104期ユミル Ymir
104期訓練兵団卒業生。調査兵団。黒髪長身そばかすが特徴。顎(あぎと)の巨人保有者。
出身はマーレ。物心ついた頃から名無しの物乞い孤児であったがとある宗教団体の教祖様としてスカウトされユミルと呼ばれるようになる。
しばらくは恵まれた暮らしを送ったがマーレ当局に見つかり楽園送りにされパラディ島へ上陸。無垢の巨人となり60年ほど壁外を彷徨う。ある日、始祖奪還計画の任務遂行中のマーレの戦士たちに遭遇しマルセルを捕食。顎の巨人の力を手に入れる。
壁内で第2の人生を謳歌している最中、ヒストリアの噂を聞きつけて兵団に入ることを決意。ヒストリアを守ることに心血を注ぐが、ライナー&ベルトルトに誘拐され、最終的にマーレに帰って顎の巨人を返上し死亡した。
60年以上生きている上に実質人生2周目なだけあり、サシャやヒストリアとの絡みの中で含蓄のある言葉を数多く残している。世界の秘密を知っているようなそうでもないような絶妙な雰囲気を漂わせていたが、結局よくわからないまま退場。
名前から想像されるように、始祖ユミルと重ねて描写されているであろうシーンもいくつか見られる。
基本情報
名前 | ユミル Ymir |
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性別 | 女性 |
人種 | マーレ国エルディア人 |
巨人 | 顎の巨人 |
身長 | 172cm |
体重 | 63kg |
生年月日 | 2月17日 |
年齢 | 17歳 (850年) |
出身地 | マーレ国 |
名無しになのに目立つ
初登場は2巻5話「絶望の中で鈍く光る」だが、このときけっこう喋っているにも拘わらず名前は出てこない。親友のエレンを失って動揺するアルミンに冷たい言葉をかけ、コニーから「クソ女」と呼ばれている。
名前ありのキャラクターがバタバタ死んでいく中、いつも成績上位のクリスタのそばにいて目立つ上にセリフも多く、修羅場でも落ち着いた態度を見せ、平然と生き残っている。
やたらクリスタに結婚しくれと迫っているが、同性愛者かどうか詳しい描写はない。むしろいちいち断る必要なんてないということなのだと思われる。
「ユミル」という名の意味
彼女の名前が ユミル であることが判明するのは、3巻37話「南西へ」になってからであり、初登場の5話から随分経っている。
女型の巨人との戦いを終えたエレンやハンジたちが、ウォール・ローゼ内に巨人が発生したとの知らせを受け壁の穴を塞ごうと現地(ウォール・ローゼ)に向かっている最中のこと。
このとき、壁の中にいる巨人の秘密を知っているであろうニック司祭もエレンたちに同行しているが、なかなか口を割らない。ハンジ達に責められしぶしぶ明かしたのがヒストリアの存在(作中では名前は伏せられているが、容姿のヒントでわかる)。そして、そのヒストリアが「ユミル」といつも一緒にいるとミカサが言う。
このときハンジとリヴァイが驚いているのは、5巻冒頭に特別編に収められている「イルゼの手帳」に由来する。
手記によると、イルゼが森の中で出会った無垢の巨人は「ユミルの民」「ユミル様」「よくぞ」と言葉を発した。ユミルという言葉が巨人の謎を解く上で重要だと考えるのは自然な流れであろう。だとすればエレンたちの同期ユミルも何か秘密があるのでは…。ハンジもそう考えていたに違いない。
新興宗教の教祖ユミル様
22巻89話「会議」にて、ユミルの名の秘密がまた1つ明らかになる。
ユミルは名無しの孤児だったが、とある男に拾われユミルと呼ばれるようになる。これはおそらく始祖ユミルを崇拝する宗教団体、形は違えどグリシャが所属していたエルディア復権派と似たような発想から生まれた集団だと思われる。
ユミルはこの団体の教祖的存在として祀り上げられた挙げ句、マーレ当局に見つかり信者たちと共にパラディ島へ楽園送りにされ、無垢の巨人としてライナーたちに遭遇するまで約60年間壁外を彷徨うことになる。
