祖の巨人奪還、パラディ島作戦の再開

ジークはマーレの科学技術が他国に追いつくまでの時間稼ぎとして始祖の巨人の力の必要性を訴えます。

他国にとって巨人の力が脅威であるうちに「マーレがパラディ島を占拠し、すべての巨人の力を手に収めた」とアピールするべきだと言うのです。

元帥は、それはジークの建前であり、本音では「余命があるうちに4年前の雪辱を果たしたい」という私情があることはわかっています。実際、口にも出してます。

それでも、ジークの考えを受け入れて党の議題に挙げることを約束します。

マーレの元帥はエルディア派?

この元帥、マーレ軍のトップの割に随分とエルディア人に理解があるように感じます。

直後の場面でコルトも「エルディア人がマーレ軍元帥に意見を通すなんて」と言っているように、普通はありえないはずです。

ただ単に偏見がなく公平な人間なのか、それともかなりエルディア寄りの人間なのか。不思議です。

ジーク「獣の巨人」の能力・特徴

ジークとコルトの会話の中で「獣の巨人」に関する謎がいくつか明らかになります。

ジークの脊髄液を投与された同志(エルディア人)はどうなる?

  • ジークが叫べば巨人化する。
  • ジークの言うことを聞く。
  • 月が出ていれば夜にも活動可能。

こんな能力は歴代の「獣の巨人」にはなかった。まるで「始祖の巨人」だ。 by コルト

なぜジークは特別なのか?

どうしてジークさんは特別なんでしょう?

王家の血を引いているわけでもないのに by コルト

この瞬間、ジークのメガネが曇り、急にヒュゥゥゥゥゥっと風が吹くという、いかにもマンガ的な演出が繰り出されています。

つまり、ジークは「王家の血を引いている」から特別な能力を持っているのです。

逆に、王家の血を引いていないのであれば、この作品内(進撃の巨人の世界)において特別な能力(巨人を操る能力)は持ち得ない、と解釈できると思います。

当然、何かがきっかけで例外が起きる可能性はあるでしょうけれど、ここでわざわざジークとコルトの会話に登場させたのですから、かなりガッチリとした設定なんじゃないでしょうか。

ということで、巨人を操るのは「獣の巨人」の能力ではなく、ジークの能力だったのです。

ウォール・ローゼ内のラガコ村、ウトガルド城、シガンシナ区での決戦、中東連合との戦争で…これらの場面で無垢の巨人が発生したメカニズムが明らかになりました。

ジークの能力の由来をマーレ軍は知らない

ジークがなぜこのような能力を持っているのか、マーレの上層部も、研究者もわかっていないようです。

「王家の血には特別な力がある」というのはコルトでも知っているくらいですから、ちょっと話がおかしいことになります。

つまりジークは自分が王家の血筋であることをマーレに隠しているのです。

元帥が言うには、ジークはマーレに対して強い忠誠心を示してきたわけですから、自身の血統のことを明かしていないのは不自然です。話が合いません。

もしジークの能力の秘密が解明されて、他の知性巨人でも使えるようになれば大幅な戦力アップが期待できます。それをしないのは何か理由があるのではないでしょうか。

ジークは何か企んでいる?

かつて、フクロウ(エレン・クルーガー)はジークの母であるダイナが王家の血筋であることをマーレに隠していました。そして彼女がマーレの手に渡ることを恐れ、無垢の巨人にしてパラディ島に放ってしまいました。

王家の血が巨人の力の真価を引き出すことは知れ渡っており、もし血筋のことがマーレに知れたら、ダイナは身柄を拘束され、死ぬまでマーレのために子供を産まされ続けることが目に見えていたからです。

ジークがやっていることは、マーレの戦力弱化、あるいは強化阻止です。非常に非協力的な態度と言えます。

これより先は推測・妄想になってしまいますが、93話の時点で描写されている事実だけで考えても、ジークがマーレを裏切る可能性は0ではないと言えるのではないでしょうか。

