第91話「海の向こう側」
概要
91話からはしばらくマーレ視点で物語が進行する。
ライナーやジークと戦ったシガンシナ区の決戦から4年後、マーレ国と中東連合の戦争の最前線、スラバ要塞が91話の舞台。
島の中でひたすら巨人と戦っていたエレン達と違い、マーレ国は世界を相手に本格的な戦争を繰り広げる。
冒頭、塹壕を掘っていた部隊の先頭が榴弾で攻撃され、少年・ファルコは脳震盪を起こす。天を仰ぎながら上空の鳥の心配をしている様子。
そこへ兄コルトがファルコを救出して仲間たちの元へ戻り、治療を受けながら現在状況が説明される。
この回で張られていた伏線
鳥
ファルコが鳥を見て逃げろと言っている
鳥
ファルコが鳥を見て逃げろと言っている
覚悟
戦士候補生に選ばれるには「成績だけ」では足りない「覚悟」が必要
マガトと戦士候補生との会話
マガトは彼らをリスペクトしてきちんと話を聞くし、指導・教育している。
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謎
今は何年?
マガトのセリフ。9年前から始まった「始祖奪還計画」
845年から9年後、つまり現在は854年。
現在の戦況
- マーレ国は中東連合と4年間戦争を続けており、今が大詰めである。
- スラバ要塞が建つ丘のすぐ下にある軍港の中東連合艦隊を沈めればマーレの勝ち確定。
- 軍港に攻め入るために、軍港の高台を守るスラバ要塞を陥落させる必要がある。
- マーレ海軍は貧弱で制海権を奪うのに4年もかかった無能集団。
- だから陸軍が必死になって戦っている。
なぜ子供が戦争の最前線に駆り出されている?
ガビ、ウド、ゾフィア、ファルコ、コルトの5人は巨人を継承する戦士候補生です。
獣の次期継承者とされるコルト以外の4人はかなり幼く見えます。訓練兵時代のエレンと同じかそれよりも若いくらいです。
9つの巨人の継承者は「ユミルの呪い」により13年で死ぬことになっています。
確実に次の世代に継承していくためにマーレ国は巨人継承者を戦士候補生として子供の頃から育成しているのです。
グリシャの手記で明らかになったこのシステムは今も続いているようです。
鎧の巨人継承者の選抜時期が迫っている
ガビ曰く、マーレは近く再びパラディ島に攻める予定であり、その作戦の中心となるであろう鎧の巨人の継承の時期が迫っているようです。
そして、マガト隊長はこの戦争の最前線での戦いを鎧の巨人の継承者を見極める最終試験として考えている。
ライナーが持つ鎧の巨人が継承者されるということは、彼が鎧を継承して13年近く経つということです。
第1話でシガンシナ区の壁を破壊したのが845年。ウォール・マリア最終奪還決戦が850年で、現在がその4年後。
ということは、ライナーが鎧の巨人を継承してから最低でも9年は経っています。おそらく準備期間があるので実際は10-12年ぐらい経っているということでしょうか。
マーレ軍内のエルディア人の扱い
エルディア人兵士の腕章やヘルメットにはエルディアのマークがついています。それ以外はマーレ人です。
マーレ軍はマーレ人とエルディア人とで構成されていますが、マーレ人は指揮役で実際に突っ込んでいくのはエルディア人兵士という構図。
その中でも戦士候補生は巨人の力の器となる貴重な存在なので別枠。多額の費用をかけて育成されています。
マガト隊長の性格・気質
強面のマガト隊長。彼はマーレ国最強兵器である巨人を行使する決定権を持っているようですので、軍の中でもかなりの立場であることが伺えます。
マガト隊長はコルトを何度も「エルディア人」呼ばわりしていますが、単に差別しているのではなく、これは読者に対する説明のように見えます。マーレ国の中ではエルディア人は差別されてますよー、立場弱いですよ―、そういう設定ですよー、という確認です。
というのも、エルディア人であるコルトをそばに置いて指揮官としての覚悟を諭すような場面があるからです。きちんと教育しています。