そして、この宗教団体の信者の1人がイルゼの手帳に出てきた巨人の正体であった。だからこの巨人は黒髪でそばかすというユミルとよく似た風貌のイルゼを見て勘違いして「ユミル様」と呼んだのだろう。
顎(あぎと)の巨人を継承
ウトガルド城の戦いで、先輩兵士が全滅し絶体絶命となったところでそれまで隠していた巨人の力を披露する。
このせいでライナーとベルトルトには正体がバレてしまう。
ユミルが顎の巨人を継承したきっかけは、ライナーらマーレの戦士たちが始祖奪還計画でパラディ島にやってきたことである。
無垢の巨人として壁の外を彷徨い地中に眠っていたユミルは、壁内に向かう戦士隊に遭遇し、顎の巨人を保有するマルセルを捕食した。人間の姿に戻った後は壁内で盗みをして生計を立てて暮らし、その最中にウォール教の司祭らの会話からクリスタの存在を知り兵団入りを決めた。
ユミルがマルセルを食う場面は回想で再三描かれている(10巻39話「兵士」、10巻40話「ユミル」、11巻47話「子供達」)が、毎度ライナーとベルトルトしか描かれていない。しかし24巻95話「嘘つき」にて、ついにアニも加わった完全版が登場した。
ちなみにこの件は、マーレが自ら放った無垢の巨人によって大事な知性巨人を奪われるという失態、と考えることもできる。
始祖奪還計画は子供4人(しかも知性巨人保有者)をろくに調査していない敵地に送り込むという無謀な作戦であり、なぜマーレ軍がゴーサインを出したのか謎である。しかもそんなガバガバの作戦があの第1話に直接繋がっているという恐ろしさ。
胸を張って生きろ
ユミルは自分と似た境遇を持つクリスタに共感するあまり、過保護で偏愛的な態度を見せる。
訓練兵時代、自身は10位以内に入る能力を持っていながら、裏工作よってクリスタを10位以内にすることで安全な憲兵団に入れようとした(クリスタの推測)。ライナーたちに拐われたときも、自分よりもクリスタの身の安全を最優先に考えて行動している。
クリスタが飯抜きになったサシャに食べ物を取っておいたり、雪山訓練でダズを助けようとしたときは、「いいことをしようとしてるだろう」と厳しく問い詰めている。
このような態度はマーレ時代の自分の後悔から来ており、クリスタには自分を殺して他人のために生きることを止めて欲しいと思っている。
しかしユミルがクリスタを思うあまり過保護になっている感は否めず、クリスタにそのことを指摘される。この指摘は、エレン奪還作戦時に壁内に希望を見えてきたにも拘わらずクリスタを置いてライナー&ベルトルトを選んだことに繋がっていると思われる。
またサシャに対しては訛りや出身のことを馬鹿にしつつも全面的に承認するような態度で接し、ありのまま自分を出すように促すなど、彼女なりの優しさを見せている。
何の意味も無い だから世界は素晴らしいと思う
ヒストリアに宛てた手紙より。進撃の巨人、作中屈指の名言(22巻89話「会議」) 残念ながらアニメではカットされている。
どうもこの世界ってのは
ただ肉の塊が騒いだり動き回っているだけで
特に意味は無いらしい
そう
何の意味も無い
だから世界は素晴らしいと思う
ウォール・マリア奪還作戦で特攻に向かう前、エルヴィンもユミルと同じく人生に意味は無いと言った。「いや違う!!あの兵士に意味を与えるのは我々だ!!~」のくだりは詐欺師の方便であると本人が認めている。
道で会ったジークとアルミンも生きることに意味は無いことに気づいた。彼らは生きる意味を見つけた訳ではなく、意味が無いことに気づいただけである。
人生に意味が無いことの素晴らさに気づいた人間がバンバン死んでいき、死んだ者に意味を与えることに必死になっているリヴァイがいつまでも苦しんでいるのがこの作品の醍醐味だと思う。
ユミルはそんな最高なメッセージをヒストリアに残している。