ジークの秘密

「ケツの拭き方が独特なんだ」

この発言、自分の死に方、つまり巨人の継承の方法が独特なのだという意味かと思いましたが、違いますね。

マガトが来たから、ストレートに冗談を言っているだけですね。

パラディ島の現状

ジークとマガト隊長がパラディ島の現状を説明してくれます。

3年間の間に起きたこと

  • エレン達が海を見た後の3年間、マーレ軍はパラディ島に調査船団を送り込んでいるが、駆逐艦を含む32隻が全て消滅。
  • パラディ島は4体の巨人を保有して運用している。
    • 進撃・始祖(エレン)
    • 女型(不明)
    • 超大型(不明)
  • 32隻もの調査船を壊滅させるということは2体以上の巨人が実際に動いていると考えられる。ということは、少なくとも女型か超大型のどちらかはパラディ島の誰かが継承して使いこなしている。

パラディ島についてマーレが把握していること

パラディ島に変化が起きたきっかけ

  • 革命軍の残党フクロウ(エレン・クルーガー)が「進撃の巨人」をグリシャ(エレンの父)に継承してパラディ島に送り込んだのは22年前(832年)。
  • フリッツ王は名をレイスに変えて無抵抗主義を貫く姿勢であったようだ。
  • 「進撃の巨人」にレイス王は食われてしまい、継承の術と共にすべてを奪われた。

パラディ島の兵力

  • 巨人を4体保有、少なくとも2体が運用されている
  • おかしな機械(立体機動装置)をつけた兵士が両手に爆弾や剣を装備して飛び回る
  • ↑巨人を殺すことだけを考えた武器である
  • 王家の伝承のみの存在と思われていた一族、巨人化学の副産物アッカーマン一族と思わしき存在が少なくとも2人いる

マーレ軍はパラディ島をかなり警戒している

上に挙げた情報をマガト隊長とジークは共有し、かなりパラディ島を警戒していることが伺えます。

ジークが「敵の脅威は巨人だけじゃない」と言った時のマガト隊長の驚いたような顔をしていますし、立体機動装置について説明を受けたときはコルトが汗をかいてビビってます。

ジークはリヴァイにやられたことがトラウマらしく、「正直奴はにもう会いたくありません」とまで言っています。

調査船が全滅している現状を踏まえて、マガト隊長は次に本格的に攻めるときは戦艦を用いるつもりです。

マーレ側の視点から見ると、パラディ島ってけっこう手強い奴らであることがわかります。

アッカーマンは巨人化学の副産物だった

ジークたちの一連の会話でボロボロと謎が明らかになっています。アッカーマンについて重要な発言がありました。

アッカーマンは「巨人化学の副産物」らしいです。(連載時は「巨人科学」でした)

色々な説がありますが、たぶん「巨人化・学」なんでしょう。科学・Science から 化学・Chemistry に訂正する意味もよくわからないので、「巨人化に関する学問」と解釈するのが自然な気がします。

これがわかったところで謎は解けないのですが。

きっと遺伝子操作とかしているうちに生まれた突然変異的な存在ということなんじゃないでしょうか。

とりあえず、リヴァイとミカサの異常な強さにはきちんと何かしらの理由があること、それは人為的なものであったというところまではわかりました。

アホで素直なコルト

次期獣の継承者であり、マガトに指揮官としての教育を受けるコルト。優秀なのでしょうけれど、ちょっと真っ直ぐ過ぎるというか、発想に遊びがない感じが見受けられます。

ライナーの報告を表面的にしか受け取らず、その裏を読もうとしない。アルミンとは真逆です。周囲にはアルミン役を期待されているのに頭の中身はエレン、みたいな。

ただ単に今は読者に説明するために、わざと「良い質問と勘違い」をしてくれているだけかもしれません。

しかし、この性格・気質が災いして残念な最後を迎える可能性もあるかな、などと思ってしまいます。

レベリオ本部に帰る列車の中でも酔っ払って狂ったように騒いでいます。普段は静かで物分りのいい人風だけど、内心溜まっているものがあるんでしょう。

ライナーが病んでる

アッカーマンにもう会いたくないのはジークだけではありません。ライナーもです。夢に見ちゃってます。アッカーマン恐るべし。

頼れる兄貴キャラだったのはマルセルの影響だったこともわかりました。戦士候補生たちがじゃれ合っている姿をかつての自分たちに重ね合わせて複雑な表情を浮かべているところなんかも、なんだか切ないです。