コルトが生意気に作戦を提案してきても無視せず会話をし、自身が実行する作戦の正当性を説明しています。
彼は壁内で言うところのキース・シャーディス教官のような感じではないでしょうか。
兵器の進歩により巨人は絶対的な存在ではなくなっている
敵国は巨人を一撃で仕留める兵器「対巨人砲」を持っており、もはや巨人は絶対的な存在ではないようです。
しかし、マガト隊長は「巨人は絶対でなくてはならないと」と言います。
なぜなら、マーレを超大国たらしめるものは「巨人の力」であり、巨人を失えば一気に立場が危うくなるからです。
中東連合との戦争が始まったそもそものきっかけは、9年前から始まった「始祖奪還計画」が返り討ちに終わり「超大型」と「女型」を失ったことです。
よってマガト隊長も巨人の扱いには慎重な姿勢を見せており、冷静に戦局を見極めようとしています。
ガビの思想・価値観
戦士候補生の1人である少女ガビは、対巨人砲を携えた装甲列車を無力化するために便衣兵となって奇襲を仕掛けます。
作中の世界でも便衣兵は国際法違反のようですが、マガト隊長は「目撃した相手兵士を全滅させれば問題ない」という倫理観。
そして、危険を顧みず突撃していくガビの思想は注目ポイントです。彼女は候補生の中でも成績優秀で鎧の巨人継承確実と言われる存在。
彼女曰く「私があんた達と違うのは覚悟だ。エルディア人の運命を背負い、私達を苦しめる島の悪魔共を皆殺しにする覚悟だ。そしてこの世界に残るのは善良なエルディア人だけだとこの戦いに勝って世界に証明する。私は負けない。私が収容区からみんなを解放する」
神の視点から見ている読者にとっては非常に視野の狭い人間に映ります。マーレの洗脳教育を真に受けており、見ているこっちが恥ずかしくなるほどです。
しかし、一匹残らず巨人を駆逐すると息巻いてた当時のエレンも同じようなもの。この2人が絡むところを見てみたいものです。
新しい2体の巨人
「顎(あぎと)」「車力(しゃりき)」
コルトの口から新しい巨人の名前が出てきました。主はガリアードとピーク。一瞬でトーチカと塹壕の敵を殲滅できる実力のようです。
アギトはアゴです。車力は車を引いて荷物の運搬を生業とする者のこと、らしいです。
ガビ便衣兵が手榴弾で装甲列車を無力化した直後、顎のガリアードが突撃開始。ロン毛に長いヒゲ、その名の通り硬そうな顎と爪を持った巨人です。
通常の銃弾なら物ともせず、本当に一瞬でトーチカを粉砕してしまいました。
物語の図式の変化
これまでは「人間 VS 巨人」でしたが、今後は「人間 VS 人間」に移行していくことになります。
敵は「なんか知らないけど食べてこようとする巨人」から、「利害関係で相手を支配したり、殺そうとしてきたりする人間」に変わるということです。
22巻90話までは、人間の敵代表だった壁内の王政貴族たちも言ってしまえば巨人と同じみたいなもんでした。壁内人類の安全と平和が脅かされても私利私欲にまみれ、エレン達の自由を奪うことに固執する変態集団でしたから、読者としては感情移入の余地はほぼありませんでした。
しかし、これからはいよいよライナーやアニ、ジークの故郷マーレ国の人間が出てくるわけです。マーレ側の実態、価値観、彼らから見た壁内はどう描かれるのかを注目して読んでみると面白いと思います。
単行本、別冊マガジン掲載時の情報
タイトル | 第91話「海の向こう側」The Other Side of the Ocean |
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公開 | 別冊少年マガジン:2017年4月号 発売日:2017年3月9日(木) |
コミックス | 発売日:2017年8月9日(水) |
サブタイトル「海の向こう側」の意味
パラディ島から見て海の向こう側にあるマーレ国を舞台に新章スタート