ライナーの「待って」は何回も登場するセリフなのでどういうことなのか気になりますね。

顎の巨人と車力の巨人

ガリアードの複雑な境遇

今回はガリアードとピークの素顔が明らかになりました。

ガリアードはアメリカの学園ドラマに絶対1人はいるやつ、みたいな風貌です。

ライナーに嫌味を言いまくってますが、これには理由があります。彼はライナーを庇って死んだマルセルの弟なのです。自分が鎧を継承する可能性もあったような口ぶり。

そして、104期ユミルを捕食して顎の巨人を継承したことも今回はっきりしました。ユミル、退場です。

ピークは女性

車力の巨人の中身は女性でした。クシャッとしたロングヘアにだるそうな目つき。

2ヶ月も巨人で居続けられるようです。めちゃくちゃ使い勝手が良さそうです。

巨人を継承する意味

レベリオ本部へ向かう帰りの列車の中。大騒ぎするエルディア兵士たちをよそに、ライナーとファルコが2人で会話しています。この2人はちょっと他とは違う様子。

ファルコはガビが鎧の巨人を継承することに不満があるようです。なぜなら巨人を継承すれば寿命が縮まってしまうから。

要はファルコはガビのことが好きなんでしょうけども、それを抜きにしても巨人継承問題に対して意義があるのだと思います。

13年という絶妙な長さのせいで、また巨人のワンダーな能力のせいでその恐ろしさを忘れがちになるのですが、余命を宣告されるんです。そんなのハッピーじゃありません。そしてワンダーな能力も、マーレにいいように使われるだけで自由はないのです。

エルディア人はマーレで迫害を受けており、非常に立場が弱い存在です。少しでも歯向かう素振りを見せれば、飛行船から投下される兵器にされてしまう可能性もあります。

しかし、巨人を継承し名誉マーレ人となり忠誠を誓うことで一族は守られる。自らの寿命を縮めて。

ひたすらそんなことが繰り返されるのは地獄です。

ファルコはそんな現状に憂いており、その態度をライナーに対しても隠そうとはしませんでした。

ライナーは一度はファルコを厳しい口調で攻めましたが、それは覚悟を問うためだったようで、最後は「お前がガビを救い出すんだ。この真っ暗な俺達の未来から」と言います。

ファルコはこれからどんな動きをするのか注目です。

ファルコとコルトの名字はグライス

ファルコとコルトの名字はグライスであることもわかりました。

グライスといえば、エルディア復権派にいたグリシャの仲間です。楽園送りになった際、グリシャに散々文句を言っていました。

巨人化されず砂漠に放り出され、最後はきっと巨人化した仲間に食われてしまったあの人です。

ファルコとコルトは彼の子孫、血縁関係者なのでしょう。年齢から考えて息子でもおかしくありません。

「そっちの店はまだお前らには早い…」の影で、これは誰?

列車に乗る前、ライナーと戦士候補生が街の見物に行くシーンで謎の人物がひっそり現れます。

「そっちの店はまだお前らには早い…」のコマ。

左下に、髪の長い、右腕に腕章を巻いた兵士がライナーたちを見て立っています。

93話でわかったこと

  • 3年間マーレはパラディ島に調査船を送り込んでいたが全て消息不明
  • 顎(あぎと)の巨人、ガリアードはマルセルの弟。ライナーと仲が悪い
  • 車力の巨人、ピークは女性。2ヶ月巨人化したままでも平気
  • 巨人を操る力はジーク特有のもの(獣の巨人由来ではない)
  • アッカーマンは巨人化学の副産物だった
  • ジークの寿命はあと1年
  • ライナーの任期はあと2年(シガンシナ区の壁破壊が9年前なので、その時点で継承から2年経っていた)
  • ガビは14歳。多分、他の候補性も近い年齢。
  • ファルコとコルトの名字はグライス

単行本、別冊マガジン掲載時の情報

タイトル

第93話「闇夜の列車」

Midnight Train
公開
別冊少年マガジン:2017年6月号
発売日:2017年5月9日()
コミックス
発売日:2017年8月9日()

サブタイトル「闇夜の列車」の意味

戦争を終え故郷に帰る戦士たちを乗せて夜道を走る列車。未来が真っ暗だと理解しつつも抗うことが出来ず敷かれたレールに沿って走り続けるしかないマーレのエルディア人。